『少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ』

少子化の主な原因を若者の雇用不安とパラサイトシングルの増加によるものと捉え、戦後からの時代背景の変遷や他国の状況を追いながら、対策を考える。
調査によれば男性も女性も結婚して子どもをもちたいと思っている人がほとんどである。しかし結婚できない、子どもが産めないというのは、筆者によれば、女性は父親以上に安定した収入が見込める男性と結婚したいが、そんな男性は今やほとんどいないという事情による。魅力格差と経済格差、事実とはいえ、読んでいて切なくなる話だ。
例えば青森で五割以上の女性が年収400万円以上の男性を求めているが、実際青森の未婚男性で年収400万円を満たすのは2.6%しかいないという。そして人々はできちゃった婚になってしまう。これではねぇ……。
しかし行政はこの経済格差をひた隠しにしているという。確かに今やどうしようもない問題だし、社会不安を煽ってはいけないのだろうが、少子化の最大の原因に目を背けていてはほかに見かけの対策をやっても効果あるまい。
著者の提言は?@若者が希望のもてる職をもつ、?A経済状態の悪い親でも教育のチャンスを、?Bワークアンドライフバランス、?C若者にコミュニケーション能力をである。理念的であるが、もはやそこまでいかないと何ともならないくらいの状況に陥っているのだ。
少子化問題に対する世間や学者の肯定的・否定的評価もしっかりと検討されており、多面的に問題を捉えられるのがよい。

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