うやってよいゲームを作るか?

〜W.クラマーによる経験、分析、展望〜

1.成功したゲームのカテゴリー2.いくつかの原則と調査3.ゲームの開発4.テストプレイ5.ゲームデザイナーの性格

1.成功したゲームのカテゴリー

よいゲーム、成功したゲームには3つのカテゴリーがあると考える。

たいへんよい評価や賞を受け、何年もたいへんよく売れているゲームは、間違いなくたいへんよいゲーム、成功したゲームといえるだろう。1番目のカテゴリーには、ザーガランド、スコットランドヤード、ニムト、カタン、カルカソンヌのようなゲームが入る。1番目のカテゴリーに入るゲームの特徴は、運と戦略がほどよくミックスされ、知性にも感性にも訴えるということだ。たいていの場合ターゲットが広い、どちらかといえばシンプルなゲームだが、批評家や愛好者にも評価されるのは、すばらしいゲームの魅力を備えているからだ。これらのゲームの多くはシンプルで、革新的なゲームメカニズムを持っている。

では売上額では成功せず、ほどほどの量が店舗流通し、何年後かには絶版になってしまうのに、それでもたいへんよい評価を受け、最高の賞に輝いたゲームはどうだろうか? 2番目のカテゴリーには、チグリス・ユーフラテス、ラー、タージマハル、フィレンツェの匠、アメン・ラーなどが入る。これらのゲームもよいゲーム、成功したゲームと呼べるだろうか? 私はイエスだと思う。これらのゲームには無条件でよいゲーム、成功したゲームということが当てはまる。2番目のカテゴリーに属するゲームの特徴は、知性に訴え、ゲームの深みが非常にあり、勝利のためにいろいろな戦略があって、プレイヤーがゲームの進行に本質的に影響を及ぼすということである。これらのゲームではたいてい難易度が高く、よく洗練された革新的な複数のゲームメカニズムがそれぞれ互いに関連付けられている。ターゲットはゲーム愛好者に絞られ、世界中で遊ばれて評価されている。

それでは3番目のカテゴリーに行こう。ほどほどの、場合によってはひどい評価を受け、誰もおすすめリストに入れないのに、何年も大量(年間10万以上)に売れ続けているゲームも、よいゲームだといっていいだろうか? ここでも私はイエスと答えたい。すばらしいゲームの魅力によって大変よく売れている全てのゲームは、よいゲームでなければならない。この場合人々は購入を通してそのゲームに投票したことになるのだ。このカテゴリーには、ウノ、フェイズ10、トリビアル・パースート、ジェットコースターに乗ったカバなどが入る。3番目のカテゴリーに属するゲームの特徴は、感性を呼び覚まし、短くてシンプルなルールですぐにゲームを始められることである。プレイヤーはゲームの進行にほとんど影響を及ぼすことができない。これらのゲームはたくさんの人を楽しませ、たいてい運の要素が強い。

したがってたくさんの人を楽しませ、売上額でも成功したいならば、3番目のカテゴリーのゲームを開発しなければならない。世界的に名望と評判を手に入れたいならば、2番目のカテゴリーを開発する。そして両方を求めるならば運もよくなければならないが、1番目のカテゴリーがいいだろう。これはたいてい2番目と3番目のカテゴリーのタイプをミックスしたものだ。

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2.いくつかの原則と調査

よいゲームにするべく、ゲームの開発で気をつけなければならないことは何だろうか。よいゲームを開発するのにゲームデザイナーが視野に入れなければならない小さい要素がたくさんある。

ゲーム開発の始まりはいつもアイデアから。これはテーマかもしれないし、メカニズムかもしれない。アイデアはあるとき急に閃いたり、考えた末に思いつくこともある。

どうやってアイデアを思いつくかという創造性のテクニックはたくさんある。本をいろいろ読んでいるうちにその中から生まれたり、自然界がどのように問題を解決しているのか観察・評価したり、成功したゲームを分析してその構造を分解したりする。そのうちにこれまでほとんど/全くゲーム化されたことのないシステムがあることを突き止めるだろう。これが新しいアイデアにつながる。

調査でチェックするべきことは、同じテーマのゲームがすでに売られている(いた)のか、そしてそれはどれぐらい成功したのか、トレンドがある(あった)のかということ。この答えはゲーム市場、アーカイブ、紙媒体、インターネットにある。すでに似たようなメカニズムがある(あった)のか。そのメカニズムは最近どれぐらいの頻度で使われているのか。その答えは新旧のゲームをできるだけたくさん遊ぶことによって得られる。この調査では、著作権を侵犯していないかも確かめるべきである。そのテーマはプレイヤーにとってどれくらい面白いのか。その答えはアンケートや市場分析や自身の経験からのみ得られる。

トレンドを後追いするよりは作るほうがよい。すでにトレンドが進んでいるならば、手を出さないこと。すでに販売されていて成功したゲームと同じテーマのゲームを開発しないこと。そのテーマがすでにあるゲームによって十分にカバーされている場合は特にそうである。市場でもう何度も失敗しているテーマのゲームも開発しないこと。例えばスポーツゲーム、音楽や映画のゲーム、宇宙ゲームがそうである。

