Book: 2008年12月アーカイブ

社会科学、物理学、論理学の3分野にわたって、合理性に限界があることを分かりやすい対談形式で示す。

単記、上位二者決戦、順位評点、勝ち抜き、総当りなど投票方式によって選ばれるものが変わることから、完全に民主的な社会的決定方式はないことを証明したアロウの不可能性定理、ミクロの世界ではある程度から先は観測できない限界があることを示したハイゼンベルクの不確定性原理、あるシステムの中には、そのシステム内では正しいとも正しくないともいえないものがあるというゲーデルの不完全性定理が主なテーマ。それぞれ難解な理論であるが、まったくの素人を対話に登場させながら、喩えを交えながら丁寧に解説しているので理解しやすい。

またこれらの定理の解説に終始せず、そこから派生するゲーム理論、シュレーディンガーの猫やエヴェレットの多世界解釈、クーンの方法論的虚無主義、スマリヤンの認知論理に話を広げ、ちょっとした現代思想事典のようになっている。

筆者は一番最後にアマルティア・センの「合理的な愚か者」を借りて、若手研究者に感受性や開かれた研究姿勢がないことを心配している。哲学者ならずとも、自分が研究している学問体系の全体像を時々チェックしながら、個々の研究を進めるのが望ましいと思う。

このような話から安易に起こりやすいのは、理性とか科学で人間はやっていけないという話だろう。しかし限界があるからといって実用性が失われることは決してない。宗教者の中には科学否定論者や、逆に最先端の科学理論を過大適用したオカルト論者がいるので、そういうものになびかないよう気をつけたい。

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