演奏会

室内楽アルテ&長井ウィンドオーケストラのニューイヤーコンサート。午後2時より置賜生涯学習プラザにて。
 今回の演奏会はやる気の有無以前に、実現可能性に大きな疑問符が付いていた。
 室内楽アルテとは、長井周辺の出身者で、音楽大学に在籍または卒業した若い音楽家の集まりである。活動9年目になるが、実質3〜4名しかおらず、演奏会の度に人脈をフル活用して演奏者を集めているという実態である。
 長井ウィンドオーケストラはこれに対して一般愛好者による吹奏楽団体である。活動7年目だが、こちらも団員は実質5〜6名と低迷しており、これまた演奏会の度にエキストラをかき集めて何とか形にしている。
 つまり、せいぜい10人足らずである。この現実に加え、室内楽アルテの代表はイギリス留学中、そして長井ウィンドオーケストラの代表(私)は東京にいるとくる。地元で率先してリーダーシップを取ることができないもどかしさ。
 ところで長井ウィンドオーケストラには立派な後援会組織がある。会員数は100名に迫り、会長はじめ顧問には長井西置賜の各界の重鎮が居並ぶ。このような弱小団体を応援してくれるのは、それだけ地元を活性化して若い人材の流出を防ぐという期待が強いからだというが、応援する側とされる側のバランスはどう見ても不釣り合いである。
 このような状態なので、演奏会はすっかり後援会が何から何までお膳立てするという形で準備が進んだ。こちらとしては恐縮この上ない。プログラムの原稿を上げるのと、精一杯の演奏をするくらいしかできない。応援しただけのメリットを感じてもらえるのか全く自信がなかった。その中で、私は誰のための演奏なのか考えこんでしまった。ここまで来ると、自分たちの楽しみのためだけであるとは言い難い。かといってプロでもないのだから、お客様のためだけでもない。
 エキストラも入れて合奏は20名ほど。半分以上が山形大学の音楽文化コースの学生(師事するプロ奏者をもつ学生)なので、出来はよくて当たり前であろう。当日は250名ほどのお客様が聴きにいらっしゃって、まずまずの盛会。私は指揮者兼司会者という無茶苦茶な組み合わせの役割(演奏が終わったら袖に引っ込んでマイクを取って解説し、マイクを置いてまたステージに戻るというのを繰り返す)だったが、内容はともかくとして、曹洞宗の法要に比べたら複雑なことはなかった。
 演奏会が終わって、打ち上げがあり、2次会になるまで、心のもやもやは晴れなかった。今回の演奏会に、どれだけの意義があったのだろうかという疑問である。たくさんの人に手間と時間とお金をかけさせた意味は。
 2次会で、まずあるお客様の話していたことを聞いた。
「今の長井で、若い人の顔を揃って見られること自体、貴重なことだ」
 そして次に後援会の方のお話。
「若い人が集まって楽しいと思える場所を地元で提供できなければ、未来はない」
 また事務局の方のお話。
「こんな世の中で、こういう若い人々が何かやってくれそうだと期待している」
 最後に団員の話。
「これからまた続けていきたい」
 悲愴感も漂う中、私は今回の演奏会の意義を感じとったような気がした。たとえ中心が細くなろうとも、求心力が続く限りこの「運動」は意味をもって存続するのだろう。私はその中で何をしていくべきなのか、また何をしたいのか、じっくり考えなければと思った。

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