●●●山形弁研究ノート●●●ー |
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| 1.序 2.「イデエ」と「ヤメル」 3.擬態語の世界 4.「ワガンネ」と「シャネ」 5.「ニェ」と「クハ」 6.「ウダデ」と「ダッテ」 |
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左図はソシュールが構造言語学において語が否定的な組織で規定されていることを示すために用いたものです。言語学ではあまりにも有名なので説明の必要がないかもしれませんが、一応説明します。
我々は現象世界を言葉によって理解している訳ですが、その言葉は(特に西洋において)長い間、現象世界と一対一で対応していると考えられてきました。「狼」という語は狼に、「犬」という語は犬に対して用いられるという訳です。
しかし、ソシュールはこれに対し、言葉と対象は決して一対一で対応しているものではなく、構造の中で否定的に規定された恣意的な関係をもつとしました。犬に似た仲間の中で、狼でも山犬でも野犬でもないものが「犬」という語の対象になる訳です。
この考え方を決定的にするために、「狼」という語がない場合(=言語)が想定されます。「狼」という語がない言語では、他の言語で「狼」と呼んでいるものを、「山犬」と呼ぶことがわかりました。犬に似た仲間を表わす語が少なくても、それらの語で十分にカヴァーしきれる訳です。
ちなみにこの思想とディグナーガという6Cのインドの仏教徒の「アポーハ(他からの排除)」論に類似点を見ることができますが、それは措いておきましょう。
このように、言葉が変われば同じ世界であっても異なった区別の仕方になる訳です。そのことが日本国内においても、標準語と方言との間に認められることを言いたくてこのことを最初に述べました。
標準語と方言でさえ、同じ対象を異なった仕方で区切って理解している。
ということです。
標準語では「痛い」というところを、山形では「イデエ」、「ヤメル」と区別します。もっとも、「ヤメル」は標準語の「苦しい」というところにも関わりますが、「苦しい」という意味ではさらに「セヅネ(切ない)」があり、複雑になります。
「イデエ」は表面的な痛み、「ヤメル」は内面的な痛みという区別があるようです。
「イッテー(イデエの強調形)!!」・・・例えば足を踏まれたとき
「肩ヤメル」
「イデエ」はひりひりした痛みや一時的な痛みに用いられます。
「足すりむいで、イデエ」
一方、「ヤメル」はきりきりした痛みや存続的な痛みに用いられる状態動詞です。
「腹ヤメル」
従って、同じ箇所に用いられても異なった痛みを表わすことができます。
「足イデエ」(怪我をして痛い)
「足ヤメル」(痛風などで痛い)
痛みの質からも、「ヤメル」の方がつらいことが分かります。特に年を取るとあちこちが「ヤメル」ため、年寄りは大変です。「苦しい」という意味が混じるのも分かるかと思います。
また、精神的なつらさに用いることが出来るのは「ヤメル」だけです。
「腹ヤメする」(心配で腹が痛いほどだ)
「セヅネ」は「ヤメル」が更に持続した場合や、強まった場合に用いられます。精神的になつらさにも用いることができます。しかし、「ヤメル」とは異なり部位を指定できません。「セヅネ」は「ヤメル」などが体中に広がって耐えられなくなった状態を表わし、体の一部におさまりきらないからであると考えられます。もちろん、「苦しい」という意味を共有していることから「ヤメル」と意味的に相当重なることがありますが、「イデエ」とは距離があるようです。
「イデエ」と「ヤメル」のどちらが入るでしょうか。
(1)「サッキ背中ケラッチェ(蹴られて)―――!」
(2)「トショット(年取ると)膝―――」
(3)「スッコロンデ―――」
犬の鳴き声が世界各国の言葉で違って表現されるように、方言には標準語にない擬態語が数多く見られます。聴覚が違うのか、それとも心理的な状況が違うのか、文化が違うのか、考えてみると面白いものです。
山形弁になじみのない方や山形に住んでいても聞いたことのない人にも雰囲気が伝わり、なんとなく納得できるというのも楽しいです。
| <天気を表現する擬態語> | |
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もさもさ |
雪が大量に降ってくる様子。雪の結晶が連鎖して相当大きな状態で降ってくることがあります。短時間に積もった雪を「どか雪」という。 「いやあ、雪もさもさど降ってきたなー」 |
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ぼだぼだ |
気温が少し温かくて水気の多い雪が降ってくる様子。このような雪が降り積もって除雪しにくい状態を「びだびだ」「べだべだ」とも。 「ぼだぼだってだってごど」 |
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ぎんぎん |
全てが凍りつくように冷え込みの厳しいさま。 「今朝はぎんぎんっつうもんだったな」 |
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じどじど |
梅雨で湿度が高い上に、雨が降っていて極めてウエットなさま。 |
