化石

アジア映画祭第2回アジア映画祭がプネーのナショナル・フィルム・アーカイブと映画テレビ研究所で開催された。毎日夕方5時から7日間、マラーティー映画4本、中国4、ヒンディー3、イラン3、カンナダ、ベンガル、アフガニスタン、ブータン、韓国、トルコ、日本各1と21タイトルを上映。500円払えば見放題ということもあるが、プネー人は映画好きが多いようでどの映画も立ち見が出る満席である。2日間通って5本の映画を見た。
Saatchya Aat Gharat(7時まで家に帰ること)
2004年、S.スルカル監督。主演:カルティカ・ラネー、マーナウ・カウルほか。プネーを舞台にしたマラーティー映画。ビジネススクールに通う8人の若者は時代の最先端。親の言うことも聞かず自由に恋愛を楽しみ、夜遅くまで遊んでいた。ところがその1人ナンディニーが強姦にあってから状況が変わり始める。学校は彼女が夜間外出禁止の規則を破ったとして退学を決め、頼りにしていた恋人は彼女を避けてしまう。時代の最先端を標榜しながらも結局、男は処女を結婚相手に求め、女は親の決めた枠組みでしかものを考えられないのだった。彼らに幸せはやってくるのか。
保守的な街プネーならではの映画と言えた。『ラーマーヤナ』でラーマの妻シーターが火に飛び込んで貞操を証明する有名な話について、おばあさんが「ラーマは神様だから、女性なんかに関心はないのよ」と言っていたのが印象的。貧富の差や結婚観など考えさせられるところあり、また笑いありで充実した映画だった。◎
萠的大脚(何て大きい足)
2004年、ヤン・ヤーチョウ監督。主演:ニー・ピン、ユアン・チュアン。ジャン先生は山奥の田舎で教師をしている大足の女性。中国では古来女性は小足がよいとされており、彼女は大足で性格もがさつなことを気にしていた。一方、ボランティアでやってきたシア先生は北京出身のファッショナブルな格好で、はじめは馴染めなかったが子どもたちとともに次第に溶け込んでいく。しかしやがてシア先生は夫の都合で北京に帰らなければならなくなってしまった。そこでジャン先生と子どもたちは北京までついてきて、大都市を見学。ジャン先生は故郷もこれぐらい立派になるように頑張ろうと子どもたちを励まし、田舎に帰って街づくりに精を出した矢先、列車との衝突事故で死んでしまう。「子どもたちが私の夢の全て」と言い残したジャン先生を看取ったシア先生は、再び田舎に戻ることを決意する。
舞台となった雨も滅多に降らない中国の片田舎の様子が面白い。場面がころころ変わる手法は、目が疲れた。△
裸の島
1962年、新藤兼人監督。主演:音羽信子、殿山泰司。尾道近くの離れ小島に暮らす夫婦と2人の子ども。その日課は、本島から毎日何度も水を船で運んできて畑にかけるという、実にたいへんなものだった。子どもも甲斐甲斐しく働き、そのかたわら長男は毎日本島の学校に通っている。しかし貧乏な中にもたまには秋のお祭に行ってチャンバラ道具を買ってもらったり、鯛を釣ってそれを売ったお金でロープウェイに乗ったりとしていた。そんなある日、長男が急な病気で死んでしまう。父親が医者を探しに本島まで急いだが、間に合わなかった。クラスメートたちとささやかな葬式をして島の頂上に棺を埋める。――また普段の生活に戻るが、母親は突然運んできた水を投げ出し、突っ伏して泣き始める。それを一瞥しただけで仕事に戻る父親。母親もまた、仕事を再開するのだった。○
40年以上前の白黒映画。台詞は父親が次男を抱き上げるとき「よいしょ」というところだけ。あとは90分間、家族は黙々と仕事にいそしむ。ほとんどの場面はヨロヨロと水桶を運んでいるところばかり。そのせいか一生懸命生きる姿がひしひしと伝わってきた。○








環境にやさしいガネーシュ
(The Times of India 9/15)
まもなく始まるガナパティ祭に向けて環境を保護する動きが進んでいる。これまで各家庭平均3キロのガネーシュ像を、祭の最後にムター川に流していたが、これによって3トンの焼石膏と化学塗料による環境破壊が懸念されていた。そこでプネー市役所は専用の水槽を設置、そこに入れるよう呼びかけている。また、陶器製・天然色素による着色や毎年使える金属製の使用、リサイクルの推進も薦められている。

和イ尓在一起(北京バイオリン)
2003年、チェン・カイグー監督。主演:リウ・ペイチー、チェン・ホン。中国の田舎で育ったシャオチュンは13才にしてバイオリンの名手の名を轟かせていた。料理人の父親チュンは彼の未来のために、北京に連れて行って専門的な教育を受けさせる。こうして2人の北京生活が始まるが、子どものためによかれと思って必死に働き、いい先生を探し、教えてくれるようお願いしてくる父親に対し、シャオチュンはすっかり気後れしてしまいバイオリンを売り払って近所の女性にプレゼントを買ったりしてしまう。そのうちシャオチュンは衝撃の事実を知る。それは、シャオチュンが駅にいた捨て子で、これを拾い上げたチュンが、彼が劣等感を抱かないようにバイオリンを始めさせたということだった。シャオチュンは気を取り直して国際コンクールの練習に取り組むが、チュンは彼の海外留学費用を捻出するため、コンクールの当日田舎に帰ってしまう。シャオチュンはコンクールに出ずに北京駅に駆けつけ、育ての親の前で涙ながらにチャイコフスキーを弾き、しっかりと抱き合うのだった。
音楽の効果が抜群.主人公の子役はどう見ても本物のバイオリン弾きだ。中国映画はその道のスペシャリストが主役をしていたりすることがあるので侮れない。ただ、父親が息子の成功を祈りながら「聴きに行ったらきっと失神してしまうから」という理由でコンクールを見ずに田舎に帰ろうとする筋書きはちょっと理解できない。せめて聴いてから帰れよ(それだと筋書きが成り立たないが)。○
Not Only Mrs Raut(ミセス・ラウトだけでなく)
2004年、S.アヒレー監督。主演:ヴィクラム・ゴーカレー、モーハン・ジョシ。今年のベスト・マラーティー映画に選ばれた作品だそうで、監督があいさつしていた。海岸でみずぼらしい姿をした女性が男性を刺し殺し、ナイフをもって自首してくる。弁護士が面会に行くが彼女は一切しゃべろうとしない。やがて明らかになる彼女の過去。それは夫を失い、不幸に襲われ続けた続けた半生だった。
男性社会でも流されずに自分を信じて戦う強い女性の姿を描く。芸術映画なのかもしれないが、意味のない風景シーンが入ったりして展開が冗長だった。△

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