子どもにルールを教える

S.ドゥックシュ(ドイツ年間ゲーム大賞審査委員長)

「パパ、ボクたちと一緒に遊ぼうよ」とジェシカとアントンが呼びました。シュテファンがまだ部屋に入っていないうちから、子どもたちに捕まってしまいました。シュテファンは夕食後まで待ってもらって、新しいゲームをシュリンクから取り出しました。子どもたちはコマに飛びつき、親はルールと格闘し始めます……。2分後、最初のゲームコマをテーブルの下に置いて質問が始まります。「ここにあるカードは何?」「いつになったら始められるの?」

読んで説明するのが親の仕事

誰でも、長い仕事や家事が終わってからまだルールのテキストに集中できるというわけではありません。そこで、子どもゲームのルールは、ファミリーゲームよりもずっと短いですが例外規定はめったにありません。親は、いずれにせよ幼稚園や小学生くらいの子どもの前で読まなければならないのです。親はまじめに読まなければなりません。あと数ページのところでも降参してしまえば、後からどうやって子どもたちにやる気を出してもらえるでしょう?「ボクはもうたくさん!」大人が自ら見本になってこそ、新しいゲームのルールを理解してもらえるのです。

「待って、まだ分かんないよ!」シュテファンはコマを使って1回やってみます。「そこのカラーダイスは何に使うの?」アントンが聞きます。ジェシカはもうやる気がありません。つまらなさそうにコマとカードをよけました。すぐに始まらないので雰囲気が悪くなっています。最初の経験がつまらなかったら、高価なゲームは遊ばないまま棚にしまわれ、ほかのゲームを買う気も失せてしまうでしょう。

子どもがいなくても準備を

「OK、今日はやめにしておこう。」シュテファンは言います。それから夜に静かなところでルールを読んでくると約束しました。「そうしたら明日はお父さんがちゃんと説明できるし、すぐ始められるからね。」子どもたちはちょっとぶつくさ言っていましたが納得しました。こんな風にして、興奮した子どもたちのいないところで新しいゲームも準備をしましょう。ゲームの用具をよく見れば、何がどのコマか、ルールでいうタイルやコマはどれなのか分かります。用具を並べて、何手番か実際にやってみましょう。子どもゲームならば5分から10分もあれば十分です。

次の夜、シュテファンは意味ありげな顔つきでメーカーがルールに付けた導入のストーリーを読んで聞かせます。アントンはすぐ、このコマが騎士だね、それからこれがドラゴンだと解説してくれます。こうしてゲームの用具に慣れ親しむのです。シュテファンは明快に、子どもたちに分かる言葉でそれぞれのマスや手番の意味を説明します。

ジェシカはすっかりゲーム熱が上がりました。おばあちゃんに欲しいゲームリストを送ろうといいます。でもシュテファンはため息。また次のゲームも全部を前もって試しておいて説明しなければならないのか……そうとは限りません。誰かがあなたの子どもたちに新しいゲームをプレゼントするならば、その人にゲームの準備をしてもらって、説明して一緒に遊んでもらうよう頼んでみましょう。誕生日やクリスマスでやれば、どれほど子どものウケがよいか驚きますよ。というのも、子どもたちに何かをプレゼントする人は、一緒に新しいことを見つけたり試したりする時間も一緒にプレゼントしなければならないからです。

小さな記憶のアーティスト

次の回、シュテファンと子どもたちは一緒に準備しました。ルールはもう全部繰り返さなくても大丈夫です。まるで記憶ゲームのように、子どもたちはルールを詳しく覚えています。大人でさえ1,2週間もすればルールブックを見なければならないものなのに、すごいですね。まだ字を読めない子どもたちが絵本を読み始めるや否やほとんど暗誦できるのと同じように、子どもたちはゲームの用具を見るとたくさんのことを思い出すことができます。これは楽しみでもあり、ルールの確認にもなるでしょう。

たくさんの例を図解してあるルールブックは、これに最適です。最初の準備が図解されていて、手番で大事なことがまとめられていれば、小学生でもすぐ理解することができます。残念なことに、このような図解豊富なルールはまだ全てのメーカーに標準ではありませんし、そんなに簡単に図解できないゲームもあります。でも2、3の具体例があれば、小さな記憶のアーティストたちはどういうゲームなのかイメージがわくでしょう。そして子どもたちはやがて大人なしでもゲームをできるようになるのです。大人は、どこか引っかかる点があったときにだけ聞かれるくらいになるでしょう。

ゲームが一緒に育つ

メーカーが表示する対象年令は、そのゲームのターゲットを表すものです。しかし箱に「4〜12才」と書いてあっても、親はそんな広い年令層が一緒に遊ぶことはないと思うでしょう。たいていのゲームは、子どもの成長に合わせて2,3年は楽しめます。高価なゲームなのに1年半後に隅に追いやられるならば、親は怒ります。それは分かりますが、ほかにもそういうものはあります。たとえば服は高いですよね。子どもたちはすぐ大きくなるものです。

ゲームが一緒に育つということに注目してください。これにはたくさんのバージョンがあります。一番低い年令には簡単な初心者バージョン。それからゲームをマスターしてもっとやりたいことが出てきたら発展バージョン。そしてうまくいけば、もっと年上の子どもや大人ですら楽しいくらいよく練られた課題をもったバージョンにもできます。

子どもに合わせたルールを

子どもたちは2才以上年が離れているという家族が多いでしょう。上の子は下の子が遊ぶゲームを退屈だと思いますし、末っ子は勝ちたいと思ってもお姉さん相手では勝ち目なしです。負けることは決して悪いことではなく、人生にとって不可欠な経験だといえます。それでも親は準備やゲームの経験に対して自分の要求に合わせたルールを作ることができます。シュテファンはアントンとサイコロの振り直しをしないよう取り決めました。ジェシカは勝つために、多くのコマを集めなければならないことになっています。アントンも3回勝ったら大人扱いしてくれるよう主張しました。

ルールはゲーム全体を決める枠組みとなります。でも最初から全部を変えてしまって自分の「ハウスルール」ばかりにするのもよくありません。ゲームのニュアンスや面白さの中には、ゲームを何度か「古典的に」試してこそ分かるものもあります。したがって、ルールが推奨するとおりに遊んでみて、習熟していくべきです。その後ですばらしいルール変更を思いついたら、もちろん何度も試してみてかまいません。ただし、知らない子どもなどのゲストと遊ぶときには、その「家族ルール」を知らないどころか、まったく別なルールで遊んでいることもあるということは覚悟しておいたほうがよいでしょう。

問い合わせOK

小売店の雇われ店員ではゲームを説明できないだけでなく、ちょっと箱を開けて中身を見せることも、ましてや試してもらうことなどもできません。でも客としてはフェアな気持ちで、中身が揃っていて新しいならば、興味に応じて箱を開けたサンプルでも買いましょう。そうせずに客がお店のアドバイスに感謝するだけで、ゲームを隣のデパートで2ユーロ安く買ったり、インターネットで注文したりするようでは、小売店はこういったサービスをできなくなってしまいます。専門店をサポートしていれば、問題が起こったときにお店に行って詳しく説明を聞くこともできます。遠慮なく、質問があったらメーカーに問い合わせてください。回答もサービスのうちです。なくなった部品の発送も、もちろん送料負担になるでしょうがたいてい受け付けてもらえます。


Stefan Ducksch, Spielregeln - kein Kinderspiel ("Sonderheft Lernen mit Spielen" 2006 of the German magazine "spielen und lernen"; www.familie.de and spiel-des-jahres.com)