インド映画2

バグバンタイトル:Baghban(バグバン)
ストーリー:
 主人公マーロートラはICICI銀行(実在のインド銀行)を定年退職し,4人の息子たちに妻のプージャーと共に老後の面倒を見てくれるよう頼む.しかしそれぞれ独立し,家庭も持っている息子たちは誰も一緒に住みたくない.そこで息子たちとの同居を諦めさせるため,マーロートラとプージャーを別々に,しかも6ヶ月交替で引き取るという提案をした.だが夫妻はしぶしぶ了承し,住み慣れない家で別々の生活を始めることになる.
 果たしてその生活は全く幸せではなかった.居候のように邪魔者扱いされ,何一つ自由にさせてもらえない.嫁はあからさまに嫌なことを言い,息子も嫁をかばうばかり.しかし2人にとって何よりもつらかったのは,夫・妻と別居させられていることであった.2人は毎日のように電話をし,手紙を書いてそのつらさを紛らわせていた.
 そんな中マーロートラは近所の喫茶店の主人と知り合いになり,主人の勧めで「バグバン(庭師)」と題する彼の半生記をタイプライターで作り始める.家では息子夫婦にタイプライターがうるさいと怒られ,喫茶店で日がな書いていた.妻との手紙のやり取りが唯一の慰めだったが,ある日メガネが壊れて手紙を読めなかったために,その喫茶店の奥さんに妻からの手紙を読んでもらう.その手紙は,涙なくしては読めないものだった.喫茶店の主人と奥さんはマーロートラを気遣い,いつもあたたかく迎えた.
 そして6ヶ月が過ぎ,今度は別の子供たちの世話になるため移動することになる.しかし2人は結婚生活を始めた街で落ち合い,行くあてのないデートをする.しばらく再会を喜ぶも,これからのことに途方にくれていたとき,たまたま遠くに住んでいた養子のアーロークと再会.その養子は靴磨きだったところをマーロートラ夫妻に取り上げられ,妻と一緒に留学先のロンドンから帰ってきていたのだった.血のつながりのない息子だったが,写真に毎朝手を合わせて両親以上にずっと慕っていた.その夫婦のところに世話になり,久しぶりに幸せな生活を送る2人.
 しかし長居もしておられず,帰途に着く.電車で行くといったマーロートラたちに,アーロークは高級外車をプレゼント.そして懐かしの我が家のところを通りかかったとき,例の喫茶店の主人が小切手を持ってきた.彼が喫茶店にタイプライターと共に置き忘れた半生記を出版社に持っていったら,たちまちベストセラーになっていたという.
 ベストセラー祝賀会では集まった息子たちをさしおいて養子があいさつをし,マーロートラが涙ながらに妻への愛を語る.同席した妻も涙を流しながら聞いていた.子供たちは邪険に扱ったことを詫びるが,マーロートラは耳を貸さず妻と立ち去っていく.→公式ページ
感想:


  • タイトルは「庭師」という意味.種をまいて,一生懸命育てても,それが自分のために実るとは限らないというテーマ.ポスターには「あなたは家族に頼れますか?」と書かれていた.客層もシニア(お年寄り)世代が多かったようだ.インドでも都市部では核家族化が進んでおり,他人事ではないらしい.
  • 入館料はS席100ルピー(250円)。土日は高くなることがわかった.S,A,B席とあり,S席は一番上で以下だんだんスクリーンに近づいていく.客はほとんどS席に座り,日本でS席といわれる真ん中ら辺はガラガラだった.今度はA席にしよう.
  • ストーリー主体の映画で,ダンスも少なめ(主人公夫妻が年配で派手なアクションができないからかも).ただ筋書きの多くがセリフで進行しているので,ヒンディー語がわからないとストレスがたまった.息子たちがショッキングなセリフをいうところとか(ガーンという効果音はあったけれど).
  • ヒーロー役の養子アーローク(サルマン・カーン)が婚約者と踊るシーンがある.デートの待ち合わせにバイクで現れる末っ子.当然ノーヘルの上に口にはバラをくわえている.笑った.
  • 息子夫婦にいじめられる夫妻の描写がいちいちリアル.マーロートラが家長の席に座ろうとすると嫁は「お父さんはこっち」と末席を指示する.朝マーロートラが新聞を読んでいると「夫が読むから」と言って取り上げられる.プージャーが息子の職場に行くと「母さんを家から出すなと言ったろ!」と嫁を怒る息子.息子の誕生日プレゼントを届けるため職場に行ったことがわかると「そうやって私がかまわないのを詰るつもりなのね」と憤る嫁.そのたびにマーロートラやプージャーのアップとガーン!という効果音がしつこいくらいだった.
  • 日本では定年退職前後というと,たいがい夫婦の愛は冷め切っているような気がするが,この物語では終始アツアツカップル.夫が仕事をしていたときは,朝はネクタイをしめ,帰りは時間を見て夫がベルを鳴らす直前に扉を空ける.一緒に暮らしているのにお互いの写真をポートレートに飾り,息子たちの前でもいちゃいちゃし,夜は腕まくらなんかしている.定年を迎える誕生日には妻特製ケーキ.だからこそ離れるのが悲劇になったのだろうが,実際のところ新婚さんでもそこまでするだろうか?
  • 夫婦別々にさせられてからは,妻の手紙を読むたびに涙を禁じえない主人公.手紙の内容が分からなかったにもかかわらず,妻と離れて暮らす私と重なって思わず胸が熱くなった.電話を通して2人が歌を歌いあうシーンもあった.
  • 再会のシーンはヒンディー語が何となく分かった.混雑する駅のホームで涙を流しながら抱き合う二人.妻「皆が見ているわ」夫「かまわない」妻「何言っているの,もう…」
  • 休憩時間を入れて3時間.長い!
  • 後日分かったことだが,マーロートラ役のアミターバ・バッチャンという役者は日本でいうところの田村正和.ペプシコーラや万年筆,果てはトラクターの宣伝にまで登場している.アミターバは日本では「阿弥陀」と音訳されている.アミダババア(※「俺たちひょうきん族」というテレビ番組で明石家さんまが扮していたキャラクター)?
  • さらに,プージャー役のヘーマ・マリーニは幻の子役で何と35年ぶりの映画出演.幻滅を恐れて遠ざかっていたがこのストーリーに惹かれて出演を決意したという.この映画が話題になっている理由のひとつであろう.

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