梅花流: 2008年11月アーカイブ

独詠師

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今日は近隣のご寺院さんのお葬式だった。つい先月まで法要などで顔を合わせていたのに、持病が急変されたとのことだった。享年73歳。

今回の配役は知殿と独詠師。法要の前に道具の確認をしたり、タイミングをはかってお供え物を裏から出したり、マイクを手配したりと、裏方ながら法要の進行を支える重要な仕事。打ち合わせと違って臨機応変に対応するところもあるため、経験と気配りと積極さが必要である。私だけでは力不足だったが、若手チームの団結力で大過なく終了した。

独詠師は法要のクライマックスで『妙鐘』『高嶺』『不滅』という3曲をソロ無伴奏でお唱えする。会場がしーんと静まり返り、導師の和尚さんが静かに法要を進める中でお唱えするのは緊張する。一番心配していた咳も出ずに無事お唱えできた。

ちょうど『不滅』のお唱えのときだったろうか、ふと昔の法要の配役が目に付いた。25年前、亡くなった住職が大和尚になったときのものである。正面向かって右側の2番目に、「洞松方丈」と書いてある。つまり先代住職、亡くなった私の祖父である。

10歳だった私は、この部屋で弁事という役でお坊さんデビューしたのだった。「てんどうのかくおしょう、じゅにいわく……」意味も分からず暗誦していた。弁事が座る位置は、正面向かって1番目と2番目の間。ちょうど祖父の真向かいである。

私は必死でどこに誰が座っているかなど憶えていなかったが、横に祖父が座っていたとは……。どんな目で10歳の孫を見守っていたのだろう、そして今、同じ場所で御詠歌を唱えている私を見たらどう思うだろうと考えると、急に涙がこみあげてきて、危うくお唱えできなくなるところだった。

祖父が亡くなり、住職になって先月で10年が経った。いまだ私は、いやこれからも私は、亡き祖父の影を慕って住職を続けるのだろう。自分の原点を思い出した今日のお葬式だった。

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