『もしリアルパンクロッカーが仏門に入ったら』

新宿の町裏ライブハウスで飲んだくれているパンクロッカーのマナブ。酒とドラッグとケンカとゲロしか知らず、「ファッキン」を連呼する彼が、究極のパンクロックを求めて釈尊や祖師方を遍歴するという物語。
登場するのは釈尊、龍樹、玄奘三蔵、最澄、法然と日蓮、栄西と道元。これでインドから日本に至る仏教史、初期仏教から禅に至る仏教思想が網羅されているだけでなく、パンクロック調にぶっちゃけた解説が面白い。
釈尊の教えを「無常だからどうでもいい」、悟りを「全体ドカーン」、龍樹の説を「どうでもいいと思うことさえどうでもいい」と説き、説明の難しい唯識、一念義、悪人正機をさらりと説いてみせる腕前は見事。
「ミラクルパワー頼み」の大乗仏教が、ヒンドゥー化によってインドで仏教が滅亡した一因とになったり、呪術で日本での辛気臭いイメージにつながったりしているという指摘や、法然・日蓮の信仰第一主義が、当時は仏教を庶民のものとすることに成功したものの、現代においてはリアリティを失い、かえって庶民から遠いものになっているという見解は鋭い。
仏教は、どんな態度で臨んでも面白く深いというのは私もその通りだと思う。高尚ぶってマジックワードを並べるだけでは、悩める人の心に届かない。ぶっちゃけられないというのは、実は自分自身がきちんと理解していないのである。そんなことを考えさせられる書だった。(ぶっちゃけた法話をするのも、なかなか勇気がいるものだが。)

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