『情緒から論理へ』

日本人の論理の欠如と情緒の重視は、マイナス面を多くもたらしてきた。
・秋葉原無差別殺傷事件の原因を派遣労働にクローズアップするあまり、殺人犯のヒーロー化を招いている
・わずか0.1%の問題教師のために全員に免許更新制を導入するのは、学校の人手不足を助長し、税金の無駄になる
・高速道路バイク二人乗りを禁止したため、危険な交差点が多い下道を走らなければならなくなった
・船に乗る人のライフジャケット義務化は、かえって海上の初歩的な判断や行動をおろそかにさせる
・コンビニで「袋を分けますか」といちいち聞くのは、文句を言うほんの一部の客のために資源の無駄遣いをしている
・「昔はよかった」「今の世の中はおかしくなった」という事実錯誤(殺人件数、幼児死亡率、衛生事情、身分制度などは今のほうがはるかによい)のノスタルジーでは、現在の問題を克服して明るい未来を築けない
・第二次大戦中の無謀な作戦(ミッドウェイ海戦、インパール作戦、ガダルカナル作戦、バシー海峡の被害、特攻隊)は多くの命を奪った
筆者が説く論理とは、屁理屈や詭弁ではなくまず「大局観」である。自分以外の複数の視点を持てば、よりよい解決ができる。つぎに「正確なデータ」。科学的なデータを重視し、先入観を捨てて臨まなければならない。そして「言葉で伝える」ということ。子供を力で抑え込もうとせず、納得するまで対話し、何がよくて何が悪いのかを言語によって意識化させる。そして表現には勇気も必要である。クレームがついたからといってあっさり引っ込めずに、ディスカッションをしていったほうがよい。
帯にある「藤原正彦氏の『国家の品格』に意義アリ!」というのは、「論理」の定義の問題(特に普遍性を含めるか否か)なので、大きな見解の違いではなさそうだ。
子供が悪さをしたとき、怒鳴ったり引っぱたいたりする前に、よく言って聞かせることが大事なのだろうと思った。インタビュー方式になっているのは違和感があったが(自問自答?)、具体例が豊富で読み応えあり。

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