『憑神』

幕末の江戸、文武に秀でながら婿入り先を離縁され、実家でくすぶる別所彦四郎は、つい足を滑らせて見つけた川原の祠に神頼みをする。ところが「三巡稲荷」と呼ばれるその祠から現れたのは、貧乏神、疫病神、死神であった!
映画公開で気になっていた作品。主人公の、幕末においても仁や忠を忘れない志の高さと、ときどき垣間見せる人間の弱さ、そして妻子への愛情が胸を打つ。大商人に扮した貧乏神、相撲取りに扮した疫病神、女の子に扮した死神の、神様らしくない個性豊かさもおかしい。
主人公はあくまでちっぽけな人間であることによってしまいには神を凌駕する。
「限りある命が虚しいのではない。限りある命ゆえに輝かしいのだ。」
時代小説はほとんど読まないが幕末の風雲急と江戸の生活がしっかりした時代考証に基づいて生き生きと描かれており、最後まで読みきった。

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