Book: 2006年9月アーカイブ

刊『寺門興隆』の人気連載「そもさん 玄侑和尚の説教部屋」を加筆修正したもの。

形骸化する葬祭、葬儀社の台頭、檀家離れ、お布施の使い道、オウム真理教やイラク戦争などの社会問題への対応、私生活との両立、後継者問題など、住職なら誰しも悩んでいる項目に分かりやすく答えていく。

といっても、これは絶対ダメというのは「お布施の値段を決める」「お寺に定休日をもうける」ぐらいで、両論併記にして後は自分で考えるよう促している。玉虫色の答えに納得できない人もいるだろうが、実際白黒つけがたい問題が多いのだから仕方ない。

お寺を継ぎたくないという息子に悩む住職には自分が仏教に惚れ込んでいるかが問題だと根源となる前提に切り込んだり、お葬式は節目を作り心をきれいにするための儀式としお守りやお札は無我になるための祈りをこめた物とするなどオカルトでない説明をしたりするなど、現実的かつ鋭い意見があり、とてもためになった。

今のお寺が抱える問題には、仏教そのものだけでなく、儒教・道教を含む中国思想から、カウンセリングに役立つ臨床心理学、社会学、日本の民俗学まで多角的に取り組んでいくことが大切なのだと思った。そして人と対話を重ねていくことも。

付和雷同しがちな日本人に足りない、問題解決のための議論をルールから説き明かし、もっともらしい意見も批判的に見つめ、建設的な議論をできるようになるための本。

実質何も言っていないのにそれらしく聞こえるマジックワードや統計のカラクリ、バイアスのかかった資料解釈、「人それぞれ」という考え方の誤り、意見の要約や根拠の評価の仕方、対立する意見の弁証法(共通の前提を覆す)、正解は決してないという限界など。

議論は必ずしも戦いではなく、協力している面もある。仲良く喧嘩することが、意見を批判されただけで全人格を否定されたようになってしまう日本人には何と難しいことだろう。

「議論に負けても、それは相手に負けたことにはならない。真理に負けた、いや従っているのである。悔しがるより、自分がより心理に近づいたと満足すべきなのだ。」

「議論の場とは、対立しあっているように見えるが、実はたった一つの点では共通している。それは、「私とあなたは同じ問題に関わっている」という信頼である。」

しかし、自分の意見を理解してもらうという努力は放棄するべきではない。主張と理由だけで分かってもらえなかったら、例示、説明、引用、対比、比喩を多用しよう。

「もちろん、理屈がうまく通じない相手もいる。偏見が強かったり必要な知識を持っていなかったり論理が苦手だったり、そういう場合は必要な知識を補い、論理のつながりを丁寧に言い換え、解きほぐす必要が出てくる。」

有名人、専門家だからといってしっかりした意見を持っているとは限らない。批判的に見る・疑ってみるということは、決してひねくれてみるということではなく、問題の本質に迫っていく大切なことなのだと考えさせられた。

もっと議論のルールが学校教育などを通して共有されたらよいと思う。

常識を疑ってみるところから新しい真実が見つかるかもしれない―古今東西の資料を集めて発想術を説いた本。

転倒思考(常識の命題を逆にする)、逆因果思考(常識の因果関係の結果を逆にする)、因果反転思考(常識の因果関係を因果反対にする)という3つの類例を設定する。

ことわざや文豪の例でその3パターンを具体的に観察し、オイディプスの予言では逆説が与える心理的な効果を考察、さらに逆説は欠陥動物である人間に本質的なものであり、それゆえ人類の文明は週末が来ると広げていく。

「ロミオとジュリエット効果、カリギュラ効果(禁止されるとやりたくなる)」「ハンディキャップ進化論(人類は記憶力や体毛が退化したことで言語や火を発明した)」「エラー進化論(人類は失敗を成功の元にして発展してきた)」「エゴイズム的自殺(自由が空虚を生む)」「アノミー的自殺(規範がなくなって不安になる)」など、逆説的なトピックは勉強になったが、最初から最後まで引用ばかりで、筆者自身の見解となると印象が薄い。

ボードゲーム『スコットランドヤード』では、24ターンのうちに怪盗を捕まえなくてはならない。本小説では、主人公が24日の間に彼女を恋人にできるかというテーマで筋書きが進行する。

いわゆるトレンディドラマは全く見たこともないし、ラブロマンスなんかで感動したこともほとんどない私だが、ボードゲームつながりで読み始めたこの本、よくある男女の恋愛話だろうと高をくくっていた。

だが、物語は中盤から急展開、全く予想もつかなかったどんでん返しと、「我々は、死者とどう向き合うのか」という隠れたメッセージが心を打つ。宗教的、哲学的にも含蓄が深い。

それでいて読み口は一言会話が繰り返されて軽快、ところどころウィットに富んでいてクスッとさせるところもある。ボードゲームも、実際に何回か大事な場面で登場し、テーマと自然になじんでいる。

これがドラマ化されたら、ボードゲームが流行らないかな。

このアーカイブについて

このページには、2006年9月以降に書かれたブログ記事のうちBookカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはBook: 2006年8月です。

次のアーカイブはBook: 2006年10月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

アーカイブ

リンク用バナー