グラパックジャパンは2003年から「エアロノートシリーズ」として大人向きのシックなデザインでボードゲームを立て続けに発売した。合計8作が発売され、これにレジスタというゲームも加えて9作品になる。テーマはサッカー、格闘技、バスケットボール、野球、ゲートボール、ダイビングといったスポーツから、インディレース、犯罪、ファンタジーと多彩。メカニズムも従来にないオリジナリティがあり、もともと素材集や印刷を手がける会社だけにデザインや印刷のクオリティーも高い。
さらに2005年にはサッカーチェスとワルモノ2を発売、英独ルールをつけてエッセン国際ボードゲーム祭SPIELに初出展した。輸入ゲーム優勢の国内ボードゲームシーンにおいて、国産ゲームの新しいトレンドを生み出す鍵となるメーカーである。
ワルモノ2|サッカーチェス|ゲキシンK.O.|ダンクジャム
|オーバルトリック|ファンダイブ|ゴウワンストライク|ワルモノ|ゲートボール?|インガ
キラーパスで一気にゴールを狙え!
ドイツのゲームデザイナーの一人者、クラマー氏や年間ゲーム大賞の審査員を務めたヴェルネック氏などが指摘するように、スポーツをテーマにしたボードゲームは成功しにくいと言われる。スポーツがもつスピード感が、ボードゲームにすると失われてしまうからだ。だからそれを補って余りある何かをもっていなければならない。
ドイツのワールドカップ開催を睨んでグラパックジャパンが発売したサッカーチェスは、フォーメーションに焦点をあて、パスをもらったり、それを遮ったりするような位置取りの妙を楽しむことができる。その点でまさにチェスなのだ。
サッカーにそれほど詳しくない人でも、ワールドカップで3-5-2とか、3-4-3といったフォーメーションを聞いたことがあるだろう。2人で遊ぶこのゲームでは、ゲーム開始時に好きなフォーメーションを組むことができる。そのフォーメーションを生かしつつ、相手のフォーメーションを崩していくのがこのゲームの醍醐味になっている。
ゲームに登場するのはFW、MF、DF、ゴールキーパーの4種類で、それぞれのコマには背番号がついている。サッカー好きな人ならこの時点でそれぞれのコマに思い入れが出てくるにちがいない。ゲームは交替で行い、自分の番には2人の選手を1回ずつ移動(ドリブル)させるという制限があるほかは、パスは何度でもできる。DFからMF、MFからFWとうまく配置していれば、1回の手番で一気に攻め込むことも可能だ。ボードゲーム化されたスポーツにはないはずのスピード感がこのゲームにはある。
ゴール前のシュートやボールをもっている相手へのタックル時にはサイコロを振って判定する。FWはシュート力、MFはボールキープ力、DFはタックル力に優れていて、サイコロの目に加えられる仕組みだ。また、ロングパスやロングシュートでも誤差をサイコロで決める。味方のところにうまく落ちることを祈って、何分の一かの確率でゴールに入ることを狙って、一か八かやってみるのもよい。うまくいけば形勢逆転することもあるだろう。チェスにサイコロという妙な取り合わせも、サッカーをシミュレートしているという点で面白い趣向だと思う
勝敗を分けるキーマンがレジスタ。移動力は少ないがパスは正確。ロングパスをしてもサイコロで誤差判定することなくキラーパスが通る。オフサイドに気をつけながらFWを最前線まで出しておいてキラーパス。一気にゴールを狙わせたい。
ゲームは両プレイヤーが1回ずつ手番を行うごとに時計が3分ずつ進んだことになり、15ターンで45分。ハーフタイムでやめてもいいし、後半もありにしてもよい。ゲーム時間はハーフタイムなら30〜40分。一進一退の熱い戦いが繰り広げられるだろう。
1ターンに2人しか動かせないので、一度フォーメーションを崩すとなかなか態勢を立て直せない。1人の敵に何人もタックルしに行って小学生のサッカーのようなことをしていると、ゴール前ががら空きになったりしてしまう。無闇にボールをとりに行かず、ゴール前を固めながら、ボールを取ったらすぐパスを出せるルートを作っておくのがポイントだ。
サッカーを愛する全ての人に。監督になった気分で組織サッカーを楽しもう。
価格:3360円/対象年齢:12歳以上/プレイヤー人数:2人/発売年:2005年/入手状況:販売中/作者;不明/カテゴリー:スポーツ
レビュー:メーカーサイト、名古屋EJF(旧版)、ストアミックス、Good Game Guide(独)
データベース:play:gameデータベース、Boardgame Geek(英)、Luding(独)
その他:2ちゃんねる「レジスタ」とかいうゲームについて
購入:グラパックストア、プレイスペース広島、ハイパーファクトリー、銀河企画、アマゾン
謝辞:サンプル提供・グラパックジャパン
みんなマフィアかと思ったら、デカが混じっていた!
