ホール葬

田舎にも葬祭ホールが次第に増え、わずか数年前は自宅葬が中心だったのが、ホール葬の比率がどんどん高まっている。
そんな中、近隣で長老になるご寺院さんが「やむをえない事情がない限り、自宅かお寺で葬儀を行うように」と呼びかけ始めた。その理由は、自宅には仏壇があり、お寺には本尊があるからだ。ホールにも本尊の掛け軸が下がっているが、あくまで仮に設置されたものであり、明日には取り外されて神棚になっているかもしれない。
仏式の葬儀において亡くなった人は、戒名を授かることで仏縁を結び、仏様の仲間となって、本尊や菩薩の導きによってあの世に赴く。仏壇に安置された本尊や先祖は、受戒式では「三師七証」の証人となり、引導では来迎する役目がある。
今日、枕経に行って遺族に話を伺うと、ホールでということだった。そこでこのように反対申し上げた。
「住職の立場として申し上げますが、やむをえない事情がない限り、自宅かお寺でお願いしたいと思います。自宅には仏壇があり、お寺にはご本尊様があって、先祖代々手を合わせてきました。その仏様の前で、お送りできればよいと思います。それともホールでせざるを得ない事情がありましたら、ご説明頂けますか。」
最後の一言は言葉がきつかったと反省しているが(学会の質問じゃないんだから)、「暑いから」と言っていた遺族も、「1時間だけのことですから」とさらに説得しているうちに、居合わせた近所の方が賛成したこともあって、自宅への変更を了承した。そこに居合わせた葬儀社の方には、遺族とともに私からも一言謝っておいた。
3月からお寺に住んで以来、亡くなってすぐに駆けつけられるようになったため、このように説得する場面が増えてきた。その前は、つくばで連絡を受けてから到着まで半日かかるので、決定を覆すことは無理だった。しかしここまで差し出がましいことをするのは是か非か。
こういう説得は、葬儀社の不興を買うだけならまだしも、遺族の意に沿わないことも多いので、後味のよいものではない。かといって柔らかく勧めるだけではホール葬になびいてしまう。自宅葬、寺院葬の意義を理解してもらいつつ、遺族の心情も考慮してもう少し上手に進められる方法はないものだろうか。あるいは、ホール葬は世の中の流れと、下手に逆らわないほうがよいのだろうか。上山には「ホール葬なら行かない」と強情の和尚さんもいるそうだが、そこまで私は頑なでもない。
ちなみに、ホール葬を行うにやむをえない理由として考えられるものは、冬に積雪のため駐車場がないというくらいしかない。料理やお茶出しのできる家族がいないとしても、お寺ですれば問題はない。また、遺族の前で言うことはないが、自宅かお寺で葬儀をして、祭壇はお寺から借りるのが葬儀費用が一番安い。お寺には椅子もあり、会場費は3万円である。

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