かつてはゲームといえばほとんどアブストラクトゲームしかなかったが、今日アブストラクトゲームが市場で成功するのは厳しい。プレイヤーは心打たれるテーマの世界に入り込みたがっている。ただしアブストラクトゲームでも常時2,3の成功はある。テーマは魅惑的で遊ぶ気を起こさせ、遊べばとりこになり、好奇心をそそり刺激的なものでなければならない。テーマが取ってつけたようなものや、別のものでもいいようなものでないほうがよい。どんなテーマでもゲームにしてうまくいくというわけではないのだ。メカニズムとテーマは一体感がなくてはならない。テーマ探しに時間をかけるのはよそう。「アンダーカバー」や「勝利への道」のようないくつものゲームで、私は1年以上テーマを探した。「勝利への道」では20以上のテーマ案とそれに合ったシナリオを作ったものだ。

ゲームの外見〜それにはタイトルも含まれる〜は、ゲームが最初に成功するのにとても重要である。タイトルは簡潔で響きのよいものでなければならない。ゲームの内容をよく表し、面白そうに聞こえ、好奇心をそそるものを。例えばインパクトのあるタイトルとして、頭脳絶好調、ハゲタカのえじき、ボーナンザ、エルグランデ、タブー、スコットランドヤード、ペナルティーキック、マジック、ザーガランド、クレイジーラビリンス、クーハンデルのようなもの。コロレット、シシミジ、イロノ・ウフビなど意味がないタイトルはインパクトもない。利益・廃液などはネガティブな表現を含んでいてテーマが魅力的でない。戦略ゲームに「手を放せ」などと付けたらゲームに合わず、間違った連想をさせてしまう。

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3.ゲームの開発

まずゲームの周辺からきちんとしよう。ゲームの目的は1文か2文で記述する。ゲームの用具は機能性が高く、しかも見た目も手触りもよいものを。ゲームの用具を使うこと自体楽しめるように。これまでゲームで使われてこなかったような新しい材料や形にするのがオススメ。そこから新しい革新的なアイデアが生まれることもよくある。

ゲームの開始・進行・終了はメカニズムとルールでコントロールする。そこでは1つのメカニズムの中にいくつものルールが存在することもある。新しいメカニズムの開発は、私にとってゲームを開発する中で一番楽しいことである。古典的なゲームのジャンルは革新的でないとよく言われる。これはその通りだろうか? 我々は新しいゲームでも革新性に気づかないだけなのだろうか? ティカル、メキシカ、ジャワ、トーレスは全て新しい移動メカニズムとコマをゲームに投入する新しいメカニズムをもっているが、ゲーム評論で言及されたことはない。もし君が新しくてオリジナルなメカニズムを開発したら、そのアイデアを最適化できるよう試みるべきだ。というのも、君がそれをしなければほかの誰かがやってしまって、君が稼いだはずのお金を稼がれてしまうからだ。新しくてオリジナルなメカニズムの発案者が、そのアイデアを最適化できなかったばかりに栄誉を受けられないなんてことは枚挙に暇がない。

アイデアを最適化できず成功を収められなかったゲームたち
タイプ/アイデア ゲーム 改良して成功したゲーム
クイズゲーム ディヴァース トリビアルパースート
押し出しゲーム スカウト、プッシュ ラビリンス
配置ゲーム エントデッカー、エルカバレロ カルカソンヌ
キャラクター交換 フェレータ 操り人形、プエルトリコ
アイデアを最適化できたゲーム
ゲーム アイデア
モノポリー 経済ゲーム
スクラブル ワードゲーム
マジック:ザ・ギャザリング カードコレクト
カタン 資源獲得と交渉

開発やテストプレイのとき特にオススメしたいのは、ルールをそばに置くことだ。ルールを要約して印刷し、ゲーム中もプレイヤーに使ってもらう。最終的なルールは開発の最後に作るが、そのときには、そのゲームをまだ知らない人に試作品と共にチェックしてもらおう。最初の試作品は至って簡単に作るのがよい。まだ何度も変更されるからだ。ほとんどの用具をパソコンで作れば変更も簡単でよいだろう。メーカーに送る試作品はきれいに作るのもアリだが、私の経験からいうとそんなことはしなくてもよい。試作品が機能的か、ゲームの用具が使いやすいかというほうがずっと重要だ。

ゲームの評価というものはいつも主観的だ。繰り返し遊びたくなる魅力が高いほど、ゲームの評価はよくなる。だが主観的なゲームの魅力のほかにも、ゲームの判断に用いられる客観的な基準がいくつかある。ゲームデザイナーが開発のとき特に気をつけたい基準は、「新しいゲームはオリジナルで、新しいメカニズムをもっている」ということである。例えばモノポリーは強烈な革新性があり、革新性が大きな成功を収めた好例である。しかし革新性が高いからといってゲームが成功するという保証はない。繰り返し遊びたくなる魅力が高いほど、そのゲームはよいことになる。同じ展開になることなく何度も遊べるようにするべきである。

