石巻に楽器届ける

今月の5日に行われたチャリティーコンサートの収益金で購入した楽器を昨日、石巻の小学校に届けてきた。
もともとこのアイデアは、コンサートにも出演された東京芸術大学の杉木教授によるもので、ほかにも各地で演奏会を行い、その出演料分で楽器を届けているという。お金を直接届けるのは難しいが、楽器なら、それをひとつの象徴として、精神的な支えや復興の原動力にしてもらうことができる。
出演料分といっても、演奏会を黒字にするのは容易なことではない。休憩時間中の募金箱や、実行委員からの寄附で何とかトランペット2本とフルート1本を贈呈できることになった。
送り先の小学校の選定にあたっては、かつて長井の病院に勤務し、長井生まれの奥様と結婚されて、現在石巻に開業している久門先生というお医者さんにお願いした。これも杉木教授のアドバイスだが、その先生の出身校であり、かつ副校医を務めている学校ということで、スムーズに話をすすめることができた。
実行委員3人で道中あれこれ話をしながら、石巻まで車で3時間。山形の曇天とはうってかわって陽気な青空である。久門医院に到着すると、お寿司をご馳走して頂いた。ようやく石巻港も復活したそうで、新鮮な魚介類に舌鼓をうつ。
久門医院も30cmほど浸水して、半月以上停電が続いたという。その間も水をかき分けていらっしゃる患者さんにできる範囲で診療を続け、津波で泥だらけになった薬局から使えそうな薬を出して対応していた。川辺のお医者さんはお亡くなりになったというから、医療難民も多かったのだろう。まるで野戦病院だったと奥さん。
それから久門先生とともに渡波小学校の仮設校舎へ。校長先生と教頭先生に迎えて頂き、早速楽器を贈呈した。石巻三陸新聞の記者さんも来ていてばっちり写真に写る。それからしばらくお茶を飲んで談話。
前の校舎は1階が津波で泥だらけとなり、山1つ超えた隣の学校のグランドに仮設校舎を作っている。音楽室にあった楽器はいくつか泥の中から掘り出したが錆びているものも多く、トランペット鼓隊への参加を希望する子供たちにまだ行き渡っていない。宮城の吹奏楽連盟から中古楽器の寄附は受けたが、新品は初めてとのこと。
先日、福島からの避難民とお話しした際も思ったが、何も手につかないほど悲惨な目にあってこられたはずなのに、表情は穏やかで明るい。被災者が「元気をもらう」ということをよく聞くが、元気をもらうのは支援者のほうかもしれない。
その後、奥様に被災地を案内して頂いた。高台にある日和が丘公園からほとんど何もなくなった南浜町・門脇町を見下ろす。きれいに積まれている車や平らにならされた瓦礫に、被災した人々の数えきれない思い出がつまっていると思うとせつない。あの車がうちの車だったら、あの柱がうちの柱だったら。
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石巻に行くのは初めてだったが、歴史のある風光明媚な街だった。復興の足跡を確かめに、今度は子供たちを連れて訪れたい。

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