『ゲーム的人生論』
Posted at 06/05/28 PermaLink» Comment(0)» Trackback(0)»
おそらく日本で最も名前の知られたゲームデザイナー、鈴木銀一郎氏が1996年に同タイトルで出版した半生記を加筆したもの。実家の履物商からバーテンダーを経て編集者に至る鈴木氏の職歴と、将棋→囲碁→麻雀→SLG→コンピュータ→TRPGに至るゲーム歴をたどりながら、ひたむきにゲームに向き合う氏の人生観を知ることができる。
ボードゲームではディプロマシーが触れられているだけだが、少女野球チームの監督を願われて勝利に導いた「ラムネの味」、母の死をじかに見て死が怖いものではなくなったという「人生はロールプレイング」、風潮に囚われず物事を考え抜く哲学がゲームに必要であることをを説く「DNAと哲学」など、小説家でもある氏の名文にすっかり引き込まれた。
競馬マフィアや企業買収ゲームなど鈴木氏の作品を遊んでも、当然のことながら氏がどういう人物かを知ることはできない。何となくクニツィアの影響があるのだろうかと思う程度である。ヒゲを伸ばした、風変わりなお爺ちゃんというぐらいしか知らなかったが、この本を読んで鈴木氏が真のゲームバカ(最上の賛辞のつもりで)であることが分かった。
例えば氏は囲碁五段、将棋三段くらいの腕前だというが、その上達方法は何段という目標を定めて、手筋辞典や詰将棋を延々何百問も解くのである。麻雀では、徹夜して二三時間眠ってまた徹夜とかいう無茶を続けた。ノルマンディー上陸作戦をもとにした自作SLGでは、テストプレイで1ゲーム40時間。テレビゲームは月200時間ということもあったという。
家族もちとは思えないこういう努力と時間のことを氏はSLGばりに「投入量」と呼ぶが、尋常じゃない。もうここまで来ると効率がいいのか?いう疑問も吹っ飛んでしまい、その迫力にただ圧倒される。毎朝4時か5時に飛び起きて制作を始めるというクニツィアもそうだが、ゲームデザイナーたるもの、これぐらい人生をゲームに割かなければ大成しないのかもしれない。
氏はどちらかというと不器用な生き方をしているし、ゲームデザインの方法も虱潰し風でスマートではない。しかし謙虚でひた向きな姿勢は、時として器用貧乏を凌駕する大きな力になる。1%のひらめきと、99%の努力。思い付きでチョチョイのチョイと作られたような作品はオシャレかもしれないが、長い目で見て次世代につながるゲームは、このような姿勢からしか生まれないのだろう。
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