『大聖堂』

この小説をもとにしたドイツのボードゲームが面白かったので読んでみた。
原題で「大地の柱」つまり大聖堂を自分の手で建てたいと夢見る石工職人の物語。といってもあまり興味をもたなかったが、まず面白かったのがキリスト教界の動向である。
主役は石工職人だが、大聖堂を普請することになる修道院長も主役級で、その生い立ちから詳しく述べられている。その中で12世紀のキリスト教界がどんな様子だったかが分かる。
修道院長と司教の関係、修道士の生活ぶり、聖書の引用や解釈、そして世間と教会のつながりの強さ。仏教や日本のお寺と比べながら読み進めると意外な共通があったり、微妙な違いがあったりして面白い。
例えば修道士の鯨飲馬食は忌避されるが、ビールを水のように飲んだり、寒い日には熱いぶどう酒を飲んだりする。仏教だったら酒自体ご法度だからなぁ。
そんな教会物語だけでなく、涙なくしては読めない石工たちの放浪譚あり、ハラハラしながら一気に読んでしまう戦争の顛末あり、官能小説ばりの濡れ場ありと満載。まるで3つか4つの小説を一度に読み進めているようなボリュームである。
上巻はいいところで終わる。上巻を読み終わったら、中巻・下巻はもう一気。




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