| <行動を表現する擬態語> | |
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もそもそ |
動作がのろいまたは手間取って時間がかかる状態。「もさもさ」と似ていますが、意味はまったく異なります。「もそくそ」は卑語。反対語は「ちゃっちゃど」または「わらわら」 「ほら、もそもそしてねで、ちゃっちゃど(わらわら)準備しろ」 |
| わたわた watawata |
あわただしい様子。「ばだばだ」とも。 「わたわたっている内に何やってっかわがんねぐなった」 |
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ぎゃんぎゃん |
口うるさい様子。強調形は「ぎゃんーぎゃん」と「ん」を伸ばし、抑揚をつけます。 「昔だど23も過ぎっと、親結婚しろってぎゃんーぎゃんって言うがった」 |
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もっくらかっくら(もくはかくは) |
年を取って行動がすっかり鈍くなり、簡単なことでも手間がかかってしまっている様子。 「最近あそごのじっちゃもっくらかっくらってよハー」 |
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がもがも |
口一杯にほおばっている様子。 「がもがもって食わねでゆっくり食え」 |
| とかとか tokatoka |
心臓の拍動が焦りや緊張などで早くなっていること.どきどき. |
| やきやき yakiyaki |
心配事が増大して気がはやっていること。 「もうハ今ごろやきやきってしったべが」 |
| <食べ物の口触りを表す擬態語> | |
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そりそり |
煎餅などが固くなく、簡単に食べられる様子。 |
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しょりしょり |
豆などが固くなく、簡単に食べられる様子。 |
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にちゃにちゃ |
粘着力が強く、歯によくくっついて食べにくい様子。 |
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もぐらもぐら |
唾液が浸透できないために飲み込みづらい様子。大量の焼きタラコなどを食べたときの食感。「もくもく」ともいう。 |
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ぺそぺそ |
水分が多く味気がないこと。漬物などに対して用いる。「ぺそらぺそら」とも。 |
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がりもり |
食味がなめらかでなく、噛んだときに不快な抵抗があること。里芋などに対して用いる。 |
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がさもさ |
食味がなめらかでなく、舌触りが悪いこと。和菓子などに対して用いる。 |
| すぺーっ supeeee |
淡白で味気ないこと。煮物などの味が薄いときに用いる。転じて面白みのない人についても用いる。 |
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あもん |
いちどに飲み込んでしまう様子。 「あもんって食ってしまったもは」 |
| <その他> | |
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ごろびづ |
球形であるべきものの形が整っていない様子。 「あの南瓜ごろびづだげんどうまいっけぜ」 |
| でごひこ degohiko |
でこぼこ凸凹の「ぼこ」を引っ込んでいる状態として表したもの. |
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みりみり |
筋肉痛で腕などが少し動かすだけで痛い様子。 「雪下ろしで、手ーみりみりっていうべ」 |
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びりびり |
無理矢理引き離す様子。 「嫌(や)んだがってんなびりびりって引っ張って連れで来た」 |
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びくびく |
いったん濡れてから乾いたときの紙の様子。 「ランドセルさ雪入っと、教科書びくびくってなってよー」 |
| すぺらーっ superaaa |
性格が素直でないこと。 「あの人すぺらーっとしてで嫌んだね」 |
| ぽつらぽつら potsurapotsura |
点在していること。 「あそごの村は、家ぽつらぽつらって建ってだもんなえ」 |
その他にも現在調査中です。これをお読みの皆さんで、「そういうのとはちょっと違う」と言う方や、ほかに思い付かれた方はメールください。