『子どもが減って何が悪いか!』

子どものいる家庭への財政支援、母親が働きながら子どもを育てられる環境の整備、女性就業率の増加による男女共同参画、夫の家事負担……今、政府や社会ではこうした流れを推進しようとしている。
筆者はこれらが”少子化対策としては”効果がない(だからといって不必要だと言っているのではない)ことを統計データから示し、少子化対策として有効な手立てはありえないと断言。少子化社会に見合った体制を提言する。
少子化の最大の問題は、産みたいけれども産めない人が増えたとか、きょうだいの数が減ったということではなく、都市化や期待水準(生活水準の理想)の上昇にあるという。
自分の生活水準を大幅に下げるくらいなら結婚はしなくてもよいという考えが未婚化・晩婚化を招き、また政府の子育て支援策は、結婚や子育てにおける生活水準の理想をなまじ上げてしまい、かえって控えさせることになってしまうという(第6章)。
統計から導き出される根本的な少子化対策は、都市に住む人間がみんな?@田舎に疎開し、?A農業を営みながら?B三世代同居で暮らすことになるのだが、それは無理な話である。?@?A?Bともに世の中の流れが全く逆方向に動いている以上、少子化は止めようがない。
そこで筆者は、少子化のデメリットを検討。経済の衰退、労働力不足、社会保障費の増大を挙げる。これを受け入れた上で、年金負担の世代間分配など社会制度の整備を説く。
筆者が結論として言いたいことは男女共同参画の否定では決してなく、結婚したい人もしたくない人も、子どもを産みたい人もそうでないひとも、公平に扱うことで結婚や出産の選択を自由にするということである。
こうしてみると、柳沢厚労相の「女性は産む機械」発言は、現在結婚し出産した女性ばかりを保護している政府のイデオロギーを見事に言い表したものであろう。要するに「産めよ殖やせよ」政策なのだ。どうして政府は「そうですよ、そういうつもりでやってます」と開き直らないのだろうか。
少子化問題は今一番ホットな話題のひとつ。筆者の言う「選択の自由」は完全には同意しかねるが、世間の常識を問い直し、たくさんの視点を得られたことは収穫だった。

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