マフィアたちが自分の正体を隠しながら、海外逃亡をたくらむゲーム。熱い腹の探りあいが繰り広げられる。
はじめに与えられるのは、自分が何者かを示すキャスティングカードと、最初の持ち物を示すコンテンツカード。この2つを隠してプレイヤーは行動する。
まずキャスティングカードだが、6枚中に潜入捜査官が1枚だけ入っている。でもプレイ人数は4人。だからプレイヤーの中に潜入捜査官がいることもあれば、いないこともある。お前はひょっとして、デカなのか?……これが恐怖の疑心暗鬼を生み出す。
そしてもうひとつのコンテンツカードは、1枚だけ現金で後は全部ニセ金。マフィアは現金をもって海外に高飛びしたい。醜い奪い合いが始まるが、潜入捜査官がそれを狙う。現金をもっていない奴も、もっている奴も、そわそわして落ち着きがなくなるのだ。
ゲームはサイコロを振ってボード上を回りながら、パスポートを取ったり、チケットを取ったりしていく。ほかのプレイヤーのマスに入ったら、お互いに持っているコンテンツカードのすり替えだ。ただし、すり替えても中身をすぐに見ることはできない。中身を確認するには1回休まなければならない。その間に、匂いをかぎつけたほかの仲間がまたすり替えにやってきて……
ちなみに、すり替えたふりをして実際にはすり替えないということもできる。相手からコンテンツカードを受け取り、テーブルの下でごにょごにょと混ぜて、どちらかを相手に返す。その時に受け取ったものをそのまま返してもよい。自分が現金をもっていたらそうするだろうし、ほかの奴らが奪いに来るのを予想して裏をかくという手もある。おーい、現金を持ってるのはいったい誰なんだー?!
潜入捜査官の目標は、現金をもっているマフィアを捕まえること。誤逮捕は即クビ(ゲーム脱落)なので注意が必要だ。一番手っ取り早い方法は、自分が現金を入手して、その辺を通りかかったマフィアにもたせて、ハイ逮捕。ひどいものだが、組織を壊滅させるには手段を選んでいる暇はないのである。
自信をもって飛行場に向かう奴、やたらに人と接触してすり替えまくっている奴、目的もなさそうにうろうろしているだけの奴。行動から推理し、裏をかき、裏の裏をかいて……1手1手が熱い心理戦。ちなみに規定ラウンド以内に誰も目的を達成できないと全員敗北になってしまう。終盤はさらにヒートアップする。この手の海外ゲームには「操り人形」や「キャメロットを覆う影」があるが、2種類の隠蔽情報によって、その何れももっていない魅力をもたせることに成功している。
さらに、7つのシナリオがゲームを遊ぶたびに変わったものにする。途中で全員が正体を明かす「狼たちの本性」、発信機のついたコンテンツカードでどんどん脱落していくサバイバル戦「発信機、作動!」、チーム戦の「パートナーズ・イン・クライム」など、どれもワクワクさせる展開が待っている。
分厚いカード、重みのあるコマ、ボード上に置く透明のバリケードやカウンター、封筒に入ったシナリオなど、コンポーネントのクオリティは世界最高レベル。シックなテイストのイラストもすばらしい。国産ときくと手に取るのをためらうボードゲーム愛好者にも、ぜひ試してもらいたい。
価格:4410円/対象年齢:12歳以上/プレイヤー人数:3〜4人/発売年:2005年/入手状況:販売中/作者;不明/カテゴリー:犯罪
レビュー:メーカーサイト、名古屋EJF(旧版)、kumaの学習ノート(旧版)、Bruno Faidutti(仏・英)、Good Game Guide(独)
データベース:play:gameデータベース、Boardgame Geek(英)、Luding(独)
その他:ボードゲームを始めよう(旧版との違い)、ボードゲームを始めよう(インスト方法)
購入:グラパックストア、プレイスペース広島、ハイパーファクトリー、銀河企画、アマゾン、ユウセイ堂、クロスバイドットコム
謝辞:サンプル提供・グラパックジャパン