評価の基準 ―ゲームを評価してみよう―

 ― ドイツの評価基準 ― 実際の評価例 ― 国内の評価 ― 提言

1.序

 ゲームの評価はどのように行われるべきでしょうか?
 広い意味での「評価」にはレビュー(ゲーム紹介)も含まれますが,一般的には数字で点数をつけることになります.数字は過分に抽象的であるため,一目でわかる反面,

1.一意的になってしまいゲームの深さや豊かさを十分に表現できない

という欠点があります.時と場所によって,誰と遊ぶかによって,またその日の気分によってゲームは全く異なる様相を呈します.千差万別の状況をたったいくつかの数字で表せるのかという問題です.さらに評価から主観的な要素を完全に排除することはできないため(あるいは評価というものは主観にほかならないという説も),

2.根拠が希薄で独りよがりに陥る危険性

もあります.例えば一度負けただけで,子供のように「つまらない」と評価するのは問題があります.そのような評価を公表して,何人かの人が鵜呑みにし,よいゲームの普及が阻まれたらたらたいへんです.
これらの問題から,レビューを書くだけに留めて数字でゲームを評価しないサイトもあります.代表的なものとして名古屋EJFのサイトでは,

・どんなゲームでも人によって,場所によってそれぞれの面白さがある
・国内ではまだゲームの優劣がつけられるほど文化が成熟していない

という観点から評価点をつけない方針をとっています.これらは上記の欠点1と2にそれぞれ対応した指摘といえるでしょう.
 ドイツゲームは輸入品であるため単価も高く,たいていの人はリリースされたゲームを全部買えるほどお金持ちではありません.また,ゲームサークルを転戦してたくさんのゲームを楽しむという労力も大変なものです.そこで何を買って何を買わないかという選択が必要になります.そのときに信頼できる評価があればなんと助かることでしょう.それぞれのゲームがもつ固有の本質に迫る評価には,意味があります.そのためには,面白いか否かというだけではなく,それはなぜか,どこがどう面白いのかということがわかるようになっていないといけません.ゲーム先進国であるドイツの評価サイトから,評価の基準を探り,次いで国内での評価体制構築に向けて提言をしてみたいと思います.

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2.ドイツの評価基準

 まずゲーム雑誌は,以下のような数字で評価を行っています.ドイツの学校の成績表は5段階評価ですが順序が日本と逆で1が最もよく,5が悪いとなっています.フェアプレイ,シュピーラライはこれを用いた評価を行っています.インターネットでの評価もあわせて,10段階評価,段階評価(サイコロの目によるものでしょう),段階評価と3種類があるようです.

雑誌名 数字とその意味
フェアプレイ たいへんよい1〜5悪い
シュピールボックス わるい1〜10最高
シュピーラライ たいへんよい1〜5悪い
シュピールヴィーゼ 悪い1〜5たいへんよい
アウスゲパックト たいへん悪い1〜6トップゲーム

 6段階評価を行っているGames We Play(http://gamesweplay.de/info.html)では,以下のような基準を設けています.

1 問題外:ほとんどプレイできないゲーム
2 下らない:悪いゲーム
3 まあまあ:並みのゲーム
4 楽しい:なかなかよいゲーム
5 すばらしい:本当によいゲーム
6 最高:完全にトップクラスのゲーム

ただし「ゲーム評価は常に主観的な要素を伴うので,大まかな指針に過ぎない.年間ゲーム大賞,ドイツゲーム賞,アラカルト(フェアプレイ誌選カードゲーム賞)などのアワードも指針になるだろう」とし,この数字にこだわらないよう呼びかけています.
 もう少し拡張した形では,Spielphase(http://sunsite.informatik.rwth-aachen.de/keirat/lk/Bewertun.html)の以下のような基準があります.点数化もしていますが均等に割り振られていないところがポイントです.

幼児ゲームやRPGなど,基準が適用しにくい場合,評価をしない.
1(0〜10点) ルールが不明確であったり,用具が使用できなかったりしたためにゲームをプレイできない.めったにこの点数にすることはない.
2(11〜40点) 悪いゲームでほとんど面白くないゲームである.ただしルールや用具などは問題なく,ゲームにはなる.たいていは斬新さがなかった70年代以前のゲームであるが,新しいゲームにもある.
3(41〜60点) 典型的で平均的なゲームである.特に悪くはないが,長いこと楽しめるようではない.たいていのゲームはこれに入る.
4(61〜80点) よいゲームである.しかしヒット商品となるには何か足りないところがある.最低1度はやってみることをおすすめする.
5(81〜90点) かなりヒットしたゲーム.たいていは長く楽しめ,元は十分に取れる.
6(91〜99点) 誰にでも買うことをおすすめでき,お蔵入りすることが考えられない数少ないゲームである.すべてがほぼ完璧であり,元手以上に楽しむことができる.
7(100点) サイコロは6までなのでこの評価はない.完璧なゲームというものはないものである.もしあったらゲームの楽しみはなくなり,ひとつのゲームだけに固執してしまうだろう.

