日本に荷物を送る








一面を見えるように布で梱包した書籍小包。「Registered Bookpost by Seamail」の下に宛名を書く

完全帰国まであと1ヶ月近くとなり、そろそろ荷物を日本に送ってみることにした。今まで手紙しか送ったことがなかったので、ぎりぎりになって慌てることがないよう、やり方を覚えておこうというわけだ。まずは近所の電気屋とペンキ屋から段ボール箱を仕入れてきた。大きいもので30ルピー(75円)、小さいもので10ルピー(25円)。ガムテープ(75円)で念入りに補強して、小さい方の箱2つに本をつめこんだ。小さい箱とはいえ、相当の重さである。郵便局では送る前に中を見せなければならないので封はしない。
以前、中央郵便局で相談したらイェルワダの郵便局でも取り扱っているという。荷物が重いのでバスで行くことができず、リキシャーを家の前まで呼んで来て運ぶことにした。家の近くはリキシャーが走っておらず、近くまで歩いていったがたまに来るリキシャーはことごとくオバちゃんたちに先を越されて、大通りまで自転車で呼びに行こうかと思い引き返したところで、下の階に住む奥さんがバイクで呼んで来てくれた。村のご近所さんはありがたい。
イェルワダの郵便局までは5キロ。中央郵便局と比べるとさほど並んでいない。これで済むんだったらどんなによかったことだろう。箱の中身を見た局員は、「ここでは扱えない。中央郵便局に行け。」その理由は、船便は布で包まなければならないことが1つ、もう1つは書籍郵便(Bookpost)という制度があり、格安で送ることができる代わりに扱っているのは市内でただひとつ、中央郵便局になるからだった。
中央郵便局まで再び5キロ。ダンボール箱を見ると、リキシャーを降りる前から男が駆け寄ってきた。これは郵便局の前で仕事をしている荷造り屋である。布で包む仕事のほか、たらい回しにしたがる郵便局員との交渉もやってくれる。民間の仕事であるため、値段はまちまちでだいたい外国人はインド人価格の2倍ぐらいふっかけられていることが多い。
荷造り屋はすぐに荷物を局内に運び、重さを量った。書籍郵便は荷物1つが5キロまでと定められており、私の荷物は5キロずつ、全部で6つになった。外に再び運び出して、必要な布を外に買いに行ってから2人で荷造りを始める。書籍郵便の場合は1面を外から見えるようにしておかなければならず、そこは糸で網の目にする。そんな仕事を素人が自力でするのは無理だ。荷造り屋はどうしても必要なのである。
たいていトラブルになるのか、荷造り屋は仕事を始める前に値段を言ってきた。1つ80ルピー(200円)。6つで480ルピー(1200円)だが、450ルピー(1125円)にまけさせた。これでもかなりふっかけられていたことが分かったのは後の話である。仕事の最中にお互いの家族の話など。荷造り屋の向かいで赤ん坊にビスケットを食べさせているのが、彼の奥さんだった。赤ん坊は5ヶ月、名前はシャーム・サイといい、その上にプリヤンカとメーガという2人の娘がいる。外国人から相当ぼったくれる仕事だと思ったが、かなり貧しそうだ。
「俺は息子より娘の方がいい。家に帰ったら、娘は水をコップに入れてもってきてくれるだろう。でも息子は絶対そんなことしない。」日本では、父親が仕事から帰ったときお茶を出してくれる娘なんてもういないかもしれない。
さて荷造りが終わると、窓口に並んで発送の手続き。荷造り屋は2手に分かれて別々のカウンターに並ばせる。私が並んだ方のカウンターはおじさんが1人でさんざん粘った挙句、昼食のため私の前で閉鎖となった。2手に分かれて並んでおいたため、また並び直すことはなかったが、このあたりの手際のよさもさすが荷造り屋だ。これを全部ひとりでやらなければならないことを考えれば、多少高いお金を払っても荷造り屋に任せる方がいいと感じた。
6つの荷物のうち1つは手違いで5キロを超え、荷造りをし直してまた並ぶというハプニングもあったが無事発送完了。日本に送るのに1つ147ルピー(370円)と、確かに格安だ。以前、空輸でどれぐらいかかるか調べたところ1キロ550ルピー(1375円)だと言われたから、18分の1にあたる。荷造り代を入れても、まだ12分の1。
全部終わった頃には、家を出てから3時間半が経過していた。まる1日仕事である。ほっとして郵便局を出ると、別の荷造り屋が近づいてきた。「いくらだった?
80ルピー?! 俺だったら40か50ルピーでやるよ。」後の祭りである。「今回はもう終わったんだから、次回頼むよ」というと、「まだ他に荷物があるだろう。俺にやらせてくれ。あいつら、またぼったくるぞ」としつこい。
実は荷造り屋がバイクで家まで来てくれるというので、明日頼んだところだった。そのことを別の荷造り屋がなぜか知っている。「ワドガオンシェリだろ、俺が行くからあいつらは断れ。俺なら40か50ルピーで……」これまた小さな赤ちゃんをだっこして、涙目で訴えている。「それももう決まったことだから。でもまた来たときに頼むよ。」
郵便局の外の道までついてきたその男を何とかふりはらって1人になったとき、疲れがどっと出た。中央郵便局は手紙ひとつ出すだけでもいつも疲れる。途中ビールを飲んで、家に帰って寝た。今日はそれだけ。家には、この2倍以上の本が残っている。

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