(独シュピールボックス誌2005年第3号特集)

ゲームマーケットin東京

家庭的な世界

連続6年目となる今年3月週末、東京では1日間のゲームマーケットが開催された。これはプレイヤーの大会合と小さな販売メッセの合いの子である。650名の参加者が14社と46ゲームサークルの出品を観覧し、新作をテストプレイし、購入するチャンスもある。ゲームを購入できる可能性もあるとは、イベントの設立者である草場純氏(趣味のゲーマー、教師)ははじめ予期していなかった。しかし年が経つうち日本人たちの間ですぐお店も話題に上り、そのうちに企業や小さいメーカーもゲームを発表し始めることに草場は気づく。そのうえ人気のゲームオークションもある。

とんどの参加者は男性で20〜60才、日本の「アンプラグド・ゲーム・プレイヤー」の小さなグループに属していることが多い。つまり非電源のゲームを遊んでいるということだ。草場はゲームマーケットの家庭的な雰囲気を強調する。「この集まりに参加する人は誰でもみんなと知り合いになり、共同体の一員なのです。」この共同体は年々成長し、そのうち一般家族からの興味をだんだん喚起している。

商売も同舟で

他方でこの集まりは商業関係者にとっても興味がある。輸入代理店のメビウス・ゲームズ(東京)、ゲームストア・バネスト(名古屋)はヨーロッパの最新作を持ち込んだ(アバクスの『チャイナ』、ラベンスバーガーの『オーストラリア』、クイーンの『ギルド革命』など)。その結果、大いに満足できる販売となった。特にバネストでよく売れたのはイライラカードゲーム『ポルノスター』。ドイツの新規小メーカー、ペーパーゲームズの作品で、プレイヤーはポルノ映画のプロデューサーとして成功を収めようというゲームだ。ヨーロッパゲームの輸入代理店として日本筆頭格のメビウスは「ファミリー」をターゲットにした大メーカーのゲームを扱い、バネストはそれに対して小メーカーを集中的に扱っている。
両店とも、『カタンの開拓者』の日本語版の公開に続く小さなブームで利益が出るようになった。「確かに限られた期間の出来事でしたが、」バネストの中野将之氏は言う。「それ以来ゆっくりですが着実に購入者は増えました。」「彼らはインターネットでどんどん情報を集めています。」とメビウスの能勢良太氏は補足する。「かつて常連さんはヨーロッパの新作を全部買うだけでした。これらのゲームを入手するチャンスが少なかったからです。そのうち人々は目標を定めて手に入れ始めました。」だが両店にとって重要なのはまともな売上だけでなく、ゲーマーとしての発見を知らせることである。それが優良なお店であり続けることになるからだ。
ゲームデザイナーにとってもゲームマーケットは重要なフォーラムである。彼らは自ら開発したゲームを少量生産でもちこみ、そこで興味をもった参加者に紹介する。ドイツ語で「ディ・キステ・デス・ブレットシュピールス」というクラブ(ボードゲームのおもちゃ箱)は6人の別々の作者が7つも新作ゲームを発表した。特に野心作だったのが村上崇氏の『エルスミーアの魔女』。3〜4人のプレイヤーが魔法使いの弟子となり、宝石を集めて魔法のアイテムと交換する。1ゲームはともかくも3〜4時間かかる。このゲームはプロのグラフィック・アーティストとの共同作業で生まれ、そのため水準以上の出来となっている。

クニツィアを手本に

ドイツのヒッポダイス・ゲームデザイナーコンテスト2005の優勝者である澤田大樹氏も、彼の作品『スクウェア・オン・セール』をよりたくさんの愛好者に紹介するためゲームマーケットを利用している。澤田氏のお手本はライナー・クニツィアで、彼の目標はゲームをドイツのメーカーに採用してもらうことだ。システムエンジニアである澤田氏は、ドイツ市場を回り道して日本に知らせる方が、今はまだ手っ取り早いと考える。マーケティング専門家の川崎晋氏も、澤田氏と同じようにルールをできるだけ分かりやすくして出品している。『グラグラカンパニー(グランペール)』の作者がまばたきしながら言うその一番大事な理由は、まとめてテストプレイしてもらいやすいことである。

佐藤朗/ニコラ・バルケンホル

日本のゲーム市場が自分の顔をもつ

もう輸入だけじゃない

ドイツは日本から何を輸入しているだろうか。例えば車。また日本はドイツから何を輸入しているだろうか。例えばゲーム、正確にはボード・カードゲーム。確かに、ドイツで輸入している日本車は日本で輸入しているドイツゲームとは比べ物にならないほど多い。しかし日本のドイツゲーム愛好者たちは何年もしっかりと彼らの趣味にいそしみ、育てている。当地ではNPO法人という会が発足、ウェブサイトを運営し、大都市で定期的にゲーム会を開いている。それが『ゆうもあ』だ。日本でボードゲーム文化を広めるために貢献しようとしている。

