『反社会学講座』

『つっこみ力』のマッツァリーノ氏による渾身の秀作が文庫版に。社会学を、個人的な偏見を都合のよい統計で理論化し、ありもしないものに警鐘を鳴らして食べていく「マッチポンプ」と茶化し、その虚構を検証する。
・凶悪少年犯罪が近年増えたというのは捏造
・パラサイトシングルは公平な社会に役立つ
・フリーターが日本経済を救う
・国の「ふれあい」施策は効果なし
・日本人の若者は欧米諸国よりよっぽど自立している
・読書をしても成績がよくなるわけではない
・夏だけ根室に首都移転すれば環境効果あり
・国の少子化対策は効果がないが、やらないと困る人がいる
・65歳で1億円の資産がある人には年金を辞退させよ
社会学者が言い出したのかどうか分からないが、もう十分に一般化している世間の通説がバッタバッタと切り倒されていくのは痛快。ですます調の文体も楽しい。
「ちょっと努力してタバコをやめて健康になろうとか、ちょっと努力してブサイクな女房と子供を作って少子化を防ごうとか、サラリーマンのみなさんがちょっと努力して夏場に背広を脱ぎ、地球温暖化とエネルギー資源の無駄遣いを防ごうだとか、思うのだけれど、実行できない。→落ち込む。→相田みつをの本を読む。→癒される。→その間にも地球環境や社会情勢は、刻一刻と悪化する……と、まあ、こうした負の連鎖反応により、世の中が悪くなるのです。」
「社会学者と心理学者がタッグを組めば、統計操作と深層心理を駆使して、どんな理論も思いのままに正当化できます。」
「仕事と家庭の両立なんてご立派なことをいいますが、実際には―人並み程度に仕事ができて、まずいけれど食えないことはない料理を作れて、洗濯機と掃除機の使い方は知ってます―なんて人がほとんどです。なんでもそこそこ、器用貧乏ってやつです。」
至言名言盛りだくさん。クスクス笑いながら読んだ。

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