高円寺 すごろくや

2006年4月22日、東京・高円寺に新しいボードゲームショップがオープンした。元テレビゲーム開発者である店長さんが、水道橋のボードゲーム輸入代理店・メビウスゲームズからノウハウを学び、その姉妹店として開いたお店。「家族・友だち みんなで楽しめる、ボードゲームの店」というコンセプトで、新たなボードゲーム愛好者層の開拓を始める。

 日本のボードゲームショップには現在、2つの軸があると思う。ひとつは独自輸入の有無。もうひとつは店舗の有無。これによって輸入あり・店舗あり(メビウス、バネスト、広島)、輸入なし・店舗あり(ジョイフルハイパー)、輸入あり・店舗なし(新大陸、アークライト)、輸入なし・店舗なし(道)という4つの分類が可能だが、すごろくやは現在のところ、2番目の「輸入なし・店舗あり」に属する。品物は主にメビウスが卸しており、そのほかに国産の数点を扱う。

 ウェブで情報を収集し、通販も当たり前というぐらいのコアな愛好者にとっては、店舗の有無よりも独自輸入の有無が重要になる。他の店にはないボードゲームを扱っていることは即、そのお店のセールスポイントになるのである。しかしこの拡大路線にはもう限界がきていて、海外の主要ゲームメーカーがいずれかのルートで日本に入っている現状では、後発で独自輸入をしようにも、リスクの高い中小メーカーの掘り起こしになるか、主要メーカーの不毛な取り合いになるかのいずれかだろう。

 そこで時代は独自輸入なしでも店舗をもって、その周辺で新規ユーザーを掘り起こすという段階にさしかかっていると思われる。ゲームマーケットでもレアゲームを金に糸目をつけず買い求める愛好者層とは別に、ただ面白そうだから遊びに来たという、限りなく一般層に近い人が多く見受けられた。人生ゲームの次に遊ぶゲームを探している家族や友だちグループ。すごろくやの視点もここにあるように思われた。

 独自輸入とは違う路線の、すごろくやのセールスポイントとして、3つを挙げてみよう。

1.高円寺0分

中央線・高円寺駅の下りホーム後方から見えるすごろく屋の店舗。徒歩0分、道に迷うことはない

すごろくやは、中央線・高円寺から徒歩0分という絶好の場所にある。東京から20分、新宿からならばたったの6分で着く(休日は快速が通過するため、中野で乗り換え)。さらにお店はホームからすぐに見え、南口から出てビルに入り、エレベーターを上がってお店に入るまで1分とかからない。メビウスも水道橋駅から近いところにあるが、駅からの近さはそれ以上だ。日曜も開いており(火曜・水曜定休)、営業時間は20:00までだから、西東京の人は気軽に行けるだろう。

 西東京・中央線沿線には大学生や若者が多く、経済的に比較的余裕があって文化度も高い傾向があると思う。北千住と吉祥寺の駅前を比べればその差は明らかであろう。その西東京の入口となる高円寺ですごろくやが認知されれば、沿線住民に受け入れられる可能性は十分に高い。すごろくやを中心に、イベントなどを通して西東京のボードゲームコミュニティーが活性化し、さらにこれをモデルとして地域密着型のショップが各地に生まれることが期待される。

2.店長のセレクト

イチオシ10ゲーム。ショーケースに並べられ、ゲームの内容を知ることができる

メビウスから卸されたゲームばかりのはずが、陳列の方法が変わるとまったく違った印象を受けるのは不思議なものだ。メビウスでは、新作が一番目立つところに並べられている(ような気がする)が、すごろくやは「イチオシ10ゲーム」として店長のおすすめ10タイトルを一番目立つところに並べ、ボードゲームをあまり知らない人でも目移りしない。最初のイチオシ10ゲームはダイアモンド、お邪魔者、6ニムト、ミッドナイトパーティ、ブラフ、カルカソンヌ、ごきぶりポーカー、ナイアガラ、こぶたのレース、マンハッタン。価格帯にも、ターゲット層にも幅を持たせつつ、店長の個性も十分反映されているというラインナップには唸らせられる。

 このほかにも手前に「キッズ&お手軽」コーナー、奥に「新作&じっくり」コーナー、「おすすめ」「2人用」「国産ゲーム」コーナーが設けられ、客はそれぞれの趣向に応じて、各コーナーで自分がほしいゲームを探すことができる。どのコーナーも陳列に店長のセレクトが反映され、購入を迷う人にはよき道しるべになるだろう。

 国内に輸入されるアイテムがどんどん増えている昨今、「何でもある」というお店は、面白いゲームだけを求めてくる一般層にとって混乱を招きやすい。定番をきっちり揃えつつ、店長が自信をもって薦められるゲームだけを絞って扱うという方針は、コアな愛好者には物足りないかもしれないがとてもよいことだと思う。

3.ルール説明DVD

カウンター脇のモニターではすごろくやオリジナルのルール説明DVDを見ることができる。

「イチオシ10ゲーム」のうち、7タイトルにはすごろくやオリジナルのルール説明DVDが付属する。ルールブックを読んでもよく分からないという人に、ナレーション入りの図解でルールを分かりやすく説明してくれる。その出来のよさは、このDVDのためにゲームを買いなおしてもいいと思うほど。店長さんがこれまでのキャリアを生かし、手間と暇を惜しまずに作った渾身の作品だ(ナイアガラは、ドイツ版の日本語吹き替え)。

 ここにも、定番には見向きもせず、ひたすら新しいゲームを追い求めているフリークではなくて、あくまでボードゲームにちょっと関心を持っている一般層への視点がある。ボードゲームをちょっとでもやりこむと、こういう視点(初心というべきか)は見えにくくなってしまうので、それを大事にするお店の方針には感銘を受けた。


以上、開店翌日に訪問して感じたすごろくやの特長をまとめてみた。輸入なし・店舗ありが時代の趨勢であるにしても、ボードゲームがまだまだマイナーな趣味である以上、前途洋々では決してない。大阪のシュピーレブルクは閉店を余儀なくされたし、秋葉原のジョイフルハイパーも数々のサービスを打ち出していながら「ボードゲーム単体ではお店はやっていけない」という。しかし、だからこそ、すごろくやにはこうした長所を生かしながら、ボードゲームの一般化という時代のパイオニアになってもらいたいと思うところである。

高円寺すごろくやのホームページ
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2006/4/24 (C)Table Games in the World