『初恋温泉』

すれちがい続ける男と女が、温泉という異空間で何を見出すのか。
突如妻が離婚を申し出た夫婦―熱海、仲のよいおしゃべり夫婦―青森、不倫―京都、夫が仕事一辺倒の夫婦―那須塩原、高校生カップル―黒川。温泉には多少なりとも胸がきゅんとするような思い出があり、それぞれのシチュエーションについつい引き込まれてしまう。
「熱い湯に浸かっていると、とても贅沢な気持ちになれる。どんなことがあったとしても、まるでその日一日を祝福されたような気持ちになる。」……同感同感。
お話が肝心なところでぷっつりと終わってしまうのは作者の故意なのだろうか。ほとんどの話に、結末は用意されていない。あとは読者の想像に任せて、余韻を楽しむように仕向けているのかもしれないが、わくわくしながらページをめくると三行で終わっていたりしてフラストレーションがたまった。
あと男と女の口調がいつも一辺倒なのと、男が部屋に入ると決まってタバコを吸うのが陳腐。

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