『ゆうもあ』はその上2002年にゲーム賞を創設、ドイツゲーム賞と年間ゲーム大賞を融合したようなものである。4つのカテゴリーで表彰が行われる。海外ゲーム・入門者部門(2005年は『頭脳絶好調』)、海外ゲーム・フリーク部門(『乗車券』)、国産ゲーム部門(『サンファン』)、子どもゲーム部門(『オバケだぞ〜』)。ちなみに『サンファン』の日本版は上箱のテキスト、カード、ルールが現地語になっている。もしかしたら審査員は次には純日本ゲームを選ぶかもしれない。昨年、遊宝洞が自社製品をエッセンのシュピールで発表してもう2回目になった。2003年はまだあまり注目されないでいたが、2004年は『妖精奇譚』がよく売れ、最終日の日曜日にはもう入手できないほどだった。社長の広木克哉氏はその成功をこう語る。「我々の前のゲームは少し複雑なときがありました。いろいろな要素を詰め込みすぎたのです。そこから学んだ我々は『妖精奇譚』を簡単に遊べるようにしました。それでカードにはテキストの代わりに直観的にわかりやすい絵文字が入っています。」このコレクト&プレイのカードゲームで注目すべきところは考え抜かれたカードの補充メカニズムだ。
同様に純日本ゲームを発表しているのは、2003年に設立された出版プロジェクト・グランペールだ。国内のゲームデザイナーの独創的なアイデアを公開しようとしている。その名前はツール・ド・フランスで坂道に強い選手が着ている水玉のトリコットに由来している。サイコロの目が日本の象徴である赤い太陽を思わせる。今のところ計画されているのは高すぎないゲームを少量出版するだけで、コストの保証を請け合い、テスト購入者の興味を喚起するというものだ。
5タイトルをグランペールは初年度に用意した。レースゲームを2つ、ロールプレイングゲームを2つ、そして陣取りのアブストラクトゲーム。昨年にはカードゲームを2つと風変わりな建設ゲームが続いた。このプロジェクトはゲーム愛好者によって行われており、その情熱はドイツのボードゲーム信奉者に何一つ劣らない。メンバーの1人である山上新介氏は、取引所でパン関係の仲買人をしている(?)が、彼の使命はゲームにある。2部屋ある住まいの1と2分の1はゲーム―購入したものと自作のもの―が独占している。まだグランペールは理想主義者のプロジェクトだが、しばらく後には商業的な利益があるメーカーになるかもしれない。
やや簡潔な体裁で作られたゲームでは、グランペールが輸入ゲームに対抗することは―今までは―できなかったし、するつもりもない。しかし輸入ゲームにもせいぜい翻訳ルールが付属するぐらいだ。日本人のゲーム愛好者がインターネットを探しても、英語ルールが見つかればまだましということが多い。ゲームを日本でも見通しを立ててある程度の量を売るため、輸入代理店は翻訳をしている。
その中には、ヨーロッパのボードゲームとカードゲームを扱う中では日本で一番のひとつであるメビウス(東京)がある。ラベンスバーガー社のアジア輸出担当社であるヘルマン・ブルンスが言うように、メビウスはアレアや他の高級ゲームの卸売業者でもある。ラベンスバーガーは現在10タイトルの子ども向け、家族向けゲームの日本語版を出している。ブルンスによれば以前にはもっと多くて25タイトルあったという。これらはドイツで生産されており、輸入品というだけで関連するコストがかかってかなり高かった。それに日本ではまだコストのかかる販売構造があった。そこでは依然として組織が細分化されていたためにあまりに多くのお金が失われたとブルンスは嘆く。しかしラベンスバーガーはメビウスにくっついて日本のデパートで行われるドイツ週間に参加することにしている。これは4月の初めから始まった日本におけるドイツ年で開かれているものだ。ちなみに「日本の年間ゲーム賞」である『サンファン』の販売数にブルンスはとても満足している。昨年の8月にメビウスで販売が始まり、11月にはもう日本版の半分が売れたという。
独自にルール訳を添付している輸入代理店は東京だけでなく、名古屋(ゲームストアバネスト、宣伝文句はアナログゲーム販売)と広島(プレイスペース)にある。サービスに対して独自に販売価格が上乗せされる。このような輸入ゲームは末端価格と比べて170%高い。それはもちろん高い輸入コストのためでもある。ちなみに『ゆうもあ』の小野卓也氏はウェブサイトTable Games in the Worldにてルールの翻訳を用意している(リンク先はwww.spielbox.de参照)。

勝敗は二の次

日本のプレイヤーはもっと別なのか。そうであり、そうでない。騒がしく勢いのあるものは何でもうまくいくと、ラベンスバーガーの輸出マネージャーのブルンスは経験上知っている。これが一面。他方で日本の親たちは子どもに教育的価値のあるゲームを買う。あるいは少なくとも教育的価値があるように見えるものを買う。それは木製であるか、木の部品があるという理由である。同様にゲームの社会的な要素が役に立つと報告する西洋の学者もいる。アメリカ人のケン・ライス氏も、日本のゲームサークルで勝敗はあまり重要でないと気づいた。彼は6年にわたる東京在住の間、定期的に日本のゲームサークルJAGAに参加していた。18年前から月に1度、50〜70人が東京にある公民館に集まり、13時から20時まで遊んで引き続きレストランに行くのだと、最近またアメリカで生活しているライス氏は説明する。この会の参加者は30〜60才で、何でも遊ぶ。誰であろうと、何であろうと、皆はゲームに楽しみを見出す。
デュッセルドルフのヘニング・シュレア氏もそのことを請け合う。彼は極東のゲーム感覚を日本語の動詞「モリアガル」で表現する。その意味は、活発になり楽しくなるということだ。彼は2年間東京で過ごし、後にも滞在して、確かに戦略的な古典もたくさんプログラムに入っているが、特に多くのインタラクションからよい雰囲気ができるゲームの評判が高いという経験をした。例えばシュレア氏はグランペールの『競馬マフィア』を挙げる。「日本のゲームサークルではまるでレースの順位を現実のように見なして、とても賑やかです。」
次号ではグランペールのゲームに迫る。

ニコラ・バルケンホル

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