プレイヤーの手番が来るまでの待ち時間はできるだけ短いのがよい。手番になってからやっと何かできるというようなゲームでは特に気をつけたい。どんなゲームにも興奮曲線がある。大事なのはこの興奮曲線がいかなるときも急激に落ち込んだりせず、ゲームの最後が最高になることだ。興奮が持続的に高まっていくゲームもあれば、小さい盛り上がりがいくつもあるゲームもある(タブーなど)。何度やっても新しい驚きがあるゲームにしよう。だからいつも同じ展開・結果・状況になるようなゲームはよくない。ルールは明解で曖昧でないものを。インタラクションというのは、自分の手番で勝利の可能性を上げつつも、同時にほかのプレイヤーの勝利のチャンスにも影響を与えるということである。ゲームはできるだけインタラクションがあるのがよいが、どんな場合にも必要というわけではない。

各プレイヤーに最後まで勝利のチャンスがあること。勝利の可能性はどんなに小さくてもいいが、なければならない。全員が最後まで楽しめるように、途中で誰も脱落しないように。ただしゲーム終了までの待ち時間が非常に短いならばその限りではない。ゲームの最初には全員同じだけ勝つチャンスがあること。スタートプレイヤーが決定的に有利だったり不利だったりしてはいけない。同じことがラストプレイヤーにも当てはまる。

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4.テストプレイ

ゲームのテストプレイはゲーム開発の中で最も重要な仕事のひとつで、費用をたくさん使って取り組もう。最初のテストプレイは自分自身で行う(セルフテスト)のがよい。つまり一人何役もやってシミュレートするのだ。これでそのゲームが機能しているか、明らかな弱点はないかを確かめることができる。セルフテストは、極端な戦略を試すのにも向いている。プレイヤーが極端なことをしても、ゲームは最終的にまだ機能するものでなければならない。私はそのゲームが面白いと感じて初めて、親戚や友達、知人やゲームサークルでテストすることにしている。さまざまな嗜好や年令で、できるだけいろいろな人とテストプレイすることが大切だ。その中でそのゲームのターゲット層やプレイ可能な年令を見ることができる。

ルールは変更するたびにテストしなければならない。広範囲にわたる変更では「段落ごとに」試すことをオススメする。つまり全部のルール変更を1回のテストプレイで試すのではなく、1つ1つ個別に試していくのだ。そうすることでのみ、それぞれの変更が改良につながっているか調べられる。

テストプレイで評価が悪くても、それがすなわちゲームが悪いということにはならない。テストプレイヤーがターゲットとして間違っていたのかもしれない。ゲームのよしあし、市場での成功の可否を評価するときは、テストプレイの成績の平均ではなく、「たいへんよい」という評価の有無と頻度が重要なのだ。「よい」が20票で「悪い」が0票という評価のゲームは、「悪い」が18票で「とてもよい」が2票という評価のゲームほどは成功しない確率が高い。「よい」という評価はたいてい購入するほどの魅力をもつに至らないが、「とてもよい」ならばありえる。

少なくとも1度、最終テストでうまくいくか試そう。試作品完全版にルールと評価アンケートをつけて、そのゲームを知らないテストグループに渡す。ここで初めてそのゲームが試練に耐えられるかが分かる。ゲームをいじることができるのは、公表されていない間だけだ。間違いや弱点は公表後もう修正できない。ゲームは自分のイメージを離れる。

メーカーとの共同作業は私にとってとても大切だ。一緒にやってこそゲームは市場向きに一番よい変更を加えられる。共同作業はメーカーでゲームのプレゼンテーションをしたりメーカーにゲームを発送したりするところから始まり、完成品が市場に出たところで終わる。メーカーはお客様でありパートナーであると考えよう。メーカーとデザイナーは成功するゲームを出すという同じ目標に向かっている。メーカーとの信頼関係を築こう。信頼はお金に代えられない。契約の締結は時間をおいて。契約を締結していなければ、社内のゲーム開発に口を出すこともできる。

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5.ゲームデザイナーの性格

ゲームデザイナーに必須の性格はたくさんある。その中からいくつか挙げてみよう。

尋常でないことは尋常でない努力によってのみ達成される。どんな成功の陰にも実にたくさんの努力があるのだ。実現可能な目標と、自分には高い目標を掲げる。ゲームの評判がたいへんよかったら、目標をさらに上げよう。たいていのデザイナーはアイデアを出し尽くしたと思って開発をやめるのが早すぎる。経験上、ゲームはいくらでも改良できると思う。今日では、ただよいゲームを作ることだけが成功というわけではない。共同制作もやってみよう。新しい視点を増やすこと。できるだけたくさんの種類のゲームを試すこと。それがあなたのプロ意識を上げるだろう。そのためにいつも学ぶこと。ゲームの本、ゲーム理論、確率学を勉強すること。

ゲームデザイナーは生活の中でも学び、探し続ける人である。ゲームの中のゲームを見つけるべく常に努力していくのだ。

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Kramer, Wolfgang. "Wie macht man gute Spiele?" / Spiel des Jahres

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