 これらの評価は以下のような手順で決められています.「まず初心者経験者とりまぜたいろいろなグループでテストをし,1から6の点数をつけてもらいます.それにルールブック,背景となるストーリー(あれば),用具,ゲームのシステム,斬新さ,価格,グラフィック,箱の大きさを考慮します.基本的に最も重視されるのはテストプレイで,次にコンポーネント(用具,グラフィック,箱の大きさ)を重視します.」そしてGames We Playと同様に,この評価にはあまりこだわらないよう注意を呼びかけています.
 もっと評価する要素を増やして多面的に見ているのがH@LL9000(http://www.hall9000.de/rubriken/spiele/rezensionen/kritiken/noten.htm)です.ここでは,コンポーネント,プレイアビリティー,インタラクション,意図的介入,魅力と5つに分けて6段階評価を行い,さらに数人のプレイヤーが評価をすることで客観性を出そうとしています.さらに読者が参加して評価することもできるという優れた内容で,ひとつの完成形と言えるかもしれません.もっとも,単一の評価に比べて一目でわかりにくいという欠点もあります.基準は以下の通りです.

コンポーネント(ゲームの用具の質とオリジナリティー,グラフィックなど)
 6 最高
 5 よい
 4 まあまあよい
 3 合格点
 2 貧困
 1 ひどい
プレイアビリティー(複雑すぎないか,流れはよいか,システムは適切か)
 6 文句なくよい内容.全てが整っている.ひっかかるところがない.
 5 ほとんど完璧
 4 ルールに不備や不明瞭な点は少ない
 3 若干ルールに不備またはバグがある
 2 練り上げが不十分である
 1 めちゃくちゃ.ルールといえるのか?
インタラクション(ひとりプレイか,相互に関わりあってプレイできるか)
 6 最高にインタラクティブである.活気がある
 5 相当にインタラクティブである
 4 インタラクティブな要素はまずまず持っている
 3 ときたまインタラクティブである
 2 それぞれがソロプレイをしている状態である
 1 ほとんどソリティアである.
意図的介入(運の要素が強いか,戦略的か)
 6 純粋な思考ゲーム.運の要素はない
 5 ほとんど思考ゲームといえる
 4 戦略的な要素が運の要素をやや上回る
 3 運の要素が戦略的な要素をやや上回る
 2 意図的介入はまずない
 1 意図的介入の可能性がない純粋な運ゲームである
魅力(どれくらい楽しいか)
 6 本当に楽しい.何度やっても飽きない
 5 とても気に入った
 4 何度も遊べる
 3 よいゲームだがやや見劣りする
 2 まあね…ヒットじゃない.次回は私抜きでやってね
 1 とっとと消えろ!

さらに,先述のGames We Playでは,パッケージの環境配慮具合も評価対象にしています.適度な大きさで,環境に配慮しないプラスチックを使っていないかどうかが評価されます.木製ならよいのかという疑問もありますが,さすが環境問題への取り組み先進国のドイツです.

環境への配慮
 ++ たいへんよい.適切である
 + よい.
 +- 平均的.部分的にプラスチックがある
 - 悪い.プラスチックがある
 -- たいへん悪い.大きすぎる

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3.実際の評価例

 それでは具体的に今年の大賞作品カルカソンヌ(ヴレーデ作,ハンス・イム・グリュック)の評価を例にとって,どのような評価がなされているか見てみましょう.まずゲーム雑誌から.

フェアプレイ(55号) 5段階で1〜2(たいへんよい〜よい)
シュピールボックス(2001年2月号) 10段階で7〜10(よい〜最高)
シュピーラライ(50号) 5段階で1(たいへんよい)
シュピールヴィーゼ(57号) 5段階で4(よい)
アウスゲパックト(?) 6段階で5〜6(たいへんよい〜トップゲーム)

 複数の批評家でばらつきが出るところがポイントです.次にインターネットサイト.

