Book: 2009年9月アーカイブ

「時給50万円ですけど何か?」という帯が笑える。実際お坊さんの世界も格差社会だが(このことは本書でも「金持ち坊さん、貧乏坊さん」の項で触れている)、宗教法人の非課税などで優遇されているのは事実。そんな裏側を、お坊さんである著者が紹介する。

・3円のろうそくを4円で売ったら税金がかかるが、100円で売ると税木がかからない(宗教的価値が認められる)
・地代を固定資産税の3倍以下にすれば非課税なので、お寺から土地を借りると安い
・お布施は思い切って自分の考えている金額を「○○円でお願いできませんか?」と聞いてみよう
・埋葬するときはお寺の住職の指示に従わないといけないため、よそで戒名をもらってくると付け直しを要求される「ダブルお布施地獄」が待っている
・お布施が上がっているのは平均より少し上を目指す見栄(全国のお葬式のお布施アンケート結果…50万円超が4割で増加傾向)

お金のことばかりでなく、不飲酒・不邪淫のこと、お供え物の行方、檀家制度、副業、後継者問題と幅広い。軽口で述べられているのでうっかり読み過ごしてしまいがちだが、超ポジティブな書き方の中に、お寺の行く末へのニヒリズムが込められているような気がしてならない。

東北大学で発足した臨床死生学の研究会「タナトロジー研究会」の成果をまとめた本。医者、ソーシャルワーカー、哲学者、社会学者、心理学者、民俗学者と多彩な執筆陣が、生と死の問題をさまざまな観点から掘り下げる。

あとがきで、この研究会の狙いが書かれている。そしてこの狙いは、本書を通読するとよく達成されているように思われた。
「医療者は死の現場を多く持つ。しかし死の宗教的、哲学的、社会学的な考察には到達できていない。かたや宗教学者、哲学者、社会学者などの文科系研究者は現場との接点を持たず、死の詳細な観察なしに文献的考察に終始している。お互いにそれぞれ必要なものを欠いている。ただ同時に、両者は補い合えるようにも思われた。」

生と死は別物ではなく、ずっと連続している。自宅でのホスピス・ケアを行ってきたのに臨終に立ち会えなかったソーシャルワーカーは言う。「なにも「死の瞬間」だけが看取りなのではなく、それまで一緒に過ごした長い時間、「生の過程」全体が看取りだと思うからである。」(第2章「看取りを支える、生を支える」)

しかし人は一般に、生にばかり執着して死を見ようとしない。これは延命治療と安楽死の両方にある問題である。「安楽死の推進者たちは、自分で気づいている以上に、無意味な医療テクノロジーを使いたがる人びとと共通点を持っている。両方とも、死を受け容れることができないのである。私たちのコントロールの及び得ない生の事実として、死を認めることができない。」(第5章「死すべきものとして生きる)

かつては日本にも、死ねば終わりと考える人もいた。儒学的無神論は、極楽にいけるからとか地獄に落ちるとかいう理由ではなく、善は善であるがゆえに行うべきであり、悪は悪であるがゆえに行ってはならないという。「幽霊がいるのなら裸体であるはずで、もし服を着ているのであれば、その服もまた幽霊でなければならないはずだ」(第8章「"あの世"はどこへ行ったか」)

吉田松陰は、人生を四季のようなひとつの円環と考えていた。これによって死の後に(後を継ぐ同志の)生がつながり、死は終わりではなくなる。「穀物が必ず一年間の四季を経るようなものとは違い、十歳で死ぬものは、十年のなかに四季があり、二十歳なら二十年の四季が、三十歳なら三十年の四季がある。五十歳、百歳は五十年、百年の四季がある。」(第9章「日本人の死生と自然」)

死が終わりでないためには、この世に何かを遺し、それを受け取る人が必要になる。イギリスではオックスフォード大学とNPO法人が共同で、患者の語りのデータベース「ディペックス」(www.dipex.org)があり、日本でも「闘病記ライブラリー」(toubyouki.info)が公開されている。ネットで公開され、見ず知らずの人に受け継がれていくのが興味深い。

ほかにも教育現場での死の教え方、事前指示書(死ぬ前の遺言状)の書き方、大切な人を亡くした悲嘆への対処法など、興味深いテーマがたくさんで読み応えがあった。日野原重明が帯に「"いのちと死の真の姿"を描いた感動的な本だと思う。」とコメントの寄せているが、感動的というよりも、知的な興味を満たす本である。

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