[ボ育て]親子体験塾で紙ペンゲームを遊んでもらった話

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私はいろんな経緯があって現在、県の家庭教育アドバイザーというものを務めている(子どもには「うさんくさい」と言われる)。そこで近隣の自然の家で行われた2泊3日の親子体験塾に講師として招かれ、『大人が楽しい紙ペンゲーム30選』(すごろくや)を題材として、遊びの創意工夫についてワークショップ形式の講演を行った。
県教育委員会が主催のイベント。意欲の向上や生活習慣づくりなどがねらいとして謳われ、ドラム缶風呂、昆虫採集、流しそうめん、カレー作り、餅つき体験、アスレチック、ピザ作りと盛りだくさんの内容で、10家族ほどが自然の家で過ごした。私の出番は2日目の夜。
当初は『藤井四段を目指せ!~ボードゲームで頭脳と人間力を鍛えよう~』という提案を頂いたが、「子どもの頃の感動体験が学習意欲につながり、心の体力を育てる」という内容にしてほしいという要望があり、最終的に『「遊び」と「学び」の切っても切れない関係~体験で育てる”学びに向かう力”~』という演題に落ち着いた。この演題は、ドイツの子育て月刊誌”Spielen und Lernen(遊びと学び)”を念頭に置いたものである。
頂いた時間は夜の1時間。親だけが対象だと思って会場に入ったら、前半は親子で、後半は親だけという2部構成だった。4卓に分かれて、親子が和気あいあいとして待っている。しまった、ボードゲームをもってきていない! しかし、ここでお話だけだったら子どもは確実に寝てしまう!
そこでまず、テーブルごとに「お父さん、お母さんが子供の頃遊んだ遊び」を話し合ってもらうことにして、その間にカバンに入っていた『大人が楽しい紙ペンゲーム30選』をぱらぱらとめくる。紙もペンもトランプもなくて、小さい子供でも楽しめるものは……あった!『20の質問』でいこう!
『20の質問』とは、親がひそかに考えているお題を、ほかの人が順番に「はい」か「いいえ」で答えられる質問をして20回以内に当てるコミュニケーションゲーム。『二十の扉』という番組名で1947年から1960年までNHKラジオで放送されたこともあり、また『インサイダーゲーム』(オインクゲームズ)の下地にもなっている。以前、年配の方を対象とした講演会でやってみたところ好評だったので、今回もやってみることにした。
ルールを説明して、各テーブルごとにスタート。いい質問でも、変な質問でも笑いが絶えず盛り上がっている。今回はモノに限定したが、20回の質問で答えが出たところも、出なかったところもあって20という数字は絶妙だなと感じた。遊び終わって本を紹介し、これは車の中でもできるから今度親子でやってみて下さいと締め。ここまで30分。
子どもたちが別室に移動して親だけの時間になったので、「知育」とか「頭に良い」とかいうのを目的にせず、あくまで結果として捉えるべきという話をした。なぜならそういうものを目的に掲げた途端、子どもたちはそれを敏感に感じ取り、魅力がなくなってしまうからである。そして遊びを自ら考え、みんなで話し合ってもっと面白いものにしていくことを指導された子どもたちが、指導されなかった子どもたちより大人になってからの年収が高く、犯罪率や生活保護受給率が低かったというアメリカの実験「ペリー就学前プロジェクト」を紹介した。
最後の10分。用意していた資料でアドラーの「課題の分離」やフライヤーの「インプットアプローチ」を説明しようかと思っていたが、思い切ってそれらを飛ばし、思いつきで皆さんにやっていただいたのは「しりとりをもっと面白くしよう!」テーブルごとに話し合って、アイデアを出していただいた。テーマ縛りから、最後の2文字、漢字熟語の読み、絵、ストーリーテリング、テレストレーションなどいろいろなアイデアが出された。最後に、こういう遊びの工夫を親からもっと積極的に行うことを進めて終了。
結局ボードゲームは全く紹介できなかったが、将来につながる遊びの重要性をお父さんお母さん自身が楽しみながら再認識して頂けたと思う。「楽しかったです!」「今度やってみます」などと言う参加者の笑顔は、童心に帰っていた。
こうして考えてみると多くのボードゲームはファジーな部分があり、ハンデをつけたり、難易度を変えたりして遊ぶことができる。ルール改変ができなくても、手加減もしやすい。さらには子どもだって自分で創作することもできる。遊びの工夫ができるという点で優れた遊び道具だということも、振り返って感じたところである。