学習会

曹洞宗の全寺院に配布される月刊誌『曹洞宗報』2月号に、興味深い記事があった。第一生命経済研究所と曹洞宗の関係者が「学習会」を開いたというのである。
事の発端は昨年夏の日経新聞記事「いまどきの逝き方」。小谷みどり・第一生命経済研究所主任研究員のコメントとして「通夜から始まり葬儀・告別式、火葬、納骨という一連の流れはもともと葬儀業者が考え出したもの。葬式に決まった型はない。」と掲載されたことによる。
これに曹洞宗の寺院住職が異議を唱え、宗務庁が調査の上、顧問弁護士を通じて新聞社や研究所に対し抗議したという。実際このコメントは小谷氏の発言を記者が取り違えたものらしかったが、「歴史的事実などについて正しい情報を共有する必要がある」ということから「学習会」が開かれることになった。
「学習会」の内容は今後の『曹洞宗報』で報告されるということだが、『行事規範』などで全国共通の葬儀法を作り上げ、「威儀即仏法、作法是宗旨」の教えによって葬儀の型を追究してきた曹洞宗の立場を説明するものと思われる。
気になったのが第一生命が曹洞宗僧侶の共済保険を長年担当してきた会社であるとわざわざ説明されていることだ。曹洞宗だけに該当する記事ではないのに抗議しているのは、「第一生命にとって曹洞宗はお得意様なのに裏切ったのはけしからん!」と読める。
事実と異なるならば、出入り業者であろうがなかろうが関係ないはずだが、出入り業者だと明記し、しかも顧問弁護士まで出てくるとは、制裁とまではいかなくともまるで圧力をかけているようでちょっと頂けない。提灯記事だったら事実と異なっていてもよいのか。
改めて小谷氏の著書『お葬式のお値段』を読み返してみたが、確かに「世にも不思議なお葬式」とか「ますます形骸化するお葬式」など葬儀についてネガティブな表現が見られる。
しかしこれは高騰する葬儀費用や義理の参列者の増加などに見られる(主に都市部の)現代人の意識を代弁したもので小谷氏の独断ではない。実際、こうしたネガティブな表現についてそう思うかそう思わないかをアンケートすれば、そう思うと答える人はかなりの数に上るだろう。
さらにその数は年毎に増えているというのが、私の実感だ。そしてその一因として、葬儀社任せで読経のBGM係になってしまった僧侶の怠慢があるのも否定できない。今回の「学習会」が第一生命や新聞社への批判だけでなく、そうした自己反省の場にもなることを望む。
それにしても今回の宗門の対応は大人気ない気がするのだが、どうだろうか? 新聞や細木数子なんかを信用して、住職の言うことに聞く耳を持たなくなった檀家さんが多いのは確かだが、エネルギーを費やす先がちょっとずれているように思うのだ。
(こんなことを表立って書くと、顧問弁護士を通じて厳重に注意されるかもしれない。ナムナム……)

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