Siegpunkt 6段階で5(よい)
H@LL9000 6段階評価
名前 コンポーネント プレイアビリティー インタラクション 意図的介入 魅力
C.アインシュタイン 6 6 6 5 6
B.アインシュタイン 5 6 4 4 5
R.ベルナー 4 5 3 3 4
S.ヒルシュ 4 5 4 4 4
F.ガルトナー 4 5 3 4 5
Spielphase 6段階で5
Spielmonster 6段階評価
コンポーネント ルール アイデア 魅力
4 4 5 6

 以上がドイツでのゲーム評価方法と基準です.目立つことは,

・「ゲームにならない」というくらいのレベルでなければ最低の評価をしないようにしていること
・主観性を免れなければ盲信を戒め,あるいは評価の要素を増やして単なる好みとの切り離しを図っていること

です.これらは大いに見習うべき点だと思います.

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4.国内の評価

 さて,日本国内にもいくつかの評価の試みが行われています.わんこのページで行われている評価の大きな特徴は,ひとつは2人用としてみた場合にという限定があること,もうひとつは数字ではなくマークであるということです.管理人のわんこさんはコラムにおいて評価について,

・主観に徹すると共に,主観の基準を明らかにするべきこと(客観性を装わないこと)
・人数やメンバーは同じ状況であるべきこと
・凡例をつけて見やすくするべきこと

という提言をしています.そして実際に同居人と擦りあわせて作られた評価は,人数による専門化によって明確になり,固定メンバーによる評価であることから評価同士がよりよく相対化され,また数字ではなくマークであることによってイメージがわきやすくなっています.単純なようで思いつかない発想です.ちなみに評価は以下のような7段階(実質4段階)で行われています.

☆=素晴らしい。たいへん面白い。
◎=結構、面白い。
○=まあ、面白い。
△=普通。
×=つまらない。
-=2人じゃプレイできない。
?=未プレイ。

それから,評価に関する非常に興味深い考察が「ボードゲーム通信」でなされています.ボードゲーム通信ではH@LL9000と同様,以下のようにいくつかの基準を設けることによって客観性を高める試みをしています.「戦略」と「運」の評価に特徴があります.

1.「主観的評価」
 全く主観的に見て面白かったかどうか評価者がつける点数.これまでに面白かったゲームとの比較
2.「戦略」の要素(戦略性が強いものをあえて5点にしている)
 5点…戦略性がやや強い
 4点…適度に戦略的
 3点…戦略性がやや弱い
 2点…戦略性がほとんどない
 1点…高度に戦略的
3.「運」の要素(戦略と相反関係にある可能性あり)
 5点…適度に運が作用する
 4点…運の要素がやや強い
 3点…運の要素がやや弱い
 2点…運の要素が強い
 1点…運の要素が弱い
4.「するめ度」(戦略と相関関係にある可能性あり)
 5点…何回もプレイできる奥深さがある
 3点…普通
 1点…なんかやたら底が浅い
5.「初回OK度」(戦略と相反関係にある可能性あり)
 5点…最初にプレイする場合でも楽しめる
 3点…普通
 1点…最初のプレイは辛い
6.「コンポーネント」(ボードの美しさとか、雰囲気が出てるかなど.好みによる難しさあり)
 5点…良い
 3点…普通、可もなし不可もなし
 1点…悪い

H@LL9000の基準と比較すると,H@LL9000の「インタラクション」を除いて大まかには共通点が見られます.国内外を問わずゲームの評価ポイントはある程度収束することを示しているとも言えます.「ノイエ」では,コンポーネント,プレイアビリティ,戦略の3点で5段階評価が行われていました.

ボードゲーム通信 H@LL9000
主観的評価 魅力
戦略 意図的介入
するめ度 魅力
初回OK度 プレイアビリティー
コンポーネント コンポーネント

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提言

1.低い評価に注意

 さて,国内の評価体制について提言ですが,まずドイツ国内と比べてシェアがとても小さいことから,国内のゲーム市場にマイナスになるような行動はしばらくの間避けた方がよいだろうと思います.具体的には極端に低い評価をしないということです.ドイツから日本に入ってくる時点で「できるだけ面白いゲームを仕入れよう」というゲーム屋さんの努力による選別がはたらいている訳ですから,つまらないと思ってもある程度大目に見て,国内にあるゲームの種類が豊富になるように協力することが得策でしょう.好き放題に辛口評価ばかり書いているとゲーム屋さんが萎縮し,年間ゲーム大賞などの賞を取ったゲームしか入らなくなる恐れがあります.
 もちろん「面白くないものを面白くないと書いて何が悪い!」と思われるかもしれませんが,面白くないと思ったらただ面白くないと書くのではなく,どこがどう面白くなかったのか,また逆にこういう人なら面白いかもしれないというようなことを書いた方が建設的です.「ゲームにならない」というレベルでない限り最低の評価をしないドイツの基準も参考にしましょう.

