Book: 2008年4月アーカイブ

生徒児童が自ら育てたニワトリを殺して調理する「命の授業」、ソウルオリンピックやサッカーWCで問題になった犬食問題、借り腹や卵子提供による代理出産、腹を貸した女性が母性に目覚めてしまうベビービジネス、自ら死刑を望む凶悪犯の死刑、今の日本にはない終身刑、性犯罪者のプライバシーを公表するメーガン法、売春や自殺の自己決定、本人と遺族の希望による安楽死。きわめてアクチュアルな問題に対して、賛否両方の論点から掘り下げ、その背景にある哲学を探求する。

ひとつひとつのテーマには個別の具体例が詳しくレポートされ、賛成と反対の両方が根拠を述べながら主張していくという構成になっている。この詳しいレポートが知らなかったことばかりで衝撃的。世の中こんなところまで行きそうだとは。

お金さえ出せばカタログで卵子提供者を選び、独身者でも子どもを持てるとか、性犯罪者に児童ポルノを見せて反応したらショックを与えるパブロフの犬療法とか、GPSチップを外科手術で埋め込むとか、先天的な障害のある胎児を中絶するか否かを計算で決める新生児QOL公式とか。

序章で神の命令理論、黄金律、普遍的道徳、利己的快楽主義、功利的快楽主義、神秘的快楽主義などを概観し、それを個々の事例で応用できるようにしてあるのが周到。これで本に一貫性があり分かりやすくなっている。

サブタイトルにある〈論理〉についてはMECEの考え方が述べられている程度なので〈倫理〉よりだが、具体例と理論の両方ともにしっかりしており、飽きずに読めて考えさせられる良書。

ダイビングスクールの教師である主人公と、不良生徒としてやってきた女子高生が事故で紀元前のインドにタイムスリップしてしまう。そこにはブッダを名乗るオカマ坊主がいた。話を聞いているうちに彼こそが本物のブッダであることがわかる。「あんた、アタシの弟子にならない?」現代に帰るには仏教を史実どおり世界宗教にしなくてはならない。実に頼りないブッダを支えながら十大弟子を集め、中国の老子とギリシャのソクラテスを弟子にすることはできるのだろうか。

主人公が「ダイバーだった」と言ったことから「ダイバダッタ」と呼ばれるようになったり、釈迦の妃ヤショーダラ姫を銀座のママに喩えたり、コロッセウムでソクラテスチームによるB'zとブッダチームによるSMAPの替え歌合戦が始まったりするなど、荒唐無稽なお話だが笑えるだけではない。シャーリプトラとソクラテスの議論はものすごい迫力で内容も唸らせられた。原始仏教の謎解きにもなっており、一風代わった仏教ガイドになっているとも言えるだろう。

孤独死した部屋の清掃・消毒、遺品の形見分けや供養と処分を引き受けている会社の社長さんのブログを本にしたもの。「天国へのお引越しのお手伝い」である。

孤独死というと老人と思いきや、病死や自殺をした若い人も少なからずある。親が子どもの遺品整理を依頼してくる話は読んでいて切ない。

死後10日も過ぎれば遺体の腐敗はすさまじい。散らかったゴミだらけの部屋にウジ虫、ネズミ、ゴキブリ……そんな中に踏み込んで清掃するのは遺族はもちろん、誰でもつらいことだと思う。その描写が生々しい。

ただそれだけの猟奇趣味ではなく、背景にある家族や社会の問題、はては人間とは何かという哲学にまで著者は踏み込んでおり、非常に考えさせられることが多い。

―自分のことは自分でやりなさい。
子供の頃から私たちは親や学校の先生からこう言われ続けてきました。ところが、人はいったん死んでしまうとまったくそれができなくなってしまいます。着替えはおろか楊枝一本使うことすらままなりません。後のことは、この世に残って生きている人たちに任せるしかないのです。(あとがきより)

本書は46話から構成されている。老親を見捨てる子、家出した娘が焼死、大量のアダルトビデオやフィギュア、実は妻を殺した犯人だった依頼者、ホームレスの遺品整理、自殺したストーカー、母が大事にしまっていた息子のおもちゃ、遺産相続で性格が変わる家族、皆引っ越してしまった大家、ウジ虫との格闘中に停電、息子を亡くした痴呆の母、集団自殺、溶けた遺体で転んだ作業員、自殺で血の海の部屋、じゅうたんに残った人型、遺品整理の生前予約、シャッター通りでの自殺、形見の猫29匹、8年間ゴミを貯めた豪邸、壁一面のゴキブリ、遺体が溶けてワンタンスープ、遠縁の依頼者、ひきこもり息子の自殺、残った百万円以上の借金、飛び降り現場の後始末、夏の公園で排ガス自殺、自殺予告、自殺したホテル部屋の極秘清掃、血の海の殺人現場……一口に遺品整理といっても死ぬ人も死に方もさまざまであるが、いずれもすさまじい。

自分のことを気にかけてくれている人は、自分が思っている以上にたくさんいるものだ。それは家族とは限らない。ふだんからほかの人と連絡を取る習慣をつけておくこと、コレクションやペットはいい加減にしておくこと。年令に関係なく誰でも考えなければならないことだろう。

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