王宮(2)

サユリちゃん 昨日行った「ラージュワダ(王宮)」で文法学のマヘーシュ先生たちと会食。今度は屋外の広い庭でインド料理を食べた。
 マヘーシュさんは32才で、つい昨年博士号をとったばかりの若手文法学者だ。若くしてサンスクリット文法学をマスターし、博士論文ではパーリ文法学を扱った。大学ではパーリ語を教えている。全盲ながら博識で、どんな質問にも満足の行く答えを出してくれる。
 奥さんのラタさんも研究者で、『アマラ・コーシャ』というサンスクリット語辞典の失われた注釈を、チベット語訳から再構築しようという何だかすごいことをやっている。マヘーシュさんが『アマラ・コーシャ』まで覚えているのはどうしてかと思ったら、奥さんの手伝いをしているらしい。
 この夫婦にかかったら、パーリ、サンスクリット、チベット(ついでにヒンディー、マラーティー)とインド学に必要な言語を全部カバーしてしまう。そしてこの夫婦は、何年か前に金沢大学に交換留学で来ていた。日本でどれほど勉強すべきことがあったのかわからないが、日本好きのようだ。
 日本にいる間に奥さんが妊娠し、インドに帰ってきてから産んだ娘さんのサユリちゃんが3才(写真)。インドでも通用する日本風の名前にしたという。お父さんが大好きで、出勤前は嫌がって泣くのでお絵かきをしている間に出かけたり、飴をあげてなだめたりしなければならないそうだ。
 今日はサリーを着たいと言い張って、子供用のサリーを身にまとっている。我々日本人は「かわいい」の連発。食事もそこそこに、となりにある遊び場で滑り台などで遊び始めた。ここのレストランが人気があるのは、子供が遊べる遊具がたくさんあるからで、サユリちゃんもサリー姿で走り回っている。
 サユリちゃんの子育て話から、息子がいいか娘がいいかとか、名前はどういうのがいいかと言った話になり、やがて日本に行ったときの旅行話、インド料理の話などして楽しいひとときを過ごした。
 帰り際サユリちゃんが他の子供と遊具の取り合いで泣き始め、お父さんに抱っこされているうちにお休み。?Tさんが日本から持ってきた盲人用便利グッズを奥さんに説明する。マヘーシュさんは本が読めないため、勉強の大半は録音したカセットテープで行う。今ではICレコーダーという手もあるが、データ管理がたいへんかもしれない。
 明日から家族でサールナート行き。マヘーシュさんは夏休みなので、そこで奥さんの仕事を手伝うという。プネーと比べると暑さが尋常でないエリアに、もっとも過酷な時期に行くのはつらいものがある。
 大学には7月に戻ってくればよいのだが、サユリちゃんの保育園が始まるとかで6月に帰ってくることになっている。それなのに別の大学でアメリカ人相手にパーリ語を教えることになっているそうな。優秀な上に文句も言わないので、引っ張りだこである(というよりも、こき使われているといった方が正しいかもしれない)。
 2月にインドに戻ってから2ヶ月、月曜日から土曜日までほぼ毎朝文法学を習えたことは非常にためになった。6月に戻ってからもまた習えることを楽しみにしている。そして将来にはまた、奥さん共々ぜひ日本に来てもらいたいものである。(写真提供:K氏)

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