『お坊さんだって悩んでる』

刊『寺門興隆』の人気連載「そもさん 玄侑和尚の説教部屋」を加筆修正したもの。
形骸化する葬祭、葬儀社の台頭、檀家離れ、お布施の使い道、オウム真理教やイラク戦争などの社会問題への対応、私生活との両立、後継者問題など、住職なら誰しも悩んでいる項目に分かりやすく答えていく。
といっても、これは絶対ダメというのは「お布施の値段を決める」「お寺に定休日をもうける」ぐらいで、両論併記にして後は自分で考えるよう促している。玉虫色の答えに納得できない人もいるだろうが、実際白黒つけがたい問題が多いのだから仕方ない。
お寺を継ぎたくないという息子に悩む住職には自分が仏教に惚れ込んでいるかが問題だと根源となる前提に切り込んだり、お葬式は節目を作り心をきれいにするための儀式としお守りやお札は無我になるための祈りをこめた物とするなどオカルトでない説明をしたりするなど、現実的かつ鋭い意見があり、とてもためになった。
今のお寺が抱える問題には、仏教そのものだけでなく、儒教・道教を含む中国思想から、カウンセリングに役立つ臨床心理学、社会学、日本の民俗学まで多角的に取り組んでいくことが大切なのだと思った。そして人と対話を重ねていくことも。

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