映画(9)

新しいアパート探しは、希望のエリアが辺鄙なところなのでなかなか見つからない。「他の不動産屋にいくな」と剣幕をはった不動産屋は、明日電話するといってからもう3日経つが音沙汰なし。そこでだめ元でドゥルゲーシュ(今の不動産屋)に頼んでみたところ、なんと彼の親戚がそのエリアの近くに住んでいることがわかってアパートを見つけてくれた。インドでは、期待するところに結果がなく、結果は期待しないところから出てくる(期待の仕方が下手だということだろう)。
しかしドゥルゲーシュ、明日見に行こうと言っておいて翌日になると「今日は忙しいからまた明日。」 面倒なことは全部明日という、典型的なインド人の発想だ。というわけで時間が余ったのを口実に映画を見に行く。これまで4回、満席で見られなかった「ハム・トム(君と僕)」。気合を入れて1時間前に行ったらようやく、チケットが手に入った。
ハムトゥムハム・トム(君と僕)
〈あらすじ〉
タイムズ・オブ・インディア誌に連載され、大ヒットになったマンガ「ハム・トム」。男の子ハムと女の子トムのケンカを面白おかしく描いたマンガである。作者のカランは単行本ヒット記念のインタビューで、記者からトムのモデルになった女性と恋愛について訊かれる。ここから回想シーンが始まる。
9年前、アメリカに留学するカラン(写真左)は、たまたま飛行機の隣の席でリア(写真右)と出会う。カランは女好きのお調子者で、リアはこれが気に入らない。途中立ち寄ったアムステルダムで2人は観光するが、カランがリアにいきなりキスをしたことからリアは激怒。ニューヨークで別れることになった。
それから3ヵ月後、2人はニューヨークの公園でたまたま再会するが、デート中だったカランの相手はリアの高校の友達。リアがカランのことをぶちまけてデートは終わりになる。そしてまた別れる2人。
それから3年後、デリーでマンガを描きながら結婚式場の手伝いをしていたカランは、再び花嫁としてきたリアと出会う。花婿のサミールと共にニューヨークに旅立つ2人を見送るカラン。
そしてまた3年後、パリに住んでいる父親を訪ねたカランは、たまたま電車の中でリアと再会。そこでサミールが事故死していたことを知る。リアはブティックを経営しながら、茫然自失の生活を送っていたが、カランの明るい振る舞いとカランの父親との交流によって次第に癒されていく。
それから1年後、ムンバイを訪れたリアは、カランの友人のミールと会う。リアを不憫に思った母親が、結婚相手を探すようカランに頼んでいたのだった。ところがリアとミールは今ひとつ相性が悪く、そのうちミールはカランのガールフレンドと話があい、とんとん拍子で結婚が決まってしまう。
婚約披露で元ガールフレンドは酔っ払い、ミールがもともとリアと引き合わせようと連れてこられたことを口走ってしまう。このカランの策謀を聞いて激怒するリア。泣きながら出て行こうとする彼女はミールに呼び止められ、カランが彼女を愛していると教えられる。自分もカランを愛し始めていたことに気づいたリアは、自棄酒を飲んでいるカランのところに赴き、海辺で一夜を共にする。
ミールの結婚式の日。気持ちの整理がつかないカランはリアに愛の告白ができず、海辺で共にした一夜のことを詫びてしまった。リアは涙を流して立ち去る。カランは意気地のない自分に嫌気がさし、ふさぎこんでしまう。
そこにパリに住んでいた父親が帰ってくる。妻と長いこと別居生活をしていた父はカランに、愛した人を幸せにしなければいけないことを諭し、カランは一念発起、リアを探す。しかしリアはもう、ムンバイにもパリにも見つからなかった。
こうして回想シーンが終わり、再びインタビューのシーンに戻る。カランは本の中に、自分が愛したリアのことを書いていた。インタビューの後ひとり歩いていると、後ろから声をかけてくる女性がいる。振り返るとそこには、カランの本を持ったリアがいた。
エピローグ。カランとリアは、生まれたばかりの娘を産院で見ている。となりのベッドにきた男の赤ちゃんは娘をジロリ。男と女のケンカはまだまだ続く…。
〈感想〉
 筋書き、カメラワーク共によくできた映画だったと思う。どろどろせず、主人公がやたら偶然に出会うのを除いてはごく自然な展開で、笑いも随所にちりばめられている。主人公が三枚目を演じているのも好感がもてた。随所に挿入される「ハム・トム」のアニメシーンは、ストーリーからあえて外すことで、緊張の場面をほぐしたり、場面の展開をスムーズにしたりする効果があったと思う。
 主人公のカランは好かれようが嫌われようがお構いなく、気に入った女性にはどんどんアプローチをかけていき、リアに「病気だわ」と言われる。日本人ならば傷つくことを恐れて、当たり障りのないところからゆっくりゆっくり近づこうとするだろう。そして多くは相手の無関心のうちに熱も冷める。嫌われるとしても、無関心よりは関心を引く方がよいこと、また心を閉ざしている他人に気づいてもらうには思い切ったことも時には必要ということを感じた。「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」と言ったのはマザーテレサだったろうか。
 バイオレンスものが多いインド映画において、ラブコメは人気が高い。カップルはもちろんのこと、親子連れ、年配の方など、ターゲットが広い。しかもアムステルダム、ニューヨーク、パリと外国の風景もお腹いっぱい満喫できるとあっては満席が続いているのも頷ける。昨年も人気を集めてロングランになったのは軒並みノンバイオレンスものばかりだ。もっと増えてもいいのではないだろうか。
 予告編で見た「キョーン・ホー・ガヤー・ナ」ヴィヴェーク・オベロイとアイシュワリヤ・ライ、そしてアミターブ・バッチャンと、夢の競演だ。早く見たい。
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