映画(8)

平日の昼間から映画を見るのは何となく気が引けるが、休日は映画館が混みあうので仕方がない。映画を見た分は休日に返上するというつもりで映画館へ。映画館に行く日は勉強もやる気が出る。
お目当ての「ハム・トゥム」はまたしても満席。1回目は5月末にデリーで満席。そのときは昼の回、午後の回、夜の回まで全て埋まっていた。2回目はプネーで昼の回。そのときは時間ぎりぎりだったので今日は30分前に行ってみたが、また満席。というわけで席が残っている映画を見ることにした。
ユワユワ(青春)
〈あらすじ〉コルカタの橋の上で銃撃事件が起こった。撃った男、撃たれた男、そして目撃した男。この3人をめぐって物語が始まる。
まず撃った男ララン(写真右)は血が熱く、刑務所帰りだった。怒るとすぐ人を殴るのが悪い癖で、妻を愛しながらもちょっとしたことで暴力を振るう。西ベンガル州の議員にその腕を買われ、影の用心棒として学生運動の鎮圧を頼まれる。
撃たれた男マイケルは学生運動の指導者として人望が厚く、多くの学生を引き連れていた。恋人は気の強いフランス語の先生。好戦的な運動で議員にマークされ、その用心棒であるラランから命を狙われる。
目撃した男アルジュンは、人生楽しければOKというタイプ。ディスコでナンパした女の子と恋に落ちたが、その女の子はすでに婚約者がいた。最後のデートでとうとうフられてしまったところに撃たれたマイケルが飛び込んでくる。
アルジュンは川に落ちたマイケルを助け、それ以来学生運動に参加していく。しまいには政治のことは何にも知らないのに議員に立候補してしまう。一方ラランはマイケルが死ななかったことを知り、脅迫するためアルジュンを誘拐した。しかしラランの一味で仲間割れが起こり、そのすきにアルジュンは命からがら逃げ出す。仲間を殺して後を追うララン。
ラランはアルジュンを再び橋の上で追い詰めるが、そのときマイケルが現れる。車が行き交う命がけの殴り合いで、ラランはマイケルに叩きのめされ、人殺しの罪で再び刑務所送りとなった。
議員選挙は学生運動が奏功してマイケルもアルジュンも当選。黒幕の議員を一瞥して議員席に腰掛けた。
〈感想〉はじめに事件が描かれ、そこに登場する1人1人のストーリーが時間を遡って説明される。一種の謎解きで、それぞれの人物がその事件に至った事情が明らかになっていくのは面白い。特に、悪役であるララン(アビシェーク・バッチャン…アミターブの息子)にも悪に手を染める経緯があって、そこには妻もあり、映画を見て涙を流す姿もあり、でも自分の思いを伝えようとする前に手が出てしまう、そんな人間像が描かれているのが好感を覚えた。
3人の過去の話が終わると場面は再び事件へ。事件の後の展開でも、登場人物の人となりがインプットされていることで感情移入しながら見ることができる。ストーリーに面白い展開がある訳でもなく、また全員で一斉に踊るシーンも一切ないのに見終わったときの充実感があるのはそのためだろう。暴力シーンも、不条理ではないと思うと不思議と嫌悪感がなかった。
俳優がだんだん分かってきたのも楽しみのひとつだ。ジミーさんが出演した映画の主演でもあるララン役のアビシェーク、このところ出演頻度のやたら高いマイケル役のデーヴガン、東アジアでも受けそうな甘いマスクのアルジュン役オベロイ、どれもそれぞれいい味を出している。ベストキャストではないだろうか。一方それぞれの妻・恋人役で出てくる女優はイマイチ。
先日の「メーン・フーン・ナ」でもあったが「クダハフィス(神の守護あれ)」「インシャーッラー(神の意思のままに)」というイスラム教の挨拶。今日は議員さんが使っていた。服装や台詞をよくチェックしておくと、出身や宗教が分かるらしい。そういうものも理解できてくると、インド映画はもっと面白くなるし、現代インドを知る手がかりにもなる。
その辺の道端を歩いている人、小さなお店で暇そうに番をしている人、歩道にしゃがんでだべっている人、どんな人にもこれまで生きてきた長い人生の物語がある。それがあるとき偶然にして出会い、その相互作用でもってまた人生の新しい物語がつむぎだされる。新しい出会いにもっと驚きや喜びを感じられるようになりたい。→公式ページ

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