ドイツ年間ゲーム大賞2016ノミネート:審査員評

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2016年のボードゲームについてドイツ年間ゲーム大賞審査員長のコメント
「やっとリストができた。」ほぼ10ヶ月にわたる選考作業と3日間の缶詰の後、38回目の準備ができた。評論家による「ドイツ年間ゲーム大賞」審査員が、ボードゲームに関心のある皆さんに、傑作のボードゲームを提示する。我々の推薦とノミネートの目的は、1年間を通して質の高いボードゲームを概観すると同時に、さまざまなボードゲームのシステムについて、できる限りの多様性を提示することである。我々の願いは、このリストの中からボードゲームを遊ぶ人なら誰でも1タイトルは、好みと要望に合ったものを見つけて頂くことだ。
今年、みなさんご存知の3色のカテゴリーで24タイトルを推薦しよう。青はキッズゲームで、別の審査員によって選ばれている。赤は全ての方々向け、灰色はゲームのルールの習得と運用についてすでに経験のある方々向けである。
「ドイツ年間ゲーム大賞」と「ドイツ年間エキスパートゲーム大賞」の審査員9名で、14タイトルをリストに入れた。もともとのボードゲームメーカーはさらに国際的で、以前のデザインスタイルを逸する驚くような新しいオリジナルシステムも現れている。審査員がリストに挙げたのはとてもコミュニカティブで、より協力的なボードゲームであり、また重要なトレンドとして、ストーリーを語るボードゲームがある。
エキスパートゲームの分野では、ほとんど文学に匹敵する品質をもち、ノミネートに値する革新的なシステムが2つある。『パンデミック・レガシー』と『タイムストーリーズ』はどちらも協力ゲームで、一晩で終わるような古典的な枠組みでは終わらない。TVシリーズの原理がボードゲームのテーブルに移植されている。深遠なストーリーが数ゲームにわたって展開していく。『パンデミック・レガシー』は有機体のように絶えず変異し、ゲームボードとルールが変わる。『タイムストーリーズ』ではタイムトラベラーが繰り返し冒険をして謎を解いていく。この2つのボードゲームはナラティブな驚きがあり、「消費される」ため、古典的なボードゲームのように何度も繰り返し遊ぶことができない。その点、3つ目のノミネート作『スカイアイランド』とは対照的である。『スカイアイランド』では有名なスコットランドの島でウィスキーと羊の世界にプレイヤーを招待する。発売時期は早かったものの、繰り返し遊んでも飽きることがない。
謎を解いてコードを解読するゲームは、推薦リストにも入っている。『コードネーム』『スパイフォール』『クレージーヴォルツ』で、多人数でもコミュニカティブな連帯経験を強調したい。『コードネーム』のほかに「ドイツ年間ゲーム大賞」にノミネートされた2タイトル『カルバ』と『インホテップ』は、みんな同時にひとつのイベントに巻き込み、長い待ち時間が発生しない。テーマ的に3つのノミネート作品は、スパイ、ジャングルでの研究旅行、古代エジプトのモニュメント建築現場にプレイヤーを誘う。リストで注目するところは、ハバ社のような古典的なキッズゲームの出版社が突然ファミリーゲーム分野に進出する一方、主に難易度の高いゲームで知られる出版社が、キッズゲームを発表しているところだ。
灰色の賞にノミネートされた『世界の七不思議デュエル』は洗練された2人用ゲームで、『パンデミック・レガシー』やダイスゲームの推薦『クウィント』と同様、既存のボードゲームシリーズに属する。『ブラッドレイジ』は攻撃的な外見と実際の雰囲気が異なるのに驚かされる。『モンバサ』はこれまでと同様、難易度的にノミネート可能なエキスパートゲームの水準を超えているため推薦リストに入れた。
発表している対象年齢とプレイ時間は、出版社によるものをそのまま採用していない。つまり実際にプレイしてみて相応しいものにしている。もうひとつ指摘したいことは、「ドイツ年間ゲーム大賞」の審査員はゲームのルールも評価していることである。出版社によっては注意深く構成されたルールに力を入れているが明らかに分かるものがある一方、ゲームとして素晴らしいのでルールブックの小さな不足を大目に見たものもある。しかし今年も残念ながら、よいゲームながら理解できないルールのために落選したものもある。外国の出版社のボードゲームでは、ルールの構成や記述が翻訳で改善されず、そのままになっているものもある。そのほかの認識としては、審査員の観察ではボードゲーム分野での電子化・デジタル化はまだ本格的に達成されていない。
まだ2ヶ月間のお楽しみがある。それぞれ3タイトルずつノミネートされた「ドイツ年間ゲーム大賞」「ドイツ年間エキスパートゲーム大賞」でどれが大賞に選ばれるかは、7月18日月曜日にベルリンで行われる授賞式で決定される。再びライブストリームで中継される予定だ。それまでたくさんボードゲームを楽しまれることを希望する。
トム・フェルバー
ドイツ年間ゲーム大賞審査員長
Spiel des Jahres e.V.: Kommentar des „Spiel des Jahres”-Vorsitzenden zum Spielejahrgang 2016

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