『死生観を問いなおす』

人が死ぬこととはどういうことか、翻って生きるとはどういうことか、死んだらどうなるのか……という古来からの難問に、「時間」という概念を軸にして取り組んだ本。
「時間」には時計で刻まれるカレンダー的な時間と、感覚によって長くも短くもなる主観的・相対的な時間がある。後者を掘り下げると、死後にはすでにその人の時間はないことになる。筆者はこのことを指して死を絶対的な有であり、かつ絶対的な無であると結論している。
段階を追って時間を考察する中で触れられる科学史における時間(ビッグバン以前には時間はなかったとする宇宙論)、遊びという点で共通する老人と子どもの時間(老人が子どもをものを教えるというのは人間の本質であること)、生物学からみたエコロジカルな時間(時間は種や個体にとってそれぞれ固有のものがあり、相対的なものであること)、宗教における時間の超越(いかにして人間は永遠を手に入れるか)と、多岐にわたる視点がどれも興味深い。処々に目からウロコ。
あとがきでは、死者と生者は決して断絶したものではなく、共同体をつくるものであると説き、愛しい人を亡くした人のケアにまで及んでいる。
医療福祉関係者、宗教や哲学に興味のある方に非常におすすめ。

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