『ことわざの論理』

長い間語り伝えられてきた英知は、生半可な知識よりずっと意義深いものだ。1979年に初版だったこの本が、30年近く経った今文庫化されて読んでも、古さを感じないのはそういうことわざの力によるものだろう。
夜目遠目傘の内(私の好きなことわざでもある)、三尺下がって師の影を踏まず、目くそ鼻くそを笑う……語呂がよくて覚えやすく、人の心理をしっかり描き、ときには生きる指針とさえなることわざ。その裏にある意味を読みやすい筆致で引っ張り出す。
桜切るバカ梅切らぬバカなんていうのは、園芸のコツぐらいにしか考えていなかったが、教育でもイデオロギーでも杓子定規はダメだという教えがある。
餅は乞食に焼かせろ、娘は棚に上げ嫁は掃きだめからもらえ、売り家と唐様で書く三代目、人の行く裏に道あり花の山など、ちょっと聞きなれないことわざも知ることができてお得。よく言ったものだとか、粋だねぇとかことわざを伝承してきた日本人に感心することしきり。
これだけ移り変わりの激しい現代、古人の知恵を生かすことなんてないのかなと思いきや、そんなことはないものである。時代や国を問わない普遍性が垣間見られたような気がした。

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