Book: 2009年3月アーカイブ

ことわざを通してお釈迦様、諸天や諸菩薩、高僧、地獄と極楽、先祖の教えと民俗を紹介する。前書きで筆者が書いている通り、仏教ことわざから仏教のもろもろを少しずつ学んでいくという構成で、庶民の視点から見た仏教概論となっているのは面白い。

知らないことわざがたくさんあって勉強になった。
「悟ろうと思うも迷い」仏道実践に励もうという思いの中に、すでに迷いと執着がひそんでいること。功徳を期待してはいけない。「信心過ぎて極楽を通り越す」とも。
「内閻魔の外恵比寿」外面ばかりよいのはよくない。
「後ろ弁天、前般若」後ろ姿はすばらしいが、前から見た顔は・・・。
「地獄の釜の蓋が開く」死ぬ人が増えるという話ではなく、獄卒が仕事を休み、餓鬼が帰ってくる待ち遠しいお休みということ。
「地獄極楽は心にあり」極楽や地獄は死後にいく世界ではない。心の持ち方、日々の暮らし方一つで、この世の中が変わる。
「阿弥陀の光も銭次第」金銭の大いなる威力をひやかした言い回し。
「乞食しても褄外れ」貧しくとも身だしなみ正しく、立ち居振る舞いがしっかりしている様子。
「衣ばかりで和尚はできぬ」うわべや見せかけだけでなく内実を伴わなければならないこと。耳に痛い。
「坊主の朝寝」「似合わぬ僧の腕立て」不似合いなことのたとえだが、皮肉かも。
「布施ない経には袈裟落とす」報酬が少ないと仕事に熱が入らないなどというのは、僧侶としてあってはならないこと。
「医者、坊主物識りで物識らず」学問があるばかりに常識に欠ける人が多い。
「隠居釣り鐘近本寺長大門に先住の弟子」住職にとってやっかいなもの。毎日のように訪ねてくるご隠居さん、朝晩つかなければならない釣り鐘、うるさい本寺、手入れが大変な参道、目の上の瘤になる先代の弟子。笑う。
「一富士二鷹三茄子四葬式五雪隠」四と五は知らなかった。

NHKの中でもインドの取材は人気がないという。3回に1回は届かないFAX、平気で3時間遅刻したり失踪までしてしまう取材相手、すぐ賃上げを要求してくる現地スタッフ、論理的で山のような言い訳・・・そんな衝撃ならぬ障壁だらけのインドが、どうして世界で躍進しているのかを、貧困層向けの超薄利多売ビジネス、インド製薬会社の日本進出、印僑のネットワークという3つのテーマを通して追う。

貧困層向けのビジネスでは、学校を通して宣伝活動をする。村一番の識者は子供だからである。子供に製品名まで復唱させるその方法があからさまで笑えた。

45gで4ルピー(10円)のラーメンを1億食売って数パイサの利益を重ねるインド日清。衛星アンテナのインターネット回線で電子集会所を設置して情報を提供し、農家の収入を上げ購買力を高めるITC。未開拓だった消費者の規模が日本と比べものにならない。

インドの製薬企業の躍進は、ジェネリック薬品で成り立っている。作り方さえ異なればコピーOKという特許法があるからだ。そこで製法の研究が進み、現代の躍進の元になっている。研究の現場で行われるすさまじい議論が紹介されているが、「思いついたら発言、というよりも話しながら次々とアイディアが出てくる、といった感じ」というのは様子がありありと想像できた。

こうした議論や説得の技術は学校から鍛えられている(しかも英語で)。みんなが反対でも平気で持論を述べられる強さ。先生が指導するポイントは「自信をもって話すこと」だけ。「日本だと、これはいじめだと言われかねない光景だね」という日本プロデューサーのコメントが印象に残った。

印僑のネットワークで驚くのは、TiE(インドの起業家連)が、メンタリング(コンサルタント)をする側の会費で成り立っていることだ。起業家の卵たちは、各種セミナーにほとんど無料で参加できる。そこにあるのは欧米で苦労して成功してきた自負と、「弟子がやがては師匠に」という伝統(グル・シシュヤ・パランパラー)だろう。

そして今、賃金の上昇に従ってインド人が故郷に帰りつつある。ラーマ王子の帰還を思い出させる。流出する頭脳に、アメリカのライス長官が1億円でインドの優秀な学生をアメリカの大学に留学させる支援まで始めたというのだから驚く。

全体を読んで思ったのは、大言壮語も悪いことばかりではないなということ。インド人は自分の実力以上にできることをPRして、実現すればしめたもの、うまくいかなければいくらでも論理的な言い訳をする。日本人が美徳としてきた謙譲とは正反対の態度だ。しかし謙譲も過ぎれば、自分の実力までなくなってしまう。インド人を見習って、ときには背伸びするのもいいかもしれない。

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