人権擁護委員

暮れに市役所の方がいらっしゃって、人権擁護委員への就任をお願いされた。去年は市の仏教会の事務局長として、火葬場の件で何度も市役所に足を運んだので、顔を覚えられてしまったらしい。
Wikipediaによると、人権擁護委員とは「当該市町村の住民で、人格識見高く、広く社会の実情に通じ、人権擁護について理解のある社会事業家、教育者、報道新聞の業務に携わる者等及び弁護士会その他婦人、労働者、青年等の団体であって直接間接に人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員」という。でも、そういった資質よりも、ボランティアということと、人権相談などの任務が平日の昼間しかないことから、なり手がなかなか見つからないらしい。結局公務員を定年で退職した人になりやすいという。
曹洞宗では町田事件※以来、さまざまな人権問題に取り組み、研修会では必ず人権学習のコマを設けているため、私もそれなりの勉強をしてきたが、お寺はいまだに院号だとか信士号だとか言って戒名(による家柄の)差別をしているので、堂々と返事することができなかった。
「戒名は世間の格であって成仏に早い遅いはない」というならば、どうしてそんな世間の格にお寺が関わるのかという問題が起こる。「お寺に貢献があった人に贈る感謝状です」というならば、よい戒名を頂いた人は善行を積んでいるわけだから、成仏が早いのではないかとも思う。では皆同じく院号にといえば、要らないという人もいる。戒名の種類と寺費(毎年お寺に納めるお金)が連動しているので、全員一律にすれば、安かった人ほど上がるので文句が出る。何年かに一度の改訂で、少しずつならしていくのが精一杯である。
それはさておき、理念よりも現実である。物理的に住職&子育てと両立するならば引き受けようと思った。前任者はちょうどお寺の総代さんだったので、任務内容をお聞きしてみた。市役所や法務局の窓口での人権相談は、実際は嫁姑の愚痴を聞くぐらいのもので、込み入ってきたら適切なところを紹介するだけ。それ以外に、自主的な活動として、学校でのいじめ問題対策として、啓発活動をするという。
「忙しくないとは言えませんが、住職なら十分できると思います。」その総代さんの言葉に勇気付けられ、引き受けることにした。年明けに市役所にいって引き受ける旨を伝えると、職員はたいへんほっとしている様子。あと2人、新任者が見つからなくて困っているのだという。
今、履歴書を作っているところ。3月の市議会で承認されれば、4月から研修などを経て任務が始まる。1期3年。
※町田事件:1979年、アメリカで開催された第3回世界宗教者平和会議に全日本仏教会理事長として出席した町田宗夫・元曹洞宗宗務総長が、再三にわたり「日本に部落問題はない」「100年ほど前にあったことで今はない」「部落問題を理由にしてさわぐ一部の人がいるだけ」などの差別発言を繰り返し、報告書から部落問題についての言及部分を削除させてしまった差別事件。

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