Book: 2007年1月アーカイブ

お坊さんも人間であるからして物欲も性欲もある、そんな赤裸々な姿をぶっちゃけて書いたという本だった。

「経済学」と題しているからには統計的なデータに基づいた考察を期待していたのだが、お布施何十万円とか具体的な数字がときどき見えるぐらいで、あとはどこかで読んだエピソード(多すぎると言ってお布施を返した若い僧侶や、妊娠して婿殿をしっかり捕まえてきた寺の娘など)が脈絡もなく書き連ねられているのみ。

悪い僧侶ばかり強調されるのは僧侶として全く気にならないが(まあ嘘ではないので)、ネタ本に過ぎないと思う。「壇家」など誤字が多いのも気になる。

ただし「軽薄な利己的な理屈理論を述べたり、組み立てたりすることは得意です。しかし、人間が現実に生きていく上においてより大切なことは、主体性を確立すること。」というくだりはよかった。自分を律し、その律した自分(つまり良心)に正直であること。

それと序文の「何百年もの昔の開祖尊しとする固定化された教義・教理の枠組みを打破しない限りは、現実に生起するさまざまな問題・事象の変化には即応できないでしょう。」も至言。それができなくて僧侶も仏教学者も苦慮しているのである。

というように、はっとさせる言葉があるものの、全体としてウケを狙いすぎた感があって今ひとつ。もう少しトピックが整理されていたら印象はよかったかもしれない。

グーグルが一世を風靡した現代、その先にあるウェブ3.0の胎動を読み解く本。

キーワードは「ソーシャル」で、リアルな人間関係を反映した結果を出す検索サイトを予言している。アマゾンの「この商品を買った人はこんな商品も買っています(シミラリティ検索)」をさらに発展させたものだ。

それだけでなく、経済産業省がしかける「情報大公開」プロジェクトは、ウェブページからリアル世界(流通・交通・医療・放送・製造)へデータベースの蓄積と利用を企てていたり、英語圏のサイト「セカンドライフ」がオンラインのバーチャル空間のお金と現実のお金を公然と兌換可能にしたりするなど、リアルとウェブの距離がどんどん近くなっていることが報告されている。

とはいえ現状は発展途上で、決定的なモデルが生まれてはいないばかりか、どういうものが決定的になるかさえもまだ予測はつかないようだ。

サンプル百貨店「ルーク19」、カスタマーサポート管理の「Qlep」、質問サイト「オウケイウェイブ」、マーケティングリサーチの「アゲウン」、発信者が費用負担する音楽サイト「mF247」など、今後のモデルのプロトタイプになるかもしれないウェブサイトの仕組みを解説しているのが興味深い。また楽天、ヤフー、ミクシィという巨大サイトの今後の予測も面白い。

別にネットにビジネスを求めているわけではないが、ウェブサイトを運営している身としては、アフィリエイトが儲けを目的としているのではなくて、「思い入れを多くの人に知ってほしいと思っているだけ」というところが共感。

広告主の「やらせ」にはどんどん敏感になっているのがウェブ社会であるという。商業主義に染められないよう注意して、生の声を発信したいものである。

『入門!論理学』

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とかく難解になりがちな論理学を、(縦書きで)論理記号を一切使わず、ざっくばらんな口調と笑える実例で分かりやすく説いた本。

私のアンパンを食べた者がいる。
私のアンパンを食べた者には天罰が下る。
だから、天罰が下る者がいる。

……命題の実例はつい格好をつけてしまうものだが、これくらい力の抜けたものなら余計な敷居の高さを感じさせないだろう。

もっとも、論理学は日常の論理を純粋に結晶化して理論したいわば哲学だから、実用的でないことは否定しがたい。パズルが好きな人向け。

基礎的な知識を身につけるだけでなく、排中律を認めない立場や「ならば」の意味がすでに演繹的推論を前提としていること、命題論理から述語論理への橋渡しなど、背景にある考究も面白かった。

海馬の研究をしている薬学者による、最新の脳研究を分かりやすく解説した本。著者が『プレジデントファミリー』で「頭がよくなる玩具」特集に登場していたことから、どのように頭がよくなるのか知りたくて読んだ。

動物実験などのデータに基づいた人間の行動の傾向を、脳機能から説明していくと妙に説得力がある。それはあくまで傾向であって全ての人間に当てはまることではないのかもしれないけれど、ある程度までは普遍的だと知ることは有意義である。

「重要なのはストレス解消ではなく、解消する方法を知っていること」の項は深く共感。実験では、ストレスホルモンを増やす薬を点滴するのだが、注射量を調節できるボタンを用意しておくだけで、実際にボタンを押さなくてもホルモンが上昇しないという報告が紹介されている。「つらくなっても、オレにはこれがある」という思いが大事なのだ。趣味をもつことの大切さ。

そのほか、
・最初に言った意見をすぐに曲げないという行動は自己維持の本能に由来する
・仕事のできる能力は好奇心や注意力と関連する
・サルもギャンブル好き
・人が痛がっているのをみるだけで反応する「同情ニューロン」が見知らぬ他人の場合は反応しない
・意思が生まれる前に脳が活動を始めるので人間に自由意志はない(でも行動を思いとどまることは自由にできる)
・歳をとっても知的好奇心や注意力があれば記憶は衰えない
など、興味深いトピックがいっぱい。

また脳とコンピュータをつなぐ神経補綴学、遺伝子を解析してその人にぴったり合った薬を出せるようになる薬学など、最先端の研究も楽しい。

脳を活性化させるべく、さまざまなものに好奇心をもっていきたいなと思った。

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