『うまい!日本語を書く12の技術』

レトリック学の第一人者によるきわめて実用的な文章読本。名文よりも分かりやすい文に焦点を定めて注意点を列挙する。大学で翻訳の授業をしているうちに、学生の日本語力の低下を感じたのが起稿の動機だという。
1.短い文を書こう
2.長い語群は前に出そう
3.修飾語と被修飾語は近づけよう
4.係り受けの照応に注意しよう
5.読点は打たないように(1,3を徹底するということ)
6.段落を大切にしよう
7.主張には必ず論拠を示そう
8.具体例や数字を挙げよう
9.予告・まとめ・箇条書きなどで話の流れをはっきりさせよう
10.文末を工夫しよう(「である」などを繰り返さない)
11.平仮名を多くしよう(漢字が重なる場合開いてもよい)
12.文体を統一しよう
まず日本語の特性に関する基本的な注意点(1〜5)を押さえた上で、レトリックの配置(6,7)と修辞(8〜12)の順番で挙げている。いずれも言われてみれば当然のことだし、どこかで習ったことがあるようなことばかりだが、身についているか確認してみるのがよい。
そして著者は「名文を読め」ではなく「いい文章を暗記せよ」と説く。定型表現をたくさん覚えることで文章が軟らかくなるという。具体的には森鴎外と谷崎潤一郎を勧める。暗記するぐらいでないと、自分で使いこなせないのだ。
一箇所、「逃げ場がないならば、いじめは陰惨化する」という主張から学校現場に逃げ場を作るにはどうしたらよいか考える渡辺昇一の例を取り上げ、「演繹法と帰納法を実にうまく使い分けている」と評価しているが、演繹的にこのつながりはおかしい。
「逃げ場がないならば、いじめは陰惨化する」の対偶は「いじめが陰惨化しないならば、逃げ場があったということだ」であり、「逃げ場があるならば、いじめは陰惨化しない」とまでいうことはできない(帰納的にはあってもよいが)。したがって、逃げ場を作ってもいじめが陰惨化する場合(執拗ないじめっ子がいるとか)も考慮しなければならない。

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