『遺品整理屋は見た!』

孤独死した部屋の清掃・消毒、遺品の形見分けや供養と処分を引き受けている会社の社長さんのブログを本にしたもの。「天国へのお引越しのお手伝い」である。
孤独死というと老人と思いきや、病死や自殺をした若い人も少なからずある。親が子どもの遺品整理を依頼してくる話は読んでいて切ない。
死後10日も過ぎれば遺体の腐敗はすさまじい。散らかったゴミだらけの部屋にウジ虫、ネズミ、ゴキブリ……そんな中に踏み込んで清掃するのは遺族はもちろん、誰でもつらいことだと思う。その描写が生々しい。
ただそれだけの猟奇趣味ではなく、背景にある家族や社会の問題、はては人間とは何かという哲学にまで著者は踏み込んでおり、非常に考えさせられることが多い。
―自分のことは自分でやりなさい。
子供の頃から私たちは親や学校の先生からこう言われ続けてきました。ところが、人はいったん死んでしまうとまったくそれができなくなってしまいます。着替えはおろか楊枝一本使うことすらままなりません。後のことは、この世に残って生きている人たちに任せるしかないのです。(あとがきより)
本書は46話から構成されている。老親を見捨てる子、家出した娘が焼死、大量のアダルトビデオやフィギュア、実は妻を殺した犯人だった依頼者、ホームレスの遺品整理、自殺したストーカー、母が大事にしまっていた息子のおもちゃ、遺産相続で性格が変わる家族、皆引っ越してしまった大家、ウジ虫との格闘中に停電、息子を亡くした痴呆の母、集団自殺、溶けた遺体で転んだ作業員、自殺で血の海の部屋、じゅうたんに残った人型、遺品整理の生前予約、シャッター通りでの自殺、形見の猫29匹、8年間ゴミを貯めた豪邸、壁一面のゴキブリ、遺体が溶けてワンタンスープ、遠縁の依頼者、ひきこもり息子の自殺、残った百万円以上の借金、飛び降り現場の後始末、夏の公園で排ガス自殺、自殺予告、自殺したホテル部屋の極秘清掃、血の海の殺人現場……一口に遺品整理といっても死ぬ人も死に方もさまざまであるが、いずれもすさまじい。
自分のことを気にかけてくれている人は、自分が思っている以上にたくさんいるものだ。それは家族とは限らない。ふだんからほかの人と連絡を取る習慣をつけておくこと、コレクションやペットはいい加減にしておくこと。年令に関係なく誰でも考えなければならないことだろう。

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