ヨーガのクラスが終わると,ヨーゲーシュと帰るのが日課になりつつある.ヨーゲーシュは図書館に行って勉強を続け,私は帰宅する.
彼の平日は,8時から11時30分まで授業,昼食をとってあとはずっと図書館におり,夕方のヨーガに出席する.そしてまた図書館へ.専門は教育心理学だが,修士を取ったら教育哲学で博士をとりたいという.読書は好きだが実験ぎらい.
そんな彼は気分転換を求めており,週に一度くらいは一緒にチャイを飲んでおしゃべりする.こちらとしても,インドのいろいろな話を聞けるのが興味深く,楽しみにしている.
インド人にしては珍しくネガティブで,先日「人生の究極の意味とは何か?」なんてことをふってきたので「人の役に立つこと」と答えたら,「それは建前だよ,人生は苦しみさ」と深刻な顔で言ってきた.日本だったら,「彼女にふられたのか?」なんて茶化すところだが,真顔だし,こちらも真面目に答えることにする.「でも,その人生は神様が与えたものだろう?」
私自身,全知全能なる神を信じているわけではない.こういうことを言うのは,彼が敬虔な家に育ったことを知った上での方便的な表現にすぎない.だが,彼には満足のいく答えだったようだ.
それからこの頃よくこぼすのは,インドの環境汚染.「空気も,食べ物も,水も,ここは全部汚染されている…今飲んでいるこのチャイもだよ」とまたネガティブな発言.そこから癌患者が多いという話になったが,それ以上にインドが直面している大問題はエイズ.100万人以上の罹患者がいるという.数年前,海外からの流入を阻止しようと政府は留学生にエイズ検査を義務付けたが,今はやっていない.海外からの流入云々よりも,国内でもう止められないくらい大流行しているからだ.プネーも含めてインドの大都市では売買春が絶えないが,売春婦の8割がたはエイズに感染しているという.そのほか血液感染や母子感染,一般に貧しい人ほど罹りやすい構造になっている.何と不幸なことか.
今日はスラム街に住む人々の話.ヨーゲーシュが育ったところにスラム街があり,友達がいたらしい.多くは建設土木作業に従事しており,日給70ルピー(175円),月給2000ルピー(5,000円)ぐらい.1日中体を酷使して,夜に飲むドブロクワインが何よりの楽しみ.しかしヨーゲーシュの口ぶりでは,彼らの夜の眠りはとても安らかで,多くは自分の生活に満足しているという.
そのあと日本の平均月収はいくらか聞かれて,50,000ルピー(12万5千円)くらいかなと答えたら口をあんぐりしていた.だが入るものも大きければ,出るものも大きいのが日本だ.インドに来た留学生である私は,専らお金を使う方に傾きがちなのに対して,日本に来た留学生が働いて少しでもお金を貯めたくなるのは当然といえよう.でもこんなに物価の差があるのはどうしてなのかまでは,いろいろ考えたがよく分からない.経済学でも勉強しないと.
さらに「日本にいる奥さんとコミュニケーションが少ないから,いろいろ問題は起きないか.自分が思っているようにあちらも思っているとは限らないから」などと心配してくれる.心配の仕方がまたネガティブだが,そんな彼の前でやたらポジティブに振舞う私は,何なんだろう.日本では妻からよくネガティブだと言われたが,相手に合わせてキャラクターを変えるのが私なりのバランスの取り方なのかもしれない.
こんな話ばかりだが,不思議と和やかなムードである.ヨーガのクラスは,3日に1日くらいの割合で何かのお祭でつぶれるのが口惜しい.ヨーゲーシュは「1日でも休むと,調子が悪い」と私以上に不満げ.インドはお祭大国なのであった.
日本はだいぶ寒いそうだがこちらは日中は30度ちょっと,夜も20度前後という暖かさだ.肌寒いこともあるが蚊はいまだにいる.油断して蚊取りリキッドをつけないでおくと襲われる.それでも刺された後の腫れが小さいのは蚊の力が弱まっているせいだろう.
クロスワード
インターナショナル・ブック・サービス
サンスクリット・サーヒティヤ・ラトナーカラ
入ってみてその狭さにびっくり.床は人が一人寝れるぐらいしかなく(本当に店長が昼寝していた),三方を本棚に囲まれている.本棚には本が横に積み重ねられており,しかも奥にもある.はしごで登っていくロフトにも本が積み重ねられていた.
すると店長が倉庫に連れて行ってくれた.店から歩いて5分.ここも本がうずたかく積み上げられている.しかもぜんぶ包まれているので見づらい.店長があれはどうかこれはどうかと,いくつかの本を出してくれたが,ここでの購入はなし.K君は何冊か買っていた.
昨日の夜ぐらいから家の裏でやたらメエメエいうと思ったら,ヒツジの大群が家の裏にたくさん駐留していた.どこからやってきたのだろう.
ヨーガのクラスは,毎日同じことをするのかと思っていたが日によってメニューが変わる.あやしいものも少々.

そのような訳でやっと着くことができたK君と奥さんはまず大学近くのホテル・ピチョーラというところに泊まって家探しを始めた.家探しといえばこの人,ドゥルゲーシュの登場である.K君が来る前から連絡を取り,よいフラットがあるという情報を得た.私も住んでいるアウンドという街は大学から近い上に空気があまり汚れておらず,お店も揃っている.ここをテリトリーにしているドゥルゲーシュなら,私の場合と同じようにすぐにいい物件を見つけてきてくれるだろうと思われた.ドゥルゲーシュは大張り切り.いつにも増してテンションが高くなっていた.
いつもは西門から入るが,北門から入ってみる.後で地図で見たが完全に遠回り.20分くらいかかった.でも大学内にある郵便局が思いのほか近い.日本宛に葉書を出した.