Book: 2006年12月アーカイブ

『ウェブ人間論』

コメント(0)

『ウェブ進化論』の梅田望夫氏と『日蝕』の平野啓一郎がインターネットの今と未来を語った対談集。

はてなダイアリーの狙い、ネット時代の人脈活用、検索に引っかからない語=空いているスペース、情報がフローするネット時代の本のメリット、グーグル社員のスターウォーズ好きなど、興味深い話が読めて満足。そのほとんどが梅田氏の発言で、平野氏の意見は当たり前すぎて素通りしてしまう。

この分野で圧倒的なデータを持つ梅田氏に対して、平野氏は30歳以下の世代の感覚をぶつけ、その正誤を確かめているような印象を受けた。

自分と同じ志向性をもった人が集まりやすい「島宇宙」についてはそこまで実感がわかなかったが、頭の中の記憶(教養)と外部記憶(調べられる情報)のすみわけがインターネットの検索、とりわけ検索の精度向上で変わりつつあるというところに深く共感。

私自身、頭は使っているのに記憶力だけ減退している気がするのはネットのせいか(年のせいかも)。覚えてなくてもネットで調べられるという油断はある。

経済成長を続けるBRICsの一国として近年注目される大国と、日本の企業がビジネスでうまくやっていくためのノウハウを書いた本。

著者は東京銀行ニューデリー支店に長く勤務し、現在は「インド・ビジネス・センター」の社長を務める。ただの印象でなくデータに裏付けられた実利的な記述は、「インドの一辺をなぞっているだけ」だとしても具体像がよく見えてくる。

インドで実際に仕事をしていたからこそ得られるような数々のエピソードが出色。快進撃を続ける韓国企業サムソンやLGの売り込み方、IIT出身者の活躍、スズキがインド政府を訴えた裁判、インド産マンゴーの輸入解禁が遅れたわけ、太りすぎの社員を地上職にしたエア・インディアの決断など、とても興味深く、時に笑えるエピソードがいっぱいつまっている。

日本人がインド人と渡り合っていくには沈黙よりも雄弁が必要と説く。そしてカーストなどの因習に囚われないこと。「インド人と対等に付き合えるようになれたら、日本人も国際化したといえるよね。」(インド大使を務めた外交官の言)

相手の意見をよく読まず、文中に使われている単語を見て「脊髄反射」的に批判・反論をされることが多くなったブログ時代に、そういったものにどう対処していくかをフランクに書き綴った本。

著者はまず反論を3種類に分類し、それぞれに合った技術を紹介する。

1.見せかけの論争―論争自体に関心はないがギャラリーからよく見られることを目的にして論争のふりをすること。八方美人ではなく味方になるターゲットを決めて訴えることが必要。
2.論理詰め―理詰めで自分の主張を相手に受け入れてもらうこと。真理はひとつではなく、力関係によって決まること、また外野を排して同じ土俵に立つことが必要。
3.人格攻撃―反論というかたちで相手を潰すこと
。自分も汚れ役となる覚悟(ここ重要)が必要。

一般に議論・論争といえば2を指すが、筆者は「ほんとうに論争をしたいという動機をもっている人は、世の中、そんなに多くありません」という。学者などでさえ、専門をちょっとでも離れると1か3にずれる。全くその通り。

であるので1と3に習熟して、状況に応じて使い分けたり、相手の動機を察知して対処したりするのが賢いやり方になるだろう。

インド哲学で行ってよいとされる議論は「真理を知るためのもの」と「相手に勝つためのもの」までであり、「名利のためのもの」は禁止されている。相手に勝つことは、自分が所属する派の基盤を守るために正当化されるが、そのような拠って立つ組織がない現代人にとっては、相手に勝つことがそのまま名利になってしまうのだろう。個人でやっていかなければいけない現代はツライのである。

右翼左翼やフェミニストとの論争を繰り広げてきた筆者の具体例はとても分かりやすく、突き放したような書き方に思わず笑ってしまうこともあって、マニュアル的な要素だけでなく読み物として十分愉しめた。

いったん世間の常識となってしまうと、それが嘘でもなかなか翻せない。専門的な知識がなくても初歩的な段階でそういった世間の常識のウソを見破る本。

筆者は5つのチェックポイントを基準に挙げる。
1.単純なデータ観察で否定されないか
2.定義の誤解・失敗はないか
3.無内容または反証不可能な言説
4.比喩と例話に支えられた主張
5.難解な理論の不安定な結論

2と3は特に宗教・哲学関係で頻繁に用いられる議論であり、注意が必要だと思う。インド哲学の議論で誤謬とされる「すでに成立しているものの論証(siddhasaadhana)」はこのことを言うのではないか。

また4にちなんで筆者は拡大理論(日常の話題からの類推を社会全体に適用するもの)と縮小理論(歴史的な大事件を日常的な課題に用いるもの)を紹介するが、これは説得力が高いために注意したい論法である。

このチェックポイントに沿って、最近の若者は夢がない、ニートは根性がない、日本の物価は高い、日本の輸入依存度は高い、日本の財政は破綻状況にある、バブルが長期不況を招いた、政府が企業を統制する時代は終わった、日本の国際競争力は下がっているという、どこかで聞いたことのある半ば常識化した議論に批判を行う。どれも目からウロコの批判ばかり。

何となくそうだろうと思うと、そのフィーリングに合ったデータばかり集めてしまう。それが実際に真実であるにせよ、根拠を探す努力を惜しまないようにしたい。

このアーカイブについて

このページには、2006年12月以降に書かれたブログ記事のうちBookカテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブはBook: 2006年11月です。

次のアーカイブはBook: 2007年1月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

アーカイブ

リンク用バナー