Book: 2013年10月アーカイブ

北海道のラブホテルを舞台にした人間模様の数々を紡ぎ、今年の直木賞作品の中で最も注目されている小説。7つの話のオムニバスだが、それぞれ少しずつリンクしており、謎解きのようになっているところが面白い。

この中の第2話「本日開店」は、貧乏寺の住職の妻が主人公だ。檀家離れに苦しむお寺に、定期的にホテルで総代に「奉仕」をして「お布施」を頂くことを提案される。男としては不能だった20歳年上の住職は知ってか知らずか。

「わしらもそうそう暮らし向きがいいわけでもない。ただ寄付をするのでは、なんだか気分の据わりも悪いのよ。親兄弟捨ててきた人間は、ときどきなにを大事にすればいいのかわからんことがある。裸一貫でやってきたしな」

ありえない展開だとは思うが、お寺の状況は地方寺院に典型的な実情を描き出している。葬儀供養の簡略化、影響力のあった先代住職との比較、葬儀社主体の葬儀・・・・・・「ちいさな寺の住職ほど忙しくしているのは、それだけ人との繋がりが寺を維持する大切な条件だからだ」という言葉が胸に刺さる。

住職の奥さんは「大黒」と呼ばれ、お寺を守り支えてきた。ところが現代において、お寺を出て外で働く方が増えている。曹洞宗の調査(2005年)では寺院外の労働を行っている住職の妻が10%なのに対し、次の世代である副住職の妻は18.7%に達する。ほかの職業につく理由で最も多いのは「生活できない」である。仕事内容はかつて幼稚園・保育所勤務が多かったが(祖母もそうだった)、会社団体勤務が増加しているという(妻がそうである)。

以前、真言宗の僧侶の方で、大学職員の仕事を辞めて住職専門になった方のお話をお聞きしたことがある。「私の代だけならば、このまま大学職員の仕事でもよかったのですが、次の代のことを考えて専業にしました。」住職の立場ならばこの選択はアリだと思うが、住職が亡くなるとお寺に住めなくなるかもしれない寺族の立場としては微妙なところである。

次世代のことも考えてお寺を守りつつ、家計を助けるべく外で働くとなると、休みは全くない。そのようにして日夜頑張っていらっしゃる方々に思いを馳せ、頭の下がる思いがした。

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