2.基準を明確に

 評価には何らかの基準を示してもらいたいと思います.まず最低限,何段階評価か,数は多いほどいいのか少ないほどいいのかを示しましょう.これまで見たとおり,世の中には評価の段階には10,6,5,3などがあり,また少ない数字がよいということもあります.これが一般的だというものはありません.強いて言うならば,学校の5段階通知表方式が多いでしょうか.「オール5」なんていう言葉もありますが、近年は学校でも10段階評価や,マークによる評価もされているようです.
 次に,ゲームのどの部分について評価しているのかという視点を明確にしましょう.一口に「よいゲーム」と言ってもコンポーネントがいいのか,システムがいいのか,雰囲気がいいのかなど目の付け所によってさまざまです.そのため複数の項目を作って評価するという方法もあります.単一の項目で評価するならば,どの点に重点をおいているのか明記するべきだと思います.
 そして一度設定したら同じ基準で評価できるようにしましょう.数字だけで内容がはっきりしないと,基準がものさしの役目を果たしません.そこでそれぞれの点数にどういう意味があるのか明記しておいた方がよいと思います.新しくゲームを評価するときに,前に作っておいた点数とその意味の対応を確認してから評価します.途中で基準を見直したら,全部を新しい基準で評価し直すようにします.

3.イメージしやすく

 数字は非常に抽象的で,簡明な分,多くの情報が落とされます.初心者は数字だけ見て最高評価のゲームしか注目してくれないかもしれません.従って少ない情報でもゲームのイメージが膨らむようにしておく必要があります.ひとつには数字ではなくマークにして見やすくするという方法もあります.できれば「このゲームの魅力は…」「このゲームの長所(短所)は…」というようにコメントを添えるのが一番確実です.これによってなぜその評価になるのかが明らかになれば,評価の信頼度も上がることでしょう.単一の総合評価にするか,複数の評価を併記するか,面白さだけを数字で評価して内容は文章にするか,具体的な方法にはいろいろな可能性があります.国内外の評価を参考に自分で最適な基準を探しましょう.

4.客観性を心がける

 評価と称するからには,自分の好き嫌いという主観からできるだけ離れて,ゲームをありのままに描写しようという客観を心がけるべきだと思います.もちろんここでいう客観性とは誰の目にも同じく映るという科学的客観性ではありません.たくさんの人が同じ評価をしたからと言ってそれが(自然科学的な意味での)客観的なデータになる訳ではありません.それは対象(Object)をありのままに正しく捉えるという意味での客観性(Objectivity)です.普遍的な主観性と置き換えてもよいと思います.極言すればたった一人でも客観的に評価することは可能です.「(自分が)面白いと思うこと」と「(ゲームが)面白いこと」の差は有意に成り立つのです.もちろん出発点は自分の感想ですが,そこからできるだけゲームを対象化していきましょう.
 そのためには「このゲームはなぜ面白いか」「よいゲームとは何か」ということを絶えず自分で問い,ゲームをじっくりと見つめて審美眼を磨き,評価の基準を吟味していかなければなりません.答えはきっとありません.ゲームの普遍的な価値は,遊び続けることによってしか成り立たないからです.言うほど簡単なことではありませんが,少しだけ心に留めておいてもらいたいと思います.

5.他人の評価を鵜呑みにしない

 日本人一般に,お互いの意見が違うことを嫌い,また権威に盲従してしまう傾向があるため,一度大手が評価をしてしまうと鵜呑みにすることがよくあります.確かに信頼のおける評価を探し,その評価を参考にすることは独断に陥らないために大切です.また上記のような客観性を最大限心がけた評価が結果的に似通うのも当然のことです.しかし,何も考えずに「みんながいいと言っているからいいんだろう」「この人が面白くないと言うから面白くないんだろう」と決め付けるのは危険です.実際,あるサイトの短絡的な評価が蔓延し,その割を食った好ゲームもあります.数字だけにとらわれず「この人はどうしてこういう評価をするのか」という疑問をもって他人の評価に接するようにし,よく吟味された自分自身の基準を大切にしましょう.その意味では,大賞受賞作などのアワードの有無も一度は度返ししてみることをおすすめします.大賞にノミネートされていなくてもよいゲームはたくさんありますし,逆に大賞にノミネートされていても面白いとは限りません.


 ゲームをじっくりと見つめる気持ちさえあれば経験が少なくとも評価はできると思います.ご自分の手持ちゲームを評価し,できれば公表してみてはいかがでしょうか.それによって眠っていたゲームに「もう一度やってみようかな」という気持ちが起きれば得したものです.活発な評価が国内のゲーム市場に刺激を与え,さらに発展する一要因になることを願ってやみません.

2001年12月3日

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