草岡の洞松寺

石栗 正人

 西置賜の人々にとって葉山連峰はふるさとの山である。その山麓を高玉街道(俗に西街道ともいう)が走っている。長井九野本から約八粁、寺泉から草岡へ辿っていくと洞松寺がある。葉山の山裾が街道のすぐ近くまで迫って来ている。四季花で埋もれる寺の境内は山の斜面に広がっている。

 街道に面し入口には石の門があり、右の凝灰岩の石柱には三峯山上月一輪とある。左の石柱には仰見禅庭洞松影と大書されている。この文字は正にこの寺院の優雅な境内の風情や眺望を表現しているように思われた。一歩参道に足を踏み入れると見事に植栽されたアジサイやチャボヒバ、オオモミジ、レンギョウ、シダレザクラ、ウメ、カンボク、ユキヤナギ、イチジクなど多彩な花木の数々に目を奪われるのである。南山門から北へ百五十米程の所に北門がある。

 車が通れる程の参道に銅葺屋根の山門があり、額に鳴鶴洞松とある。薄暗い程に覆い被さった樹木の下には、さまざまな野草やシダ類が露に濡れ、住職のただならぬ自然への造詣と配慮をそこはかとなく感ずるのである。百米も登れば本堂や庫裏のある台地に行き着く。その手前から右に折れると左の斜面には墓地が開かれ、右手には花木の植え込みがあって、車が二十台も止まれる駐車場になっている。

 洞松寺の由来は言い伝えによると、元は勧進代と草岡の境にあり、開基は瑞竜院の五哲月窓正印が文明年間(一四六九年〜一四八七年)の頃の創建という。ところが両民の土地争いの際消失し、今から二百五十年位前(延享三年・一七四六年)の頃現在地に移って来たとのことだ。本尊は釈迦如来である。

 本殿には平成三年九月北京市より寄贈された精巧な千手観音像が安置されている。圧巻は境内の数多い植物であろう。本殿前の大イチョウはこの地域の名物で、遥か遠くから望めることから農作業の目安になっている。葉が全部落ちれば根雪の訪れと土地の人は思う。幹周四・二米、樹高二六・二米樹齢二百年余の雌の木である。その下に孟宗竹林がある。

 食用ばかりか、青竹は祭りや運動会など地域活動に大いに役立っているとのこと。イチョウの北側に珍しいムクロジ(樹齢百年位)がある。暖地性の植物で内陸では珍しく種子を羽根つきの玉や数珠に使う。東斜面の桑畑の下に春ともなればフクジュソウやスイセン一斉に開花するという。

 名物はアジサイで種類株数は置賜一とも称せられる。その他ウメ、シダレザクラ、バラ、ハクモクレン、タカオカエデ、バイカウツギ、ネムノキ、ミツバアケビ、ウメモドキ、サンゴジュなどさながら植物園の趣がある。山手の方にある墓地の周辺や、背後の山の方もこれから自然を生かしつつ整備するとのこと、恰かも極楽浄土の現代版ともいえる寺院である。近くに草岡の大杉(長井市文化財)もあり多くの人に一見をすすめたい。

  花咲くや草岡山の洞松寺

  大いちょう緑に萌えて早苗かな