Buddhism: 2011年3月アーカイブ

修証義の現代語訳

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曹洞宗では『修証義』というお経(仏説ではなく、道元の言葉なので正確には「論」というべきか)を読む。和文ではあるが、鎌倉時代の言葉を明治時代に編纂したもので、ただ読んだだけでは意味は分からない。でも般若心経や法華経、陀羅尼とは違って、呪文のよう唱えてもあまり意味がないと思い、現代語訳を試みた。

『修証義』は5章に分かれているが、第1章からいきなり、因果応報という難問を扱う。仏教者は昔から、現世で苦しんでいるのは過去の悪業が原因であるという「悪しき業論」の過ちを繰り返してきた。今回の震災で、石原都知事が天罰といったようなものである。因果応報や自業自得とは、決して他人の不幸につけこむものではなく、努力を続ければ必ず安楽の境地に至れるという修行の道筋を説き、未来に向かって主体的に生きることを勧める教えである。

現代語訳がないわけではないが、なかなか一般化しないのは、どうしてもこの悪しき業論に解釈されてしまう恐れが免れなくて、呪文のように読んだほうがましだという判断があるのかもしれない。しかし、せっかくの仏教の心に触れる機会を奪っているのは残念だと思い、試訳してみた。

因果応報はあくまで自身が、自身の幸せのために主体的に取り入れていくものとし、誰にでも当てはまるような法則という捉え方をしていない。唯識では、因果関係は仮説的なものに過ぎないという考え方があったように記憶しているので、あながち強引な解釈でもないと思う。

もう少し推敲したら、法事などで檀家さんに読んでもらおうかと考えているところだ。

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修証義 総序

 生きるとは何か、死ぬとは何かを明らかにすることが仏教徒の根本問題です。人生がそのまま仏の世界であれば苦しみはありません。人生と仏の世界が同じものと心得て、苦しい人生を嫌がることなく、素晴らしい仏の世界を追い求めることもないとき、悩みを離れることができます。生き死にこそ、仏教の一番大事な問題として考えなければなりません。

 人としてこの世に生まれることは得がたく、ましてや仏教にめぐりあうことも滅多にありません。我々は何かの奇跡で人として生まれてきたばかりでなく、滅多にめぐりあえない仏教にもめぐりあえました。かけがえのない今の人生こそ、最高の生涯にちがいありません。その人生を無駄にして、露のようにはかない命を、諸行無常の風の吹くに任せて終わらせてはいけません。

 死はいつやってくるのか、露の命はいつどこで消えるか分かりません。我が身は自分だけの物ではなく、人生は時の移ろいゆくまま、少しの間も引き止めておくことはできません。少年の日の若さにあふれた顔はどこに行ってしまったのでしょう。今さら探し求めようとしても跡形もありません。よくよく考えれば、過ぎ去ったことは二度とめぐりあえないことばかりです。ましてや死に直面すれば、権力者も、友人や後輩も、家族も、金銀財宝も助けにはならず、たった独りであの世に旅立たなければなりません。どこまでも自分についてまわるものといえば、善き行いと、悪しき行いだけです。

 今の世の中で因果応報を考えず、あの世を信じず、善悪の分別もないよこしまな考えの者とは、生き方を共にすべきではありません。因果応報は必ずあり、私情を挟む余地はありません。我々は悪い行いをして自ら苦しむよりも、善き行いをして幸せになる道を選びましょう。もし因果応報を信じなければ、お釈迦様が生まれ、仏教が日本まで伝わってきた意味もなくなってしまうのです。

 因果応報には三つあり、この世での行いの結果は、この世ですぐ受けることも、あの世で受けることも、さらにその次の世で受けることもあります。仏の生き方をしようと願うならば、この因果応報を自らに省みて実践するのでなければなりません。そうしなければよこしまな考え方に陥ってしまいます。そればかりでなく、安らぎを得られず悩み続けることにもなります。

 私たちの人生はやり直しがきかないのですから、よこしまな考えをもって悩み続けることほど虚しいことはありません。それに気づかずに、自分は悪いことをしていないと思い、苦しみもないだろうと思っても、悩みを離れることはできないのです。
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参考文献
桜井秀雄『修証義をよむ』(名著普及会)
水野弥穂子注『正法眼蔵』(岩波文庫)

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