ドロッセルマイヤーズ

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『トバゴ』の石像コマを見て、心踊ったことはないだろうか。思い入れのあるテーマのゲームが出て、みずてんで買ってしまったことはないだろうか――中野ブロードウェイに今月オープンしたばかりのボードゲームショップ「ドロッセルマイヤーズ」は、普段はなかなか意識しにくいボードゲームの魅力に、全く新しいアプローチで迫る。
中野ブロードウェイは、サブカルチャーの発信地として有名なショッピングセンター。古本漫画の「まんだらけ」をはじめとして、おもちゃ、フィギュア、キャラクター商品、アクセサリーなどの小さなショップが2階から4階までの3フロアに所狭しとひしめく。ここにボードゲームショップがなかったことが不思議なくらいだ。

中野ブロードウェイの入口。駅前から続く中野サンモールの奥にある
4階の奥、ゲームセンターのとなりにドロッセルマイヤーズはある。入り口から真っ直ぐ向かうことは至難の業で、途中で通るお店に足を止めざるを得ない。美少女アニメ系が多い秋葉原に比べて、ロボットとか、戦隊ものとか、童心に帰れるものが多いためだろうか。おかげでドロッセルマイヤーズに着くころには、縁日のお祭りに来たようにすっかり少年になっていた。土日には親子連れが多く訪れるというのもよく分かる。
ドロッセルマイヤーとは、ロシアのバレエ『くるみ割り人形』に出てくるおじいさんの名前。クリスマスの夜、主人公の少女にくるみ割り人形をプレゼントするところから物語が始まる。「必要ないものしか無いお店」これがお店のキャッチコピーである。普段の生活に必要のないボードゲームが、未知の世界の扉を開く。
アンティーク家具にボードゲームがディスプレイされたショップは、狭いながらも非日常の異世界。お店のコンセプトの一つが、モノとしての魅力である。『ドバゴ』や『バックギャモン』、『ガイスター』や『アバロン』が箱から出して広げられており、コンポーネントの見た目が人を惹きつける。店長によれば、ゲーム性云々よりもモノとしての存在感、そしてそのモノを手で触って操作できる感じが、ボードゲームの魅力として大きいのではないかという。石の積み木、巨大な絵本、マッチ箱パズル、レトロなペーパークラフトなどの輸入雑貨を置いているのもその延長線上にある。

何の家具か分からないけれどもオシャレな棚に並べられたボードゲーム
入口には『トゥイードルダム』をはじめアリスの不思議な世界関連の特集がしてあった。バレンタインには『チョコラトル』やハートのパズルを置いていたという。棚には「動物」「歴史」などテーマ別の陳列。ボードゲームをシステムではなく、テーマから見せるのも、お店のコンセプトである。テーマさえ気に入れば、多少難しくても遊べると店長。少量の入荷で回転を早くしているため、訪れるたびに新しいテーマに出会えるだろう。
お店の前を頻繁に人が通り過ぎる。そしてかなりの確率で、ディスプレイされたボードゲームに興味を示す。好奇心旺盛で、ゲームに慣れていて、新しい遊びを求めている人たち。ボードゲームという、比較的敷居の高い遊びへの適応力は高い。カップルが2人で遊ぶものを探しに来て、『クァルト』や『ガイスター』が人気だという。
モノとしての魅力、テーマを全面に出した構成、そして敏感に反応する客層。ドロッセルマイヤーズは、これまでのボードゲーム愛好者とは一味違った層に面白い形で浸透していきそうだ。これまでの愛好者にとっても、ドロッセルマイヤーズを訪れることは、軽視しがちなコンポーネントやテーマを、もう一度見直すよいきっかけになるかもしれない。

店長の渡辺範明さんと、奥様で副店長の真城七子さん。遊び心あふれるお二人

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