『レトリック入門―修辞と論証』

古代ギリシア以降,切り離されていたレトリックの2つの側面〜修辞と論証〜を認識論から組み立てなおし,古今東西の用例を加えながら分かりやすく説いた書.
柱となるのが直接的類似性・プロトタイプによる提喩(シネクドキ),結合性・クローズアップによる換喩(メトニミー),そしてその両者をまたぐ間接的類似性による隠喩(メタファー)の3つ.それぞれの違いを詳しく論じながら,これが修辞法でも議論法でも大きな役割を果たしていることを示す.
論理的思考がもてはやされる現代だが,多くの人に説得力をもち,共感を呼ぶのは必ずしも論理的に正しいものとは限らない.言葉自体の問題ではなくて,その背後に横たわる人間の認識パターンがものをいうからだ.誰しもネットで情報発信できる今,2000年以上の歴史を経て,一時廃れていたレトリックの重要性が高まっている.
アリストテレスからキケロ,クインティリアヌス,さらにはペレルマン,トゥールミンに至るレトリックの歴史が平易に解説されていて分かりやすい.また豊富な実例・引用は,それを読んでいるだけでも面白い.

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