『 「言語技術」が日本のサッカーを変える』

日本サッカーがヨーロッパの強豪と比べて足りないものは自己決定力・論理力であると分析し、指導者ライセンス講習のディベートや、JFAアカデミーの言語技術指導を紹介する。
「なぜそんなパスを出したのか?」と監督が聞くと日本人の子どもたちは黙って監督の目を見ることが多い。これが筆者の留学先のドイツでは「だってペーターは足が速いんだから、そこに走るべきだから」と即座に答えが返ってきたという。
この差が、刻々と局面が変化していく中で究極の判断を求められるサッカーでは決定的になる。ひとつの答えしか許されず、答えが合っていたかに重点が置かれる日本の教育システム、答えはひとつとは限らないこと、失敗を重ねて経験を積むことを、言語技術の教育を通して子どもたちに身につけさせようとしている。
言語技術とは論理に留まらない。非論理的であっても、言葉を発する人の内面から出てくる自信や信念や経験に裏づけされていれば説得力がある。日本は伝統的に大事にしてきた以心伝心を捨てるのではなく、それに論理力を加えて飛躍できるのだ。
6才以下のおにごっこの反省、サッカーが好きな理由の議論、イメージトレーニング、8才以下のわざと察しない問答、行動の理由の説明、視点を変えること、10才以下の問答ゲーム、絵の分析、12才以上の主語の認識、理由や視点を皆で考える、など年齢に応じた言語技術の指導も具体的に説明。
サッカーに限らず、多様な価値観が並存する時代を生きていく子どもたち、私たちも学ばなければならないことである。
また日本のサッカーが弱かった時代の背景や歴代外国人コーチなど、ちょっとしたサッカー史になっていて内幕も楽しく読める。

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