瞋恚








道路を悠々と横断する水牛の群れ。リキシャーやバイクはその隙間を抜けていく
道路を渡る水牛の群れ

仏教の十戒には不瞋恚戒(ふしんにかい)というのがあって、怒りに燃えて自らを失うことを戒めている。怒ることが悪いのではなくて、キれないように自分を制御せよということだろう。しかしインドでは、どうしてもキれたくなる場面に遭遇する。今日はそれが3つあったので夜にはクタクタだった。
はじめは食い違い。先日、アーナンダ・アーシュラムというところに写本のコピーを頼みに行った。担当者がいなかったので必要なリストを渡し、後に電話をして確認するということで帰ってきた。コピー代は、後払いということでいいというので、後は受け取るときに来ればいいはずだった。
だが、電話しても、担当者が全く要領を得ない。5分後に電話をくれというのでかけたところ、写本は利用できないなどと言ってくる。理由を聞くと「ヒンディー語で話せ」、ヒンディー語で話したが電話で聞き取りにくく、お互いに分からない。結局、コピー代は前払いだから来てもらわないと困るという話だった。ぜんぜん伝わっていないことに愕然とする。
2番目は遅刻。引越し先を探すのに、不動産屋と待ち合わせをしたのだが一向に表れない。前回も30分遅刻してきている。電話をして「いちいちこちらから電話しなければいけないのか?」と訊くと「ノーノー。今日はミーティングがあって…あと5分で行きます。」それからまた20分。再び電話をすると「今出ました」と蕎麦屋の出前のようなことを言う。結局、約束の時間から40分遅れで到着。私は本を読んでいるしかなかった。
「これで遅れたのは2回目だ」というとまた言い訳を始めようとするので、それを遮って「我々の国では、時間を守るのが全てだ。よく覚えておけ」と強い口調で言ってやった。こうでも言わないと気がすまない。家に帰ってから「あの時ああ言っていれば」と何度も思い返したくない。言うことを言ってすっきりしたが、不動産屋が案内した家が手違いでもう成約済みだったことには、怒りというよりも落胆。こういう日もあると思うしかない。
3番目は怠慢。3月に本を注文していた本屋で、4月に行ってみると「注文は受けていません。」 「本社に注文したのだから、確認して揃えておいてほしい」と言ってから3ヶ月。今日再び行ってみるとまた、「注文は受けていません。」 ついでに店長も変わっていて「もう1回注文してください」。結局この3ヶ月、何もしていなかったのである。
こんな1日だったが、夜に別の不動産屋から電話がかかってきた。私が会った不動産屋は、自分が紹介したのだから、自分を通さないで直接連絡を取るべきではないなどと怒っている。そんなことは予め言われなかったし、第一その不動産屋は「別のミーティングがある」と言って先に帰っていた。こんなところでナワバリを主張されても困る。礼金の分配があるから必死なのだろうが、そんなことで非難されるとどっちが客なのか分からなくなる。しかし夜の私には、逆ギレする気力は残っていなかった。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


The reCAPTCHA verification period has expired